佐々木はる菜集英社「LEEweb」のコラム連載、時事通信社での特集記事など、海外渡航後も女性目線・ママ目線に強いライターとして国内外のトレンドや社会的な取り組みなどを幅広く執筆中。出産離職や海外転勤など自身の経験から「女性の生き方」についての発信がライフワークで著書にkindle「今こそ！フリーランスママ入門」。ブラジル生活8か月を経て家族でアルゼンチンへ。東京出身、小学生兄妹の母。Instagram／<a href="https://www.instagram.com/halna212/?hl=ja" target="_blank" rel="noopener noreferrer">halna212</a> note／<a href="https://note.com/miraiwotsumugu/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">https://note.com/miraiwotsumugu</a> HP／<a href="https://miraiwotsumugu.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">https://miraiwotsumugu.com</a>

今月のテーマは「ワークライフバランス」海外在住Sodaファミリーレポーター​​の皆さんが、それぞれの国で、仕事と家庭、そして自分自身の生き方をどのようにバランスをとっているのかレポートしていただきました。日本では働き方改革のひとつとして使われているこの言葉。 なんとなく、仕事とプライベートが対局にあるニュアンスがあるのではないでしょうか。けれど、仕事も家庭も生活も、すべて同じ個人の人生に含まれているもの。 近年では、相反する関係ではなく、相互によりよい影響を与えるもの、という意味の「ワーク・ライフ・インテグレーション」という概念が一番新しい考え方とされています。 各国のレポートを読んでいるとこちらの概念の方が近いなと感じました。さて、日本と海外ではどのように違うのでしょうか。※関連記事 内閣府の「仕事と生活の調和」推進サイト <a href="https://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/20barrier_html/20html/charter.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">https://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/20barrier_html/20html/charter.html</a>コラム「IBM流『公私混同型』の新しい働き方とは」 <a href="https://wwwa.cao.go.jp/wlb/e-mailmagazine/backnumber/033/index.html#p01" target="_blank" rel="noopener noreferrer">https://wwwa.cao.go.jp/wlb/e-mailmagazine/backnumber/033/index.html#p01</a>

<h2>働く女性が年々増えているのは日本と似ている？</h2>「アルゼンチンでは、働く女性が年々増えている」今回ワークライフバランスについて周りのさまざまな世代の方に話を聞いてみましたが、仕事や家庭について尋ねた際、非常に多かったのがこの答え。私は勝手ながら「アルゼンチンと日本は意外と似ているところもあるのかもしれない」と感じました。

日本では、専業主婦世帯の割合が夫婦のいる全世帯の3割を下回り、共働き世帯の半分以下になったそうです。しかし、日本の女性活躍はまだまだ課題が多く、それに比べると「海外って女性も仕事をしているのが当たり前なんだろうな」というイメージを持っていました。アルゼンチンで「女性×仕事」について話を聞いていると、結婚や出産後に仕事を続けるかどうかは本当に「人ぞれぞれ」で、たとえば都市部では仕事を持つ女性が多いけれど、郊外など少し田舎の方に行くと「半分くらいのママは会社勤めのような働き方はしていない」ということでした。また最近は、子どもが小さいときはフレキシブルに働きたいと会社を辞めフリーランスになったり、 自分で語学・料理などを教える仕事をしたりと「どこかに雇用される」以外のスタイルで仕事を続ける人も増えているそうです。日本でも、コロナ禍を経て同様の流れがあるのではないかと思いました。

ちなみにアルゼンチン大統領府のEPH（恒久世帯調査）2017のデータによると 女性の雇用率は43.1%、男性は 66.3%とのことで「女性が働くのが当然」という状況にはまだ至らないのかなと感じています。 &nbsp;<h2>アルゼンチンの「保活」は出産前から始まる</h2>私と同じく小学生のママで、産後3ヶ月から子どもを保育園に預けて仕事をしている40代の友人に話を聞いたところ「アルゼンチンでは一般的に産後3か月は手当が出ます。それ以降も休みは延長できるけれど、お金はもらえないため、だいたい産後6か月くらいから復帰する人が多い印象です」とのこと。 日本の育休制度について話したところ、その手厚さに驚いていました。アルゼンチンにも保育園と幼稚園があります。4歳からは幼稚園に行かせることが義務とされているようですが、みんなが保育園に入れるわけではないのは、日本と同じ。条件が合わず、ベビーシッターさんに預けるなどしながら空きを待つ人も少なくないそうです。友人曰く「公立も私立も保育園費は決して安くはありません。公立の方が安いのですが、私も友人も私立の方が手厚く、先生もしっかりトレーニングされているので多少高くても私立の保育園に行かせたいと考えていました。そのため出産前から保育園を探していましたが、お金さえ払えばどこでも入れるわけではなく、入園を希望するための待機リストがあり、できるだけ前もって押さえておくことが大切です」とのこと。

冬休み中、我が家の子どもたちは「コロニア」というサマースクールのような場所に通いました（詳しくは<a href="https://www.seiban-sodasoda.com/contents/global-report/detail/br-haruna-230822/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">コチラ</a>）。コロニアが日本の「学童」に似ていると感じた話を彼女にしたところ「長期休み中の子どもたちの預け先問題は世界共通なんだね」と笑い合いました。 &nbsp;<h2>参考にしたい！家事を抱えこまない姿勢</h2>

一方で、日本と違いを感じ、かつ参考にしたいなと感じたのが、自分の家庭だけで家事を抱えこまない考え方です。 南米に来て印象的だったのが、一般家庭でもいわゆる「お手伝いさん」の力を上手に活用している様子でした。 たとえば子育て中の30代友人は、出産前も掃除は外注。子育てするようになってからは、さらに定期的な食事づくりや、放課後夫婦が帰宅するまではベビーシッターを依頼しています。 特に両親共に働いている場合は「仕事もしながら、自分たちだけで家事や育児を全部やるのは難しい」という意見の方が多いようで、これは3月まで住んでいたブラジルでも同じでした。 &nbsp;<h2>「お手伝いさん」がリーズナブル！便利な外注サービスも豊富</h2>物価の高いアルゼンチンですが、お手伝いさんの時給相場はだいたい1000～1500ペソで、これは日本円だと400～600円程度です。現地通貨「ペソ」の価値変化が激しく、ハイパーインフレでモノの値段がどんどん上がるアルゼンチン。単純に日本円と比較することは難しく、あくまで現時点の大まかな比較ではありますが、ただ特別に収入が多い家庭ではなくても利用を検討できる価格帯ではあると言えると思います。ほかにも、洗濯、犬の散歩、スーパーや商店の配達など気軽な外注サービスが豊富！

もちろん日本とは状況が違うので、帰国後に我が家もお手伝いさんを頼もう！とはならないと思います（笑） ただ「自分しかできないこと」と「周りにお願いできること」を分けて考えるようになったことは、家族内での家事の分担・協力や、日本ならではの便利なサービス・製品・家電を活用するなど、今後の快適な暮らしへのヒントをもらえたと思っています。 &nbsp;<h2>貧富の差で二極化するブエノスアイレスのワークライフバランス</h2>

ブエノスアイレスでいま人気を集めているのが「デュアルライフ」。平日は市内で生活し、金曜日に車で1～2時間ほどの別荘地へ移動、週末は自然に囲まれながらリラックスして過ごすそう。確かに金曜日の夜は郊外に向かう車両で高速が大渋滞しており、土日のブエノスアイレス市内の住宅街は普段よりもひっそりとしています。我が家もそんな郊外の家にご招待いただく機会に恵まれましたが、セキュリティを抜けた中は素敵な一軒家が並び、庭でアサード（アルゼンチンの伝統的なBBQ）をしたり、プールで遊んだりと、まるでリゾート地のような雰囲気で憧れてしまいました。

ただアルゼンチンは元々貧富の差が大きく、さらに先日結果が出た大統領選挙の影響などもあり、引き続き政治も経済も激しく混乱しています。安全な生活や教育もままならず「生きるために必死で、できる仕事をいくつもして日々を乗り切っている人も珍しくない」という状況です。 実際南米に来てから、日本では日常的には見ないような光景や圧倒的な格差を目の当たりにする機会がたくさんあります。 &nbsp;<h2>「ウェルカミング」なアルゼンチンは、みんな違って当たり前</h2>厳しい現実もありながら、私が知り合った現地の方々が口を揃えて言うのが「アルゼンチンは温かくウェルカミングな国」だということ。 元々移民国家で「移住しやすい国」とも言われ、現地校でも欧米やアジアなどさまざまな場所から来た子どもたちが共に学んでいます。アルゼンチンの「ワークライフバランス」について話を聞く中で心に残ったのが、皆が自分のバランスを模索しながらも「それぞれの生き方・考え方を認め、違いを含めて尊重し合っている姿」でした。働き方が多様になったことやお手伝いさんの力を活用する習慣など、具体的な現地事情もとても面白く感じましたが、多様な社会の中で「自分自身の選択を信じ肯定する力を持っていること」が、日本以上に深刻な状況も多いアルゼンチンの人々に明るさがある理由の1つかもしれません。今後、私自身や家族がどんな「ワークライフバランス」を選ぶか考えるとき、彼らの生きる姿勢はきっと良きヒントになると予感しています。

2023年11月のテーマ「ワークライフバランス」

‌