<h4>栗尾モカ</h4>横浜で生まれ育つ。美大卒業後、若い時期にたくさん旅行をしたいと思い、航空会社に入社。国際線に乗務する。その後、講談社の雑誌編集部で多くの企画を担当。「ダ・ヴィンチ」でコミックエッセイデビュー後、朝日新聞等で取材・イラストの連載をスタート。

6月は英語・数学・国語・理科・社会の5教科以外の教科、つまり音楽や体育といった「副教科」について各国の事情をレポートしてもらいます。日本では2022年から小学校高学年で教科担任制が導入されるようになりましたよね。 主要教科含めて専門性の高い授業を目指す、といったところでしょうか。さて、そもそも時間割がない自由な外国では、いったいどんなふうに音楽や体育、図工を学ぶのでしょうか。運動会や音楽会ってあるんでしょうか。今月も各国違ったレポートとなりました。

<h2>SDGsの研究発表はRapに乗せて。観客は最後まで全集中</h2>シンガポール在住記者の栗尾モカです。 今回は、音楽と美術の授業についてお伝えします。娘が通うインターナショナルスクールでは音楽と美術に力を入れているのが特徴で、なかなかクリエイティブな雰囲気があります。音楽活動はかなり盛んです。特にセカンダリー（中学校）の生徒たちによる課外活動のロックバンドは沢山あって、どのグループも本格的。大人顔負けの演奏技術で、音楽発表会では釘付けになってしまうほどです。普段、音楽の授業は週一回。でも、音楽の授業以外で歌を歌ったり、ダンスをしたりといったこことも多いです。たとえば、先日SDGsの探究発表が行われた際には、それぞれのグループがRapにのせてレポートを発表していました。ちょっとイメージしにくいと思うんですけど、あえて和訳をするなら…♪ 海洋汚染　深刻な問題　世界各国　考えるべき問題… ♪こんな感じで（実際は真面目な内容が長く続きます）発表が全部Rapでした。内容はしっかり調査されたレポートでありつつ、リリックはしっかり韻を踏んでいて、どのチームもレベルが高かったです。「Rapかぁ！」と驚きましたが、Rapを用いたのは一つのチームだけではなく、学年の生徒全員がRapで研究発表をしていたのが面白いなと思いました。リズミカルなRapは聞く側を飽きさせることなく、最後まで会場を惹きつけていました。その様子を見て「退屈だと言われてしまう講義をしている先生たちが生徒たちの前でいきなりRapで講義したら、みんな覚醒するかも・・・」と思いました（笑）ちなみに、バックに流れる曲は明るいタイプではなくて、いわゆるGangsta rap※（ギャングスタ・ラップ）。生徒の親世代（つまり私たち）が耳にしていたSnoop Dogg※（スヌープ・ドッグ）や2Pac※（トゥーパック）などのダークな雰囲気のメロディと、環境問題に警鐘を鳴らすRapの内容がよく合っていました。 「やるなぁ…！」 すっかり感心してしまいました。発表の内容もスムーズに頭に入ってきたので、Rapのプレゼン効果は抜群でした。 ※ギャングスタ・ラップ：1980年代後半に流行ったラップのスタイルのひとつ。人種差別など社会問題を表現するどちらかといえば過激な歌詞と曲調が特徴。 ※スヌープ・ドッグ/トゥーパック：ギャングスタ・ラップの代表的なミュージシャン。 &nbsp;<h2>「絵の具を溶かすのは、水だけじゃつまんないじゃない？」生徒の一言で決まったアートクラスのぶっとびアイデア</h2> アートのクラスで「先生、水彩絵の具は水に溶かさないとダメですか？」そう言った生徒がいたそうで、先生も「それもそうねえ、水じゃなかったらどうなるかしら」と言い「じゃあ、他の液体で絵の具を溶いてみようか」ということになったそう。先生が「水しかないでしょう」と言わないところがいいですね。ふとした生徒の発言をスルーせず、実験の場にしてしまう先生は最高です。その結果がこちら！

次に、綺麗に発色した水彩画を丸くカットし、空に見立てて作成したのがこちら。

下の円盤をくるっとまわすと、夕焼けが現れたり、日が沈んだり。どの作品も色使いが幻想的です。空の美しさを際立たせるために、あえて手前の風景をモノトーンで描いているところもポイントですね。SDGs Rapにしても、水に溶かない水彩にじみ絵にしても、固定概念に縛られていないのがなんともいいです。生徒が発案したりコメントできる空気、そのアイデアに乗ってくれる先生たち。そんな自由なやりとりが授業を面白くしているようです。

2023年6月のテーマ「副教科について」

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