<h4>みゆっち</h4>香港駐在2年目、2児の母。東京生まれ富山育ち。山と海と新鮮なお寿司が大好き。早稲田大学第一文学部卒業後、経済産業省に入省。夫の転勤のために退職し、2007年～2010年にロンドン、2021年～香港在住。現在はオンラインにて方眼ノート1Dayベーシック講座と10min FOCUS Mapping®初級・中級オンライン講座を開講しながら、オンラインツアーガイドと東京のFMラジオ局J-WAVEの特派員としても活動中。

グローバルレポート7月のテーマは「多様性」。 英語ではDiversity（ダイバーシティ）と言います。多様性とは、年齢、性別、人種、国籍や肌の色、障害の有無など外的な要因だけでなく、経験、趣味嗜好、価値観や習慣​​など内的な要素も含みます。いろいろな民族によって成り立っている外国と比べて、単一国民国家の日本ではなかなか根付くことが難しい考え方かもしれません。移民大国のアメリカでは古くから人種差別や女性解放運動がなど、社会問題を背景として差別撤廃運動が盛んに行われてきました。スウェーデンなど北欧の国々もダイバーシティ先進国として紹介されますよね。 日本でも近年では企業の人事関係ではとても重要な取り組みになっています。ダイバーシティと同様に重要視されているのがInclusion（インクルージョン）です。インクルージョンとは、「包括」「一体性」といった意味で、多種多様な人々が平等に機会を与えられるという意味になります。そこで、Soda!ファミリーレポーターのみなさんの生活する国々で、多様性を感じることについてレポートしていただきました。

TOP写真：香港返還25周年を記念した期間限定トラム。<h2>香港って、何語が話されていると思いますか？</h2>みなさま、こんにちは。香港在住のみゆっちです。 今回は、香港に住み始めて感じた「言葉の多様性」について書いてみようと思います。「香港行ったら、英語がペラペラになるんでしょ？」我が家の香港転勤が決まったとき、まわりの方から一番言われた言葉は、これでした。 「香港、行くんだ！いいねー！子どもたち、英語ペラペラになるね！」 「香港って、何語が話されていると思いますか？学校はどうするの？インターの学校に通わせるの？」我が家は、上の子が小学6年生になるタイミングでの転勤だったこともあり、インターナショナルスクールではなく、慣れた日本語で生活できる日本人学校に入学させようと思っていましたが、「インターに通わせるの？」という言葉を何回も聞いたため、「せっかく香港に住むのに、日本人学校に通わせることで、私たちは子どもの可能性を小さくしてしまう選択をしていることになるのだろうか」と迷ったこともありました。そんな気持ちを抱えながら、香港へ来てみたところ・・・

私が感じる香港は、圧倒的に広東語（かんとんご）の世界です。もちろん、英語も通じます。 バスや地下鉄、エレベーターのアナウンスなどは、「広東語→英語→中国語※」の順番に流れるので、香港に引っ越した当初は、英語を頼りに生活をスタートさせることができました。街を歩いていても、お店の看板やレストランのメニューなどは、広東語と英語が両方書いてあることが多いので、これも、英語の部分を読むことで、なんとか暮らしていけました。※公共の場でのアナウンスのときに流れる中国語は、おそらく北京語と呼ばれている中国語だろうと思います。

とはいえ、香港に住む方々が自然に話す言葉は広東語なので、英語しか話せない、分からないという状態では、ときどき、あれ？という場面に出会ってしまうこともありました。レストランに行ったときに、英語で注文しようとすると、「ちょっと待って」というジェスチャーをされ、英語が話せるウエイターさんを呼んできてくれるとか。タクシーに乗ったときに、どうにも英語が通じないドライバーさんだったため、目的地の住所をスマホで見せて、なんとか連れて行っていただいたとか。

<h2>海外で暮らしているからといって、みんなが英語ペラペラになるわけではない・・・のかも</h2>こうした環境で生活しているうちに、日本人学校に通い、家でも日本語で生活している子どもたちではありますが、その子なりに英語という言葉との距離感をつかんできているようです。それは、必ずしも、英語を話せるようになりたい、英語をもっと勉強したいという方向とは限りません。小3の娘は、まわりのお友達を見て、「自分ももっと英語を知りたい！」とは言っているものの、「そのために、習いごととして英語を習いたい！」とまでは思っていないようです。中1の息子は、むしろ、「英語がいやだ。」と言うことがあります。この言葉だけを聞くと、「いやいや、そうは言っても、これからの世の中では英語くらいは...・・・」とお説教をしたくもなってしまいますが、よくよく話を聞いてみると、息子が「いやだ」と言っているのは、「テストで点数を取るための英語の勉強」が好きではないということでした。今のところ、海外で暮らしてはいても、我が家の子どもたちは、日本にいたときよりも英語力が格段に伸びたわけでも、英検○級を目指して勉強しているわけでもありません。ですが、二人とも、香港で1年以上の期間を過ごしていく中で、英語の必要性は実感してきているようです。マンションの管理人さんたちに出会ったときに簡単な挨拶をすることや、レストランの店員さんへ「Thank you」と言うことはできるようになりました。私自身は、子どもの頃に海外に行くことはもちろん、生活をしたこともなかったので、せっかく子どものうちに海外で暮らしているのだから、もっと英語を勉強するなり、習うなりすればいいのに。と思う気持ちが、ゼロなわけではありません。それでも、親に言われて始める習いごとも、子どもたち自身が、自ら「もっと知りたい！もっと伝えたい！もっと話したい！」と思うようになるまで、無理強いすることなく温かく見守ろうと考えています。

<h2>「中国語」って、どんな言葉？</h2>この1年間は、私自身も、「中国語」という言葉の多様性というか奥深さに気づく期間でした。先日、小学校のママ会で集まったとき、「中国人です。」と自己紹介されたお母さまが二人いらっしゃいました。（このとき話されていた言葉は、日本語です。）ただ、それぞれの出身の場所が違うので、もともと話していた中国語も違うということでした。一人の方は上海、もう一人の方は広州とのことで、お二人とも、自分の地元の言葉に加えて「中国語」も「英語」も学んだとおっしゃっていました。お二人とも、日本語も流暢に話されるのですが、お二人で話されるときは、やはり中国語の方が話しやすいらしく、目の前で「広東語」ではない、「中国語」の会話が繰り広げられているということはわかりました。私の感覚では、その言葉は「北京語」と呼ばれる中国国内での共通言語なのかと思っていましたが、お2人によると、自分たちが話している中国語は、ニュースキャスターが話すような「北京語」ではなく、「北京語に近い中国語」なのだそうです。日本に暮らしていたころは、中国といえば、中国語。香港といえば、広東語。というように、明確に分かれているように感じていましたが、言葉というのは、もっと幅が広いものだったのだと気づかされました。 中国語の場合は、その広がりが、日本語でいう、関西弁や東北弁というものより、もっと違いが大きいものだそうです。（私たちは、関西弁や東北弁を聞いても、なんとなくの意味は理解できますが、中国語は、地域が異なると、ほんとに、全くわからない。ということもあるそうです。）

<h2>世界にあふれる、たくさんの言葉を知ることで多様性の理解につながる</h2>日本に住んでいた頃は、英語ができれば、世界中どこに行ってもコミュニケーションができると思っていました。たしかに、現代社会において、一番通じる言葉は英語かもしれません。とはいえ、私たちの母国語が日本語であるように、英語以外を母国語とする方も世界には、たくさんおられるという事実に、私は、香港に住み始めて初めて気が付きました。 英語が通じる香港の方であっても、広東語で「おはよう」と言えるようになったことで、「あなたは広東語も話そうとしてくれるのね。」と喜んでいただけたことがありました。（広東語の「おはよう」は、「ジョーサン」と言います。）挨拶や数字など、簡単な単語であっても、その国、その地域のもともとの言葉を覚える努力を重ねてみることで、お互いのコミュニケーションが広がり、それがひいては、相互理解につながっていくような気がしています。この記事を読んでおられる皆さまにとっては、英語が最も優先すべき言語であることが多いかもしれませんが、私の体験を通して、世界にあふれる、たくさんの言葉の可能性に気づくきっかけとなれば、うれしく思います。次回もどうぞ、お楽しみに。

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