<h4>石踊 千夏</h4>大阪市出身。22歳で熱帯雨林の保護活動を夢にインドネシアに渡るが、ジャングルに出会えず数年間意味もなく放浪。2000年にバリ島で日本語学校を設立する機会を得る。長男出産を機に息子のためにと託児所を建て、やがてそれが保育園、2020年には小学校をオープンすることに。現在、9歳と6歳の双子の母親兼、校長として理想の小学校づくりに奮闘中。

アメリカ、ヨーロッパ、中国、各地のさまざまなお祭りレポートをご紹介してきた今月のテーマ、お祭りもいよいよ最終回となりました。 お祭りの由縁はさまざまで興味深いレポートになったと思います。最終回はインドネシアのお祭り。外務省のホームページによるとインドネシアで公的に認められた6つの宗教はイスラム教、キリスト教（カトリック・プロテスタント）、ヒンズー教、仏教、儒教で、約80%を超えて最も人口を占めるイスラム教は国教ではないとのことです。インドネシアには約300もの民族が存在しているらしいです。ということはかなり多くの宗教もあるということになりますね。神々の住む国とも言われるバリ島からのレポートです。

<h2>イスラム教の代表的なお祭りはラマダン</h2>お祭りといえば、日本でも多くのお祭りは宗教に関係しているものが多いと思いますが、ここインドネシアでもほとんどがそうです。多様な宗教があるインドネシアでは、その分多様なお祭りもあります。実はインドネシアは国として6つの宗教を国教と定めています。 ですので、お祭りによっては、それを国民の祝日と定め、国民皆で祝いあう文化があるのです。イスラム教徒が大半を占めるインドネシアの国で、代表的なお祭りといえば、ラマダンがあります。イスラム歴の1年は354日か355日なのですが、1年に1回「ラマダン」という断食の時期があります。断食期間は約1ヶ月で、断食明け翌日から2日間が祝日となります。

<h2>ラマダンの断食にはいろいろな決まりごとがあります</h2>私が日本にいたときの『断食』のイメージは、その期間ずっと飲み食いしないものだと思っていたので、よく死なないもんだなと思ったりしていました。でも実際に飲み食いしないのは日の出前から日没までの約14時間ほどだけになります。そしてその間は飲み食いだけでなく、たばこも吸ってはだめだし、怒ってはダメ、嘘をついてはダメ、性交渉もダメとされています。しかし人間ですからやはり怒ってしまうこともあるんですよね。そうするとその日はそれ以降断食を続けてはならず、1日別日にやり直したり、失敗した日数分モスクに寄付したりしなければならないようです。「金で解決できんのかい！！」と内心ツッコミたくなりますが・・・私のパートナーはイスラム教徒なのですが、あまり敬虔ではなく・・・というか全く敬虔ではなく（！）、普段は1日5回と定められているお祈りもせず、タブーとされている豚肉も食べるのですが、どうしたわけかこのラマダンのときだけは断食を行い、その日の初まりと終わりの時間だけお祈りをするのです。そして断食が始まる日の出に起き、本来はお腹などに消化の良いものが良しとされているようですが、彼は食べ貯め、飲み貯めします。イスラム教徒が多い地域では日中は食堂なども閉めなければならず、営業していると取り締まりに入られたりもするようです。

<h2>人種がさまざまなバリ島で多いのはヒンズー教です</h2>バリ島はヒンズー教徒が大半になり、宗教も人種もさまざまなので、ラマダンの期間も日常生活に変化は見られません。ただ、よく言われているのは、ラマダンの時期は日本でイメージするような里帰りする時期でもあり、その為の費用を捻出するためか、泥棒が多くなると言われています。バリ島の人は島の人特有の島国精神みたいなのもあって、閉鎖的なところもあり、出稼ぎなどほかの島から来ている人、特にイスラム教徒の人は貧しい人も多いので、何か事件などがあったら「ジャワ人がやったに違いない」といった偏見を持った見方をすることが多いのですが、そう言えば最近はそれもあまり聞かなくなりました・・・。

私の学校にもイスラム教徒の先生がいて、やはり彼らはラマダンの時期は断食もしています。なのでもちろん彼らは飲み食いしません。でも私たちノンイスラムはいつものように飲み食いするので、そんなとき、側に断食中の人がいたら「あ、ごめん！」なんていうこともあります。気にしなくてもいいと言ってくれるものの、そんな訳にはいかず。やはりなんだか気を遣って過ごしてしまいます。そして実は女性は生理中のときは断食をしてはいけないので、そのときはなんだかホッとします。<h2>断食明けは日本のお正月のようにゆっくり家族で過ごします</h2>

断食が明けた日から1週間ほどは、彼らは、日本人がお正月に家族でゆっくりするように、親戚の挨拶まわりをしたりして、その際にはお年玉を渡します。こちらでは大人から子どもだけではなく、独立した子どもの場合は親に渡すこともあり、また会社は従業員に1か月のお給料分をボーナスのようなかたちで渡さなければならないとされています。こんな風に、インドネシアではイスラム教のラマダンが一番大きなイベントになっていますが、ヒンズー教にもバリヒンズー暦があり、新年もあり、その新年も独特なものでもあるので、次回のリポートで紹介させていただければと思っています。

2022年11月のテーマ「各国のお祭り事情」

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