<h4>石踊 千夏</h4>大阪市出身。22歳で熱帯雨林の保護活動を夢にインドネシアに渡るが、ジャングルに出会えず数年間意味もなく放浪。2000年にバリ島で日本語学校を設立する機会を得る。長男出産を機に息子のためにと託児所を建て、やがてそれが保育園、2020年には小学校をオープンすることに。現在、9歳と6歳の双子の母親兼、校長として理想の小学校づくりに奮闘中。

グローバル化が進むなか、企業内の公用語を英語にする会社が増えたり、小学校で英語の授業が始まったり、英語教育のニーズと関心は年々高まっています。とはいえ、日本の英語教育はまだまだ「主要科目のひとつ」として、成績重視です。でも、語学はコミュニケーションのツール。 さて、海外在住ファミリーレポーターの皆さんは、お子さんにどんな語学教育をされているのでしょうか。海外各国で生活するご家庭で、バイリンガル教育をどのようにされているか聞いてみました。

<h2>3つの言語をどれも同じように使いこなせるのは難しい</h2>私たちの子どもは、英語、インドネシア語、日本語と三カ国語を話します。 語学力順でいうと、英語がメインの言葉で日常的に使います。その次にインドネシア語、日本語でしょうか。 彼らがまだ小学校入学前の小さかったころは、日本語をより多く話していたと思うのですが、小学校に上がり、学校で言語を使っての活動が多くなり、友人との会話ももっと活発になってきたからでしょうね、気が付いたときは兄弟同士の会話が100％英語になっていました。 そして、インドネシア人のお父さんにはインドネシア語で話し、母の私には日本語で、という使い分けをしているのですが、双子の1人は日本語がなかなか難しいようで、もっぱら英語で話しかけてきます。 「日本語でないと返事しないよ」と日本語を話させるようにしているのですが、「あーあの、私…私…何々が…」と始まり、すぐ英語になってしまう始末。彼女にとってはやはりハードルが高いようです。彼女たちの中で、英語、インドネシア語、日本語という3つの言語の単語の区別がまだついていないようで、1つの文章の中に、3つの言語の単語が混在していたりします。多言語で育っている子どもにはよくあることかもしれないです。

<h2>話せることよりも親子で理解し合えることを優先して</h2>私は日本語も話してほしいので、できるだけ日本語で話すように心がけています。 けれど、彼らの日本語力は同年代の日本人に比べると低いです。かといってインドネシア語も英語もネイティブの家庭の子のように理解しているわけではないので、少し複雑な話をしたり、感情を交えた大事な話をするときに、「この子はどこまでわかっているんだろう…」と不安になるときも多々あります。 なので、最近では私も3か国語で交互に話したり、試行錯誤しながらこの「3つの言葉を総合して理解してくれれば」と子どもの理解度をうかがいながら話すことも多くなりました。この子たちのメインの言語は、結局英語になると思います。けれど、母国語として十分な言語として身につけることができるのだろうか、彼らが大きくなっても、コミュニケーションが取れているのだろうか、と不安な気持ちはあります。 でも、よく考えると、世界では多言語で育っている人のほうが実際は多いかもしれないですね。今では日本も小学校で英語の授業があるそうですが、私たちの時代は英語は中学校から第2言語としてゆっくりと学びました。基本的には日本語のみを使って、いろいろ学習したり、理解を深めてきたんだなと思うと、私たちの日本語能力は豊かなものだなと思います。バリ島には特に、多言語の家庭が多いです。学校では小学校から、インドネシア語、そして日本人の子どもたちは学校が終わった後、補習校に行って日本語で日本の勉強をしなければならない子もいるので、かわいそうだなって思うこともありますが、自由に3言語を使えるようになる彼らはやはりうらやましいですね。

<h2>小学生の語学移住はストレスも覚悟したほうが…</h2>私なんて、今でも英語の勉強をし続けなければならないのに、彼らはこれから必須になる英語力を苦労せずに、というと語弊がありますが、自然に身につけているのですから。 最近は、子どもに英語力をつけることを目的として、子育てのために日本を離れて移住して、私の学校に入学してくる家庭も多くなりました。 まだ子どもが幼稚園児以下で、言葉のコミュニケーションが未熟な年齢なら、成長していく過程で自然に緩やかに英語力も身につけていくことができると思います。でも、小学生になると、母国語である日本語がしっかりできあがってしまっているので、そういう子どもの場合は、英語が身につくようになるまでには、かなり時間がかかるようです。 私も以前は「子どもの脳みそは柔らかいんだから、そのうちすぐ英語も話せるようになるよ」と考えていましたが、なんのなんの。子どもたちは、かなり苦労してストレスの中で過ごすことに。 そんな子どもたちの様子を見て心を痛めることも多いのですが、外国人の子どもたちともコミュニケーションを取れている姿を見て、すごくうれしく思います。私も日本語上達のために息子を日本に留学させようと思いますが、彼は辛くて耐えられないだろうな…<h2> バリ島の暮らし</h2>

2024年8月のテーマ「子どもへの語学教育」

‌