<h4>石踊 千夏</h4>大阪市出身。22歳で熱帯雨林の保護活動を夢にインドネシアに渡るが、ジャングルに出会えず数年間意味もなく放浪。2000年にバリ島で日本語学校を設立する機会を得る。長男出産を機に息子のためにと託児所を建て、やがてそれが保育園、2020年には小学校をオープンすることに。現在、9歳と6歳の双子の母親兼、校長として理想の小学校づくりに奮闘中。

12月のテーマは「世界の本と読書事情」。 今年も残すところあと1ヶ月。仕事に家事、何かと気忙しい年末ですが、年末年始は家族の時間でもあります。 お子さまと本を読む時間をつくってみてはいかがでしょうか。 海外在住Soda!ファミリーレポーターのみなさんには、下は5歳から上は大学生まで、幅広い年齢のお子さまがいらっしゃいます。 各国で子育て中のみなさんに、お子さまが好きだった本や、おすすめの本を紹介してもらいました。 英語の勉強に役立つ本もありますよ。ぜひ参考にしてみてください。

<h2>私の保育園の名前は絵本『ちいさいおうち』からつけました</h2>私が運営している保育園の名前は『Rumah Kecil／ルマクチル』といいます。 日本語で言えば『ちいさいおうち』。いまでは拡張に拡張を繰り返し、少しずつ大きくなってきていますが、私が9年前に保育園をオープンしたときは、小さな空き地に古民家を移築して建てた小さな保育園でした。なので子どものときに好きだったアメリカ人の絵本作家、バージニア・リー・バートンの代表的な絵本『The little house』からつけました。

本当は英語で『リトルハウス』とつけたかったのですが、建てると決めたあとで、私たちの目の前に『Little Star』という保育園があることに気づき、急遽インドネシア語の名前を採用することにしました。 &nbsp;<h2>本を読む習慣がないインドネシアでは絵本を集めるのもひと苦労</h2>保育園をオープンするに際し、子どもたちが遊ぶおもちゃと同じく重要なのが絵本。木のおもちゃにこだわっていたのですが、当時のバリ島では木のおもちゃなど売っているところはほとんどありませんでした。絵本も本屋さんに探しに行ったのですが、おどろおどろしい絵だったりして、とても小さな子どもが読むような本ではなく、全く見つからなかったのを覚えています。

私の母が幼稚園の先生だったこともあり、家には絵本がたくさんあったので、日本の絵本をたくさん持って帰ってきて、とりあえず間に合わせたことが忘れられません。インドネシア人の間では、「本を読む」習慣がほとんどないということもあり、子どもに本を読み聞かせる習慣もありません。なので大人になっても本を読む習慣がついていない人が多く、当時の本屋さんの様子がそれを物語っているのかとも思います。でも、この間、今回の記事を書くために、久々にこちらの絵本コーナーを覗きに行ったのですが、カラフルでクオリティーの高い絵本がたくさん並んでいました。「輸入の英語の絵本かな」と思ったのですが、インドネシア語の絵本で、「インドネシアも変わってきているね～」と改めて感じました。

<h2>バイリンガルの子どもたちには寝る前に日本語の絵本を読み聞かせています</h2>私の子どもたちは学校では英語で話しているのですが、日本語も理解してほしいと願っているので、私と話すときは「日本語で」と子どもたちには言っていて、寝る前に日本語の絵本を読み聞かせるようにしています。

子どものときに好きだった絵本、『ぐりとぐらシリーズ』や『おやすみなさいフランシス』など、懐かしい絵本はいま読んでもストーリーは色あせておらず、子ども時代を思い出して読んでいます。 私が子どものころは、いまのようにYouTubeやゲームもなかったので、読み聞かせのレコードを何度も聴いたり、絵本に描かれた絵を何度も何度も隅々まで見て楽しんで、想像を膨らませていました。だからいまでも、ぐりとぐらがつくった大きなカステラを森の動物みんなで食べるページを子どもたちと見ると、子どものことはそっちのけで、「蛇も小さいカステラ食べてるやん」などと、楽しんだりしています。少し残念に思うのは、ときどき母親が日本から絵本を送ってくれるんですが、日本の自然に関してや、実生活に基づいた本などは、こちらにいると実際に見たり感じたりすることができないので、子どもとの話もなかなか広がりにくいことです。子どもが大きくなればなるほどそう感じます。かといって、小学生が読むような英語の本を扱うお店も少なく、また英語だとどの程度の本が彼らの年齢に合っているのかというのも一見ではわかりません。読書が好きだった私としては残念で悲しく思わずにはいられません。

<h2>絵本でしか育たない自由な想像力が…</h2>いまは映像が素晴らしく鮮明で、クリエイティブだったりもしていて、見ている私も「わー！」と惹きつけられることがもちろん多いです。 動画と違って、絵本は、絵が動くわけでもなく、詳細なディティールが描かれているわけでもないです。でもだからこそ、自分の頭の中で自由に想像力を使って、ストーリーを楽しむことができたのだと思います。 いまの子どもの想像力って、どう育っていっているんでしょうか。 そう思うと少し不安に思ってしまいます。

2023年12月のテーマ「世界の本と読書事情」

‌