<h4>石踊 千夏</h4>大阪市出身。22歳で熱帯雨林の保護活動を夢にインドネシアに渡るが、ジャングルに出会えず数年間意味もなく放浪。2000年にバリ島で日本語学校を設立する機会を得る。長男出産を機に息子のためにと託児所を建て、やがてそれが保育園、2020年には小学校をオープンすることに。現在、9歳と6歳の双子の母親兼、校長として理想の小学校づくりに奮闘中。

コロナパンデミックによって、世界中の子どもたちを取り巻く環境は大きく変わりました。 国によって違いはあるにせよ、子どもたちの心と体の健康をどう守ればいいのか、改めて考えた方も多いかと思います。 今月は「子どもの健康について」というテーマを選んでみました。 皆さん、お住まいの国もお子さんの年齢も違う中で、何に気をつけているでしょうか。

バリ島で暮らす中で、「バリ島と日本とどちらが好きですか？」っていうのはよく聞かれる質問です。 ポジティブな点もネガティブな点もそれぞれいろいろありますが、私はバリ島の気候がやはり最高だと思っています。暑すぎず、たまに涼しいくらいの感じが本当に快適なのです。 それから、ここに住む人たちが好きです。たまに彼らのルーズさにイラっとすることもあるけど、ここに住む人たちの優しさと温かさは、いつも私を安心させてくれます。 とはいえ、やはり日本に帰国するたびに、日本の食べ物最高！とか日本の便利さたまらん！とか、そのサービス精神にはあきれるくらい感心することも、正直多々ありますが。 ただ、医療面に関しては、こちらはやはり安心できないのが辛いですね。 &nbsp;<h2>長い間、国の医療制度がなかったインドネシア</h2>私がインドネシアに来た25年以上前はまだこの国には健康保険制度がなくて、お金がない人は病院に気軽に行けなかったりしたんですね。 だからなのかはわかりませんが、市販の薬でも結構きついものが売られています。 昔、18時間くらいかかる長距離バスに乗らなければならないことがあったときのことです。 市販の酔い止めを飲んだら、気絶するくらい眠たくなって、起きたら目的地に着いていた、ということがありました。 こちらではまだ「コーラと薬を一緒に飲んだら死ぬから絶対にだめだ」ということが一般常識だったりするわけです。

何年か前、新しい大統領になってからは、全国民対象に、退職金制度と医療保険制度ができて、いまはほとんどの国民が月数百円の保険料で医療を無料で受けられるようになりました。そのせいもあって、病院はいつ行っても随分待たねばならなくなりましたが、無料で医療を受けられることは本当に素晴らしく、私も医療保険を使い始めた当初は、診察の後、受付で薬をもらって、お金を払わず病院を出るときは、万引きしたかのようにドキドキしていました。もらった薬が効くときも、また効かないなと思うこともあるのですが、現地の病院で働いている日本人の友人曰く、「そもそもインドネシアの医療保険制度は、病院も行けない、薬も買えないような人たちのために作った制度なので、出される薬もジェネリックで少し前に開発された効果の弱い薬。日本人のように最新の薬を飲んできたような身体には効かないんだ」とのこと。それはそうかもしれません。

<h2>ま、すべては神様次第ですから</h2>お医者さんの診察も結構ゆる～い感じで、子どもが風邪の症状で診てもらったあと、何も説明がなかったので「どうしたんですかね？」とどんな症状か教えてもらいたかったんですが「気候ですねぇ」って、最近天気が不安定だから風邪を引いたっていうことなんですが、「なんやそれ！知っとるわ！」って感じでした。友人も腹痛が続き入院に至ったのですが、原因がわからず「とりあえず切ってみよう」と言われ、「え？何でですか？」と問えば「いや、切って開けてみれば何かがわかるかもしれない」と言われていました。それから私の子どもは3人とも体外受精で授かったのですが、その治療を受けているとき、精神科の先生の診断もプログラムに含まれてて、不妊治療で不安定な妊婦さんのケアも治療の1つに含まれているんだなと少し感心しつつ診察にのぞんだのですが、いろいろな質問のあと、「ま、すべては神様次第ですから」と言われ、「結局そこかい！」と思ったのでした。

インドネシアの人は信心深い人が多く、特にバリ島は神々の島と呼ばれるヒンズー教徒の人たちが多いのですが、彼らの生活、考え方にバリヒンズーの教えが強く根付いていると感じます。 彼らはバリ島は神に守られていると信じているので、以前インドネシアで有名な占い師が、〇月〇日にバリ島に災いが訪れると占ったときも、結構な騒ぎになって、島の人たちが仕事も休んでこぞってお寺参りに行っていました。 私も、自分だけ救われないのは嫌なのでもちろん参加しましたが。と、話は少し逸れてしまいましたが、病気やけがの治療となると、さすがに神頼みだけではこの国では不安も多いので、検査が必要になったり、少し心配な症状の場合は帰国する人も多いようです。そういえば、私が出産のときも陣痛で苦しんでいる私に、夜中だったせいか、側についてくれる看護師さんもいず、かといって主人も呻いて叫んでいる私にビビって目も合わしてくれないし、こんな痛いのを我慢している自分がばかばかしくなって「切ってください！」と叫び、「追加料金でこれこれかかります。」という説明もまともに聞かず「サインするする！だから早く切ってください！」みたいな感じで急遽帝王切開で産むことになったのが今は11歳になる息子です。

2024年11月のテーマ「子どもの健康について」

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