<h4>石踊 千夏</h4>大阪市出身。22歳で熱帯雨林の保護活動を夢にインドネシアに渡るが、ジャングルに出会えず数年間意味もなく放浪。2000年にバリ島で日本語学校を設立する機会を得る。長男出産を機に息子のためにと託児所を建て、やがてそれが保育園、2020年には小学校をオープンすることに。現在、9歳と6歳の双子の母親兼、校長として理想の小学校づくりに奮闘中。

残暑厳しい日々が続いておりますが、みなさまお元気でお過ごしでしょうか。 8月のグローバルレポートのテーマは「食」 食べるものって、日本国内でさえ、地方によって違いますよね。食には地域性が顕著に現れます。お正月のお雑煮などは良い例です。 世界に目を移すとさらに、食習慣を通して、気候風土、地理や歴史、文化の理解にも繋がります。グローバルレポートのMeet-Upでも、食にまつわる話を始めると、ネタはつきず、「え～！そうなの？！」「へええ～」と大いに盛り上がりました。今回はそんな「食」を切り口にそれぞれの生活に根ざした「食」に関するレポートです。 食べるものだけでなく、その時間や場所をどう捉えるか。そんなことを考えるきっかけになるかもしれません。

こちらで、「好きな食べ物は何ですか？」と誰かに問われれば「いくら！」と答えたいところですが、悲しいかな、いくらはこちらでは高額でもあり、簡単に手に入る食材ではありません。 なのでこちらで気軽に食べられるもので言えば「合鴨の唐揚げ」になると思います。 合鴨の肉は好き嫌いがあるようですが、鶏肉よりは弾力があり脂ものっていて、肉付きがよければ最高に美味しくご飯も進みます。 しかし20年以上日本を離れていてもやはり日本の味を求めてしまい、インドネシア料理は週に2、3日食べるのが限界です。やはり味覚も生まれ育った場所で決まることが多いんだなと改めて考えさせられます。 &nbsp;

<h2>食事は家族そろって一日3食、は万国共通・・・ではなかった</h2>食について、インドネシアと日本の最大の違いは食事の捉え方と食べ方、そしてマナーです。 私たち日本人は一日3食、規則正しく食事をとります。 食事の時間は家族揃って「いただきます」をして、お茶碗とお箸で食べることが基本。 お箸の持ち方、お皿の置き方など、いろいろなマナーがあり、小さいときから親に口うるさく、ときには小突かれながらしつけされたのを覚えています。 しかし、そのお陰もあり、私は人さまに恥ずかしくない食べ方ができるようになったと感謝しています。 私の家では、日本のように、皆で揃って同じメニューを食べています。 基本お箸を使いますが、たまに食べるインドネシア料理のときは、お茶碗とお箸で食べるとすごく変な感じになり、味まで変わっってしまう感じもするので、そのときは平皿にご飯とおかずものせて、スプーンとフォークで食べるスタイルに変わります。 そしてインドネシアのマナーではスープもお味噌汁を飲むみたいに持ち上げたりはしません。

<h2>我が家では日本式とインドネシア式の二刀流を目指してはいるけれど・・・</h2>例えば、学校のランチはスプーンとフォークを使って平皿で食べるのですが、こちらの先生はお皿を持ち上げて食べなさいとは言いません。 また、日本ではお味噌汁の中にご飯を入れるのはお行儀が良くない、などと言われることがありますが、こちらはご飯にスープをかけながら食べることが普通です。 けれども家では、できるだけ日本式のマナーを教えています。 「お茶碗は持ち上げなさい」「それは手で食べないの」など、小さい子どもにとったら訳が分からなくなるだろうなぁと思いながら、教えています。 たまに「これは日本のおじいちゃんおばあちゃんに見せられないなぁ」なんていう気になる食べ方のときも・・・。 長男のときはお箸の持ち方を覚えさせましたが、下の双子は諦め、今でもすべての料理をフォークスプーンで食べています。今度の帰国までにせめてお箸の特訓をしなくては！と焦っています。

もっと伝統的なことをいうと、インドネシアの人はもともと手で食べていて、今も料理によっては手で食べないと、それこそ食べた気がしない料理もあります。 イスラム教では左手は不浄の手とされているので、握手はもちろん、人に物を受け渡しすることも左手ですることはよしとされておらず、もちろんご飯も右手だけを使って食べます。（ちなみに食事の話の中でなんなのですが、お尻を洗うのは左手です。） 私も最初は右手だけで食べるのは難しくなかなかうまくいきませんでした。 特にインドネシアのご飯はパラパラなので、ポロポロと指の間からこぼれ難しかったのですが、今は随分上手になりました。そして手で食べると本当においしく感じられるのです。 こんな風に、食事のマナーも国、文化によってさまざまです。 大人になればその習慣もその食事に合わせることができますが、子どもにとってはその使い分けはなかなか難しいかなと思うことがあります。<h2>インドネシアでは食事はそれぞれ「好きなとき」に「好きな場所」で食べるのが普通</h2>さて、インドネシアでは、朝早くに2種類ほどのおかずを家族のためにつくりおきしておきます。 食卓テーブルがある家もありますが、たいていは、そのおかずをそれぞれが「食べたいとき」に「食べたいところ」で食べる、というのが主流です。 日本のように、家族揃って朝昼晩と食卓を囲む、という習慣がないのです。 しかも好みのメニューでなかったり、食べるものがなくなっていたりすると、各々屋台で買ってきたり、最近はGO-FOODなどのオンラインデリバリーで頼む人もとても多くなったようです。

それから栄養面では日本のように「栄養のバランスを考えて・・・」というふうなことは余り考えてないかもしれません。 もちろん野菜を摂った方が良いというくらいの感覚は持ってるようなのですが、そもそも大人が率先して「野菜、野菜」という感じではないです。 今でこそ、スーパーやレストランのメニューが充実してきましたが、以前は日本人が「インドネシアでの食生活では生野菜を摂りにくい」と困っているのをよく耳にしました。 私の学校でも野菜が一切ダメな子も多く慣れるのに時間がかかるのですが、それはインドネシア人の子に限ったわけでもないので、野菜嫌いになりがちなのは子どもに共通しているのかもしれないですね。

余談ですが、バリの伝統的な食べ方として、お祭りのあとなど、大きなバナナの葉の上にご飯とおかずをバサっと置いて村の人たちと食べるのですが、男の人は、「手で食べた後すね毛で手の汚れを取るんだ」と！ 「いや、それはないわ」と思ったのですが、実際に彼らが食事の後に手をすね毛で拭ってるのを見てちょっとした衝撃を受けたのを覚えています。（笑）

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