<h4>石踊 千夏</h4>大阪市出身。22歳で熱帯雨林の保護活動を夢にインドネシアに渡るが、ジャングルに出会えず数年間意味もなく放浪。2000年にバリ島で日本語学校を設立する機会を得る。長男出産を機に息子のためにと託児所を建て、やがてそれが保育園、2020年には小学校をオープンすることに。現在、9歳と6歳の双子の母親兼、校長として理想の小学校づくりに奮闘中。

各国の新年の過ごし方の最終回はバリ島。 先月の記事でもお伝えしたように、さまざまな宗教が共存するバリ島。 多くの国と同様、西暦での越年には大きな意味はなくて、それぞれの宗教の暦によってそれぞれの方法で祝うとのこと。 今回のレポートでは「新年」という概念が宗教、つまり暦によって違う、ということを改めて実感しました。 世界は広くて奥が深いですね。

<h2>お正月はいつまでも日本人の血が騒ぐけれど・・・</h2>バリ島の私の学校も先日終業式を迎えました。 最終日には皆でクッキーを焼いて、ポップコーンを食べながらクリスマスがテーマの映画を観ました。

私は大学を卒業して、すぐにインドネシアに移住してしまったので、日本の「師走」がどんなものかあまり知らず、正直実感がありません。 日本での年末と言えば子どもの時の記憶で残っている『大掃除』。 寒くて、手先がかじかむ中、自転車を磨いたり、窓も窓枠の溝まできれいに拭いたりするちょっと面倒な時期だったなと感じてた記憶があります。 小さい頃は母親について市場にしめ飾りなんかも買いに行ったなと。 今もまだしめ飾りの習慣はあるのでしょうか。大人の人が感じる師走の慌ただしさや、新年の雰囲気などは想像するしかできないですが、それでも年末年始は日本人の血が騒ぎだします。日本人にとって1年の中で一番大きな意味を持っているのはやはりお正月だと思うのです。インドネシアでは、何度か私の記事で出てくるように宗教によって暦が違います。 なのでそれぞれのお正月があって、そのお正月をそれぞれの時期にそれぞれの方法で祝うのでそれはそれで興味深いものがあります。しかし、今でも悲しいなと思うのは元旦、お正月のインドネシアにおいての迎え方。 日本なら師走の慌ただしさ、大掃除を終え、こたつに入って『ゆく年くる年』を見ながら除夜の鐘を家族でしんみりと見ながら新年を迎える。 元旦には改めて「明けましておめでとうございます」なんて照れながらも改まった挨拶を家族にもし、初詣に行ったり、親戚なんかに会ったりしながら数日お正月気分を数日過ごすと思うのですが・・・&nbsp;

<h2>インドネシアの元旦はカレンダーを1枚めくるだけ</h2>インドネシアでは元旦の1月1日はさすがにカレンダーでも祝日なのですが、だからといって彼らにとって新しい年を迎えることは特に何も特別なものでもないようで、ただ毎月やってるように、カレンダーを1枚めくるような感覚なんです。 なので、今でも鮮明に覚えていて、結構今でも毎年悲しんでいるのですが、1月2日が平日の場合は、その日から通常通りの勤務をしなければならず、もちろん新年の挨拶なんていうのも、一応インドネシア語で挨拶言葉はあるのですが、ほとんど聞くこともなく・・・。「なんで正月から働かなならんのじゃ」となんだか納得いかない、切ない気持ちで新年を毎年迎えています。&nbsp;

<h2>バリヒンズー暦の新年は3月の『ニュピ』</h2>因みに、バリ島の新年は『ニュピ』と呼ばれ、毎年3月くらいにあるのですが、とてもユニークです。 各町内会の若者たちが何か月もかけて、『オゴオゴ』という竹や紙で神話上の悪霊などの化け物をつくり、完成したら町内の道に飾ります。 そして、ニュピ前夜に、『オゴオゴ』を竹で組んだ台に乗せ、おみこしみたいに大勢で担いで町を練り歩きます。 毎年大勢の見物客が通りに集まり、特に子どもたちがすごく楽しみにしていて、時々ポイントポイントでわっさわっさと大きく化け物を揺らしたりするもんですから、見物客が歓声をあげながら化け物の行進を楽しむのが恒例の風景です。 ニュピになるとオートバイに子ども乗せてオゴオゴ見学ツアーをしてる家族もよく見かけます。 子どもたちもオゴオゴを楽しみにしていて、学校でも毎年子どもたちとオゴオゴをつくってパレードのまねごとをしたりしています。

<h2>それは一年に1度バリ島に訪れる真っ暗な静寂</h2>そしてニュピの日は1日中家から一歩も出てはならず、電気もつけてはいけません。 もちろんテレビやラジオの放送は流れず、みな静かに家の中で過ごしているので聞こえてくるのは鳥の鳴き声くらい。それはそれは静かなもので、（シーン）という音が聞こえてくるほどです。夜になるとバリ島中の明かりが消え、そしてニュピは必ず新月の日にあたるようになっているので月の光もなく、本当に見渡す限りの真っ暗な闇。以前2階から街を見渡してみてもどこまでも真っ暗で、「こんなことが今のこの時代に可能にするバリってすごいわ！！」って深く感動したのを覚えています。 そして特に日本人の人たちが楽しみにしているのがこの日の星空。 1日中車もバイクも走らなかったので空気もきれいで、街の明かりも月の明かりもない夜空に輝く星たちは圧巻です！！と言い切りたいところですが私は目がよくないので今までそれを存分に自身で楽しんだことはないのですが。。今年はコロナ禍で帰れなかったので3年ぶり、それもお正月に帰国します。 随分久々の出国で色々な手続きもこなさないとダメだし、冬なのでバリ島との温度差に適応できるかも不安。 でもすき焼きとお寿司がやっぱり楽しみだな～っと思っているのです。&nbsp;

2022年12月のテーマ「年末年始の過ごし方」

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