<h4>栗尾モカ</h4>横浜で生まれ育つ。美大卒業後、若い時期にたくさん旅行をしたいと思い、航空会社に入社。国際線に乗務する。その後、講談社の雑誌編集部で多くの企画を担当。「ダ・ヴィンチ」でコミックエッセイデビュー後、朝日新聞等で取材・イラストの連載をスタート。

10月のテーマは「ハロウィーン、どう過ごしますか？」 仮装した若者で溢れかえる渋谷の様子も恒例となりましたが、今年はどうなるのでしょうか。そもそもハロウィーンは古代ケルト人のお祭りで、アイルランドやスコットランドで定着し、アメリカに渡ったと言われています。11月1日を新年と考え、日本の大晦日にあたる10月31日には死者の霊が蘇るとされ、悪霊から守るためにちょっと怖い飾り付けをするのだとか。なんとなく、日本のお盆に似ていますね。今では世界各国の子どもたちがお菓子をもらうために仮装する日、というイメージですが、元は宗教的なお祭り。 各国で捉え方が違うのでは？ということで、今月のテーマは「ハロウィーン、どう過ごしますか？」と題し、海外在住Sodaファミリーレポーター​​が各国、各家庭でどのように過ごすのかレポートしてもらいます。

シンガポール在住記者の栗尾モカです。今回のテーマはハロウィーン！ ハロウィーンの時期には先祖の霊がこの世に戻ってくる一方で、悪い霊にいたずらをされないように、ゾンビなどの怖い風貌の仮装をするのが一般的です。 でも、ここ数年は、好きなキャラになりきったりして、自由にコスプレを楽しむようになりましたよね。去年のシンガポールの幼稚園のハロウィーンの様子です。 バットマンやスパイダーマンなどのヒーローコスチュームが人気。彼らの妹や弟（赤ちゃん）たちはイチゴやチェリーなど、「一粒果実」になっていてめちゃめちゃ可愛い。 レンタルコスチュームのお店は、数は少ないものの一応ありますが、ネットで買う人も多いです。

<h2>中華版ハロウィーン「Hungry Ghost Festival（ハングリー・ゴースト・フェスティバル）」では、先祖にお金や物を贈る</h2> シンガポールは、あまり盛大にハロウィーンイベントをする印象がありません（インター校ではイベントをする学校が多いです）。 それは、ハロウィーンの少し前（今年は9月丸々1ヶ月間）に、ご先祖様をお迎えする「Hungry Ghost Festival（ハングリー・ゴースト・フェスティバル）」を行うからではないかと思います。シンガポールの人口の70％以上を占める中国系シンガポール人の間では、この伝統的な風習が大切にされています。しかも、期間は長く、1ヶ月間も続きます。 ご先祖様は、シンガポールの滞在をゆっくり楽しまれるようです。外国人の私たちの目にも「ああ、今年もご先祖様をお迎えする時期が来たんだな」とわかります。街のあちこちに金属製の小型の焼却炉が置かれ、メラメラと炎が上がる焚き火の中で、ご先祖様があの世で使うためのお金や、紙製の生活グッズを燃やしているからです。&nbsp;

これは、道端に期間限定で置かれる焼却炉。ろうそくがお供えのケーキに刺さっています。

上の写真は、ハングリー・ゴースト・フェスティバルの時期限定で、ホーカーセンター（屋台）に設置されるお供えの台。フルーツやお汁粉などが豪華に盛り付けられています。 器やお箸の数を見る限り、ずいぶんたくさんの人数のご先祖様をお迎えしているようです。<h2> あの世でもシンガポール的なラグジュアリー生活！？︎お供えものにお国柄が反映</h2>市場には、ハングリー・ゴースト・フェスティバルの間にご先祖に贈る（燃やすことで贈るのです）、紙でできた食べ物や日用品が売られています。

こちらは紙で出来たローカルフード。サテ（ピーナツソースをかけた焼き鳥）などが入っています。あの世でもご先祖様がおなかをすかせることなく、しっかり食事ができるようにと、燃やしてお供えします。手が込んでいて、なかなかリアルです。

次はお供え用のiPhoneです。あの世でも充電して頂き、通話ができますように。wi-fiもあるということですね。

ダンディ・セット（？）です。携帯、クレジットカード、サングラスのほか、ダイヤとエメラルドが装飾されたロレックス、ワニ皮の財布、バックルにブランドロゴの入ったベルト、ジッポーライターなどがギッシリ入った詰め合わせ。このアイテムを身につけている人が実際にいそう、と思ってしまうセレクションです。

車好きなご先祖様にはこんなギフトも。おそらくランボルギーニでしょうか。

なんと、スロットマシンがありました。シンガポールにはカジノがありますが、こんなお供えものがあるのは驚きです。このような感じで、日本のお供えものとは随分違います。死生観もかなり違うような気がします。とても興味深いです。以前、JETRO（日本貿易振興機構）の「シンガポール・ライフスタイルブック」の制作に参加した際に、シンガポールの冠婚葬祭のページを担当しました。 葬儀社は、多国籍のシンガポールらしくマレー系、インド系、中華系と分かれており、それぞれの会社の担当者と話し合い、シンガポールで行われる葬儀の文化について話を聞きました。土葬と火葬、土葬にする場合のタイムリミットなども人種によって決まりがありました。中華系の葬儀社には、夫婦の遺灰を合わせて一つのダイヤモンドをつくり、子どもがアクセサリーとして身につけるサービスや、お洒落で豊富なデザインが揃う骨壷、バスケット素材の棺などもありました。 紙製のランボルギーニやスロットマシンにも驚きましたが、葬儀も良い意味で悲壮感を感じず、どこか明るい感じさえ受けました。 「次の世界でも元気に楽しく過ごしてほしい」という遺族の想いを感じ、個人的には好印象でした。 ハロウィーン、ハングリー・ゴースト・フェスティバル、そしてお盆。 ご先祖様を迎えるたびに色々なことを考えます。

2023年10月のテーマ「ハロウィーン、どうお祝いしますか？」

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