<h4>栗尾モカ</h4>横浜で生まれ育つ。美大卒業後、若い時期にたくさん旅行をしたいと思い、航空会社に入社。国際線に乗務する。その後、講談社の雑誌編集部で多くの企画を担当。「ダ・ヴィンチ」でコミックエッセイデビュー後、朝日新聞等で取材・イラストの連載をスタート。

4月のテーマは「約束・決まり・タブー」について 「約束・決まり・タブー」って、個人や国の大切にしていることや価値観が反映されるなあと思います。ひと口に「約束」と言っても、親子や家族間のプライベートな約束ごとから、学校や国といったコミュニティのタブーやルールまで幅広いフィールドの中から自由に選んでもらいました。同じテーマなのにこんなに違うグローバルレポート！お楽しみください。

シンガポール在住記者の栗尾モカです。 今回のテーマは「ルール」！きっちりとしたルールが生活に根付いているシンガポールにぴったりのテーマです。ルールがあるからこそシンガポールの街がクリーンに保たれ、経済的にも発展したのではないか...とさえ思います。 シンガポールに住み始めてから6年目になりますが、シンガポール人のマナーの良さにはいつも驚くことばかりです。とはいえ、ローカルの友人にそう伝えると「でも、昔はこんな感じじゃなかったんだよ。最初からこうだったわけじゃない」と言います。 努力の結果、秩序が保たれるようになったのだとか。<h2> 礼儀正しい日本人。でも電車の中では？</h2> 私たち日本人は、世界中で「礼儀正しい」と言われて久しいです。 身近なシンガポールの話だと、たとえば住居を借りるときにシンガポール人のオーナーは、色々な国籍の人の中でも特に日本人に貸したがります。 理由をきくと「礼儀正しいし、きれいに部屋を使ってくれるから」これを聞くと、今までシンガポールに住んできた日本人が積み重ねてきた信頼があるのだなと思います。&nbsp;一方、一歩外に出て公共の場所に行くとどうでしょうか。 海外から日本を見たときに感じるのは「日本人は、電車の中で他人に対して大変冷たい場合がある」です。 よくある話では「優先席に元気な人が座ったままお年寄りが乗ってきてもスルー」「おなかが大きい妊婦さんが乗ってきても、スーツ姿の男性たちは腕ぐみをして寝たふり」などがあります。 どうしてこうなってしまったのか…。 実際に、自分が妊娠したときに大きなおなかをかかえて仕方なく何度も電車に乗りましたが（マタニティマークはデザインが苦手でつけませんでした）優先席に座れることはほぼなく、体調もいまひとつだったので、やむをえず移動が必要なときにはグリーン車に乗るようにしていました。それもなかなか微妙な気分でした。

<h2>電車の中でお年寄りのために皆がさっと席を立つスマートさに感動</h2>私がシンガポールを好きな理由の中に「電車の中の態度がみんなスマート」があります。お年寄りが乗り込むと、同じ車両の人の中でたいてい2人以上の人たちがさっと立ち上がり、「ここに座ってください」と誘導するのです。 ……すごい！これはすごい。シンガポールに来たばかりのころ、私はとても感動しました。この「数人がさっと立ち上がる」のは、たまたま偶然見た光景ではなく、どの路線でも、どんな世代でも当たり前のように行われています。でも、あらためて考えてみたら席に座るべき人が座る、そして席を譲るべき人は自分から席を譲ることは、ごく自然な姿ではないでしょうか。 写真をご紹介します。最寄りの駅のMRT（地下鉄）の入口に続く歩道の看板です。 「FEELS SO GOOD TO GIVE UP MY SEAT!」席を譲って気分上々！という感じでしょうか。 地下鉄に乗る前から「席を譲ろうキャンペーン」です。こんな風に看板でしらせなくてもみんな席を譲ってるけど…とも思いますが、地下鉄に乗るまでずっとこの看板が続いています。

地下鉄に乗車すると、さっきの看板のメガネガールが再登場。「Show You Care offer this seat」席を譲りましょう。あなたのお手本を見せてね！と、語りかけてきます。

続いて、友人キャラも登場！「バッグは床に置いてね（もっと座席にスペースをつくろう）」と言っていますが、座席に荷物を置いている人を見たことがありません。たいてい乗客は足元に置いています。ちなみにネットの棚は設置されていません。

<h2>ルール違反に厳しいシンガポール。車内飲食をすると罰金は500ドル！</h2>ところで、シンガポールではルールを破ると、高額な罰金が待っています。 例えば、車内飲食をすると罰金500ドル（約5万円）。そういえば、シンガポールでは車内に限らず街中でも立ち飲みをしたり歩き食べをしている人をほとんど見ません。

シンガポールの罰金制度に関しては皆よく心得ています。でも、普通にルールを守って生活をしていれば罰金を払う必要もないので、とくに怖がることもありません。<h2> シンガポールはシェア文化。フレンドリーでいこう！</h2>シンガポールに住んでから、チャイニーズ系、マレー系、インド系、それぞれの友人に恵まれています。みんな凄くフレンドリーで、とても付き合いやすい。私の周りがたまたまそうなのか、サバサバしていながらハートが優しい人ばかり。みんなボランティアや人助けを生活の中で普通にしているし、地下鉄の中で席を譲ることは当たり前だと思っているそうです。&nbsp;フレンドリーな感じは、街で感じることもよくあります。 「その服素敵ね！」と知らない女性に話しかけられることもあるし、カフェでひとりで食事をしていたら隣の女性グループから「一緒にいかが？」とフレンチフライを貰ったこともありました。私も私で「美味しそう、サンキュー」と言って分けてもらったのですが、「あなた日本人？」と訊かれたりして、そこでいろいろと会話をしたりしました。日本ではなかなかこのシチュエーションはないような気がします。偶然の出会いは自分でつくろう。彼女たちから学びました。&nbsp;「シンガポール人って、なんで感じのいい人が多いのかな」とふと考えることがあります。態度に余裕があるし、モラルもしっかりしている。教育レベルが高く、国が決めたさまざまなルールを守っている。そしてフレンドリー。 「FEELS SO GOOD TO GIVE UP MY SEAT!」いつも自然にこの気持ちになるのがシンガポールです。

2023年4月のテーマ「約束・決まり・タブー」

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