<h4>石踊 千夏</h4>大阪市出身。22歳で熱帯雨林の保護活動を夢にインドネシアに渡るが、ジャングルに出会えず数年間意味もなく放浪。2000年にバリ島で日本語学校を設立する機会を得る。長男出産を機に息子のためにと託児所を建て、やがてそれが保育園、2020年には小学校をオープンすることに。現在、9歳と6歳の双子の母親兼、校長として理想の小学校づくりに奮闘中。

4月のテーマは「約束・決まり・タブー」について「約束・決まり・タブー」って、個人や国の大切にしていることや価値観が反映されるなあと思います。ひと口に「約束」と言っても、親子や家族間のプライベートな約束ごとから、学校や国といったコミュニティのタブーやルールまで、幅広いフィールドの中から自由に選んでもらいました。同じテーマなのにこんなに違うグローバルレポート！お楽しみください。

<h2>イスラム教の約束。それは右手は聖浄なる手、左手は不浄の手</h2>インドネシアに来て一番最初に覚えたマナーは、左手が『不浄の手』とされているということです。 どうして左手が不浄の手になるのかというと、イスラム教では、右は聖浄なる手、左手は不浄の手とされているという宗教的な考えからきているそうです。用を足した後の処理を水で行うインドやイスラム圏では（全てのイスラム圏がそうなのかはわかりませんが）左手で直接おしりを洗う習慣があります。 そのあともちろんきれいにその手は洗うのでしょうが、お尻を拭いた手は『不浄』となってしまい、食事のときも右手だけで食べる習慣があります。 今はフォークとスプーンで食べる習慣の方が広く広まり、左手も補助として使いますが、お米を洗うときも右手だけ、人にものを渡したり受け取ったりするときも右手で行います。 特に左で物を人に渡したりするのは大変失礼とされていて、右手がふさがっていて、どうしても左手を使わざる得ないときは、「左手で失礼」とひとこと言うのがマナーとされています。

私もこのマナーは始めから大変気をつけていたので、すっかり習慣になってしまいました。 日本人同士で何かを渡したりするときにも、左手でサッと渡せる状況にもかかわらず、わざわざ右手に持ち替えるというひと手間を加えてしまうことがあります。 そして何かを買って受け取るときによく起こるのが、お金を右手で渡して右手で受け取りたいのに、相手も商品を右手で渡して右手でお金を受け取りたいという状況です。こうなると、なかなかスムーズにいかず、手間取ってしまうことがよくあるのですが、インドネシアの人はやっぱりもっとスムーズにできているのかなぁ…

<h2>知られざるインドネシアのトイレミステリー</h2>トイレの話でちょっとあれなんですが、こちらに来て一番驚いたカルチャーショックの1つだったことが、『便座に座る向きが違う』ということです。今でこそこちらの公共のトイレも洋式が多くを占めていますが、私が来た20数年前はまだまだ和式タイプの便器がほとんどでした。日本でもまだ和式トイレが残っているかと思いますが、私たち日本人は和式トイレを利用する場合はまず個室に入り、そのままドアにお尻を向けて座ると思うのです。もちろん私もそのままの習慣でインドネシアの和式トイレを使用していたのですが、どうもしゃがんだときに顔面の前に来る壁との距離が近すぎるなーと思っていたのです。そしてある日。私の家に遊びに来ていた友達が、鍵をかけずに用を足していたのに気づかず、ドアを開けてしまった私。こちらを向いている友人と目がばっちり合い、「なんでこっち向いてるんよ！？」と、開けてしまった失礼を詫びるのを忘れるほど、びっくりしてしまいました。どうやらインドネシアの人は、トイレに入ったら、あの狭い個室の中で、くるりと一回転しているのです！当然、便器の穴に足を踏み外さないように気をつけつつ。 どおりで私は今まで、壁との距離が近かったはずだ、と納得しました。

<h2>いまだ未解決のトイレミステリーに関する考察</h2>そうしてもうひとつ、トイレミステリーで今でもどうしても解決できないことがあります。 先ほどもお伝えしたように、インドネシアでは、今ではちょっとしたレストランやホテルなどはもちろん、ほとんどの場所に洋式トイレがあり、トイレットペーパーも常設するようになっているのですが、いまだに公共のトイレや多くの一般家庭ではトイレットペーパーを置いてるところはほとんどなく、水で処理するようになっています。 そして問題はそのあとです。 日本ではウォシュレットが広く普及していて、ご家庭でも使っている人が多いと思うので、皆さんもわかると思うのですが、水での洗浄後はべしょべしょになりますよね。 でも、日本ではそのあとトイレットペーパーでふきます。もちろん私もです。 さて、トイレットペーパーもティッシュも置いていないインドネシアのトイレの使用後… こちらの人はどうしているのか？　 パンツがべしょべしょにならないのか？ パンツが濡れてるとよりトイレが近くならないのか？ など、どうしてもわからず、トイレから出てきた人のズボンのあの部分が気になり…でも濡れてないな…なんて思ったりするわけです。そしてそんなことを考えていたら、もしかして実は日本人も和式トイレではみなさんくるりと回っているのか？！と今までの自分の常識にも不安にを感じてしまったり、その他にも、これは当然こうするものだと思ってきたものが、同じ日本人同士でもその当然が色々人によって全く違ったりすることもあるのかなと、思ったりするのです。&nbsp;

2023年4月のテーマ「約束・決まり・タブー」

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