<h4>Kay</h4>東京都出身、一男一女の母。 大学卒業後、国内IT企業、法律事務所、外資エンタメ企業勤務を経て、 2021年より家族4人で北京市に滞在中。 2022年末まで中国の厳しいコロナ政策下での生活を経験。 現在は現地の大学にて中国語を勉強中。 書道、料理、中国茶など中国の文化を楽しんでいます！

今月のテーマは「ワークライフバランス」海外在住Sodaファミリーレポーター​​の皆さんが、それぞれの国で、仕事と家庭、そして自分自身の生き方をどのようにバランスをとっているのかレポートしていただきました。日本では働き方改革のひとつとして使われているこの言葉。 なんとなく、仕事とプライベートが対局にあるニュアンスがあるのではないでしょうか。けれど、仕事も家庭も生活も、すべて同じ個人の人生に含まれているもの。 近年では、相反する関係ではなく、相互によりよい影響を与えるもの、という意味の「ワーク・ライフ・インテグレーション」という概念が一番新しい考え方とされています。 各国のレポートを読んでいるとこちらの概念の方が近いなと感じました。さて、日本と海外ではどのように違うのでしょうか。※関連記事 内閣府の「仕事と生活の調和」推進サイト <a href="https://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/20barrier_html/20html/charter.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">https://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/20barrier_html/20html/charter.html</a>コラム「IBM流『公私混同型』の新しい働き方とは」 <a href="https://wwwa.cao.go.jp/wlb/e-mailmagazine/backnumber/033/index.html#p01" target="_blank" rel="noopener noreferrer">https://wwwa.cao.go.jp/wlb/e-mailmagazine/backnumber/033/index.html#p01</a>

中国の労働環境というと、新興テック企業の｢996｣（午前9時から午後9時まで、週に6日間働く、の意）などの苛烈な働き方がセンセーショナルに取り上げられることが多いですが、これは若い世代中心の話のようです。元働く母親としての視点から見ると、中国で子育て中の働く父母たちは、多種多様な方法を駆使することで、日本と比較してストレスなくワーク＆ライフを両立させているように思えます。 中国で共働きを支える、社会的・文化的背景をご紹介します。<h2> おじいちゃん・おばあちゃんの強力なバックアップ</h2>中国では、子育て中におじいちゃん、おばあちゃんが大活躍！ 祖父母の孫育てへの関わりは、日本より断然深く、祖父母にとって孫のお世話は使命であるかのようです。具体的には、祖父母と孫家族が近所に住むか、仮に遠距離であっても学期中は祖父母が自宅を離れて孫家庭に同居するなどして孫育てに協力します。祖父母の主な担当は、孫の学校やお稽古ごとの送り迎え、家事全般など。 また、学校の長期休暇中、父母は都市部に残って仕事をし、孫は祖父母の家に長期滞在することも多いようです。 そのため、働く現役世代は子どもの病気によるお休みや、お迎え時間などをあまり気にせず仕事ができる環境にあり、ときには子どもを置いて出張したり、友人と旅行に行ったりすることもあります。

実際に現地の学校のお迎え時間に通りかかると、迎えの保護者の半分以上は祖父母世代なのではないでしょうか。 学校の先生と保護者とのグループチャットでも、祖父母が宿題や持ち物について質問していることが多くあり、家での学習にも関わっている様子が分かります。中国の定年年齢は男性が60歳、女性は管理職の場合55歳、一般労働者の場合50歳と比較的低いことから、定年後は体力も時間もたっぷり。孫の面倒をしっかり見る余裕があるようです。2015年まで長く続いた一人っ子政策により、子どもの数は少ないのに、4人の祖父母が力を貸してくれるのは父母世代には心強いと思います。<h2> 家事や子育てを気軽に頼める阿姨（アーイー）の存在</h2>中国ではアーイー（「おばさん」のような呼称）と呼ばれるお手伝いさんを雇うことが一般的です。 たとえば、産後など24時間ヘルプが必要な場合は1か月単位で住み込みのアーイーを雇い、相場は1か月10万円～20万円程度。 通常の家事（掃除、洗濯、アイロン、炊事）や子守りを助けてほしいときは1時間単位で必要なだけ来てもらうことも可能で、時給の相場は1,000円ほど。子どもが一人で通学できない小学生卒業までの時期は、家事や子守りのため時給制のアーイーさんを頼んでいる人も多いです。

日本の家事代行やシッターのサービスも、だんだんと使いやすくなっている印象がありますが、中国のアーイーのシステムはもはや当たり前に使って当然、という感覚のよう。 自宅に外部の人が入ることに若干抵抗のある在中国日本人はアーイーを使わない人も多いのですが「子育て中なのになぜアーイーに来てもらわないの？一人で全部やっているの？」と聞かれることも多々あるほど、普及しています。<h2> 共働きが基本の中国では、母親だけが責任者ではないという考えが普通</h2>伝統的に共働きが基本の中国では、家事育児は女性の負担という意識がなく、男女平等の考え方が普及しています。夫婦のどちらか早く帰った方が食事をつくり、子どもの面倒を見ればよいという感覚で、学校のお迎えや、保護者会などの行事に来ている父親の割合も多いです。 祖父母やアーイーの存在に加え、父親の育児に対しての主体性が高いことも、一人で家事育児のすべてを担うこともある日本の働く母親に比べると、中国ではワークライフバランスがとりやすい一因かもしれません。

<h2>ワークライフバランスを保つための柔軟で主体的な働き方を選択</h2>中国では転職も身近です。 日本のように、一つの会社に生涯勤め上げるという感覚はなさそうです。給料やポジションを上げるために転職することは一般的で、必要に応じて働き方を変えることも多くあります。 子どもの父母世代の友人を見ると、子どもが小さいうちはオフィスに行く時間が少なくてすむ仕事を選んでいたり、スモールビジネスを起業し自宅に自由に働いていたりと、子育て中のワークライフバランスのために、仕事や働き方を主体的に選択している人が多いようです。

<h2>「一人で全部できないのは当然」という開き直りは恥ずかしくない！</h2>このように、さまざまな子育て世代をバックアップする社会的・文化的背景のある中国。激しい競争社会で仕事のストレスが大きいことや、日本より育休・産休が短いことを踏まえても、特に育児中の親のワークライフバランスは相対的に取りやすいのではないでしょうか。 また、「すべて夫婦だけで乗り切るのは無理」「仕事と子育ての両立は大変！」と開き治る本音は恥ずかしいものではなく、当たり前という共通感覚があるようです。子どもを連れて歩いている親に対して、街の人の対応もとても優しく、子育て世代にはありがたい社会だと思えます。もし時間が戻るなら、中国でアーイーの助けを借りて赤ちゃんを育てる経験をしてみたかったかも…

2023年11月のテーマ「ワークライフバランス」

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