<h4 id="heading-OGX5uFQvL935rCIseQB4F">栗尾モカ</h4>横浜で生まれ育つ。美大卒業後、若い時期にたくさん旅行をしたいと思い、航空会社に入社。国際線に乗務する。その後、講談社の雑誌編集部で多くの企画を担当。「ダ・ヴィンチ」でコミックエッセイデビュー後、朝日新聞等で取材・イラストの連載をスタート。

2025年最初のグローバルレポートは、海外で子育て中のみなさんに、お子さんの教育について気がかりに思っていることや、悩んでいることについて聞いてみました。 幼稚園から大学生までさまざまな年齢のお子さんがいるファミリーレポーターのみなさん。 それぞれ現地での学校や勉強、進学など教育に関する悩みごとや心配ごとなどを共有してみたいと思います。

12歳の娘は、シンガポール日本人学校に5年生まで通い、その後はインターナショナルスクールに転校しました。 日本人学校はとても丁寧な教育をする学校で、担任の先生もきめ細かく勉強をみてくれる素晴らしい学校でした。忘れ物をしないようにチェックをしてくれたり、ノートも細部まで確認してくれます。英語教育にも注力しています。 しつけがきちんとされている子どもが多く、大人びた発言をする子どもが多くて感心してしまうことも多かったです。母親の間では「学校がいい意味で平和過ぎて、日本に帰国したときに問題と直面した時、乗り越えることができるかしら」と心配する人もいたほどに問題が少なく、穏やかでした。家族はどのような感じかというと、日本企業からの駐在でシンガポールに赴任になった父親に帯同してきた家族が大半で、3年ほど住んだら帰国する家族が多いです。 なので、この学校は常に転校生が入ってきて、常に帰国する生徒がいます。日本人学校に子どもを入学させる親は「母国語の定着」にウェイトを置いていて、「日本には近い将来帰国する予定なので、シンガポールは限られた時間」という人が多かったです。父親（もしくは母親）の会社の都合でシンガポールでの仕事が終了してしまうと帰国になってしまうので「会社からあと3年といわれていたけれど、プロジェクトが終了したので突然家族で帰国した」というのはよくあるケースです。 なので、子どもの教育のスケジュールを立てるのが難しい場合があります。もちろん、永住権を持っている日本人家族もいますが、限られた駐在の中で数年滞在する家族が大半だと学校の先生もお話されていました。駐在に帯同した母親たちの共通の悩みは「予定が見えづらいので落ち着かない」でしょうか。会社都合なのでいつ、日本に戻るかわからないというケースです。 また、シンガポールに赴任した日本人家族は、ほかの国から日本を挟まずに外国から外国へスライドしてくる人たちも多く、NYからシンガポール、香港からシンガポールといった感じで2カ国目、もしくは3カ国目以上の家族も少なくありません。海外を移動をすることで、まだ人生経験を積んでいない子どもがその都度新しい環境に慣れる努力をすることは、相当のストレスになる場合があるので、学校から引越しに伴う子どものメンタルケアについて講義がありました。 親も、新しい環境で子どもが怪我やトラブルに巻き込まれないよう、安全対策に関する情報を大使館や学校、ネットや口コミから集めていきます。 シンガポールはとても安全な国なので問題がなかったのですが、以前住んでいたジャカルタはインフラが整っていない国だったので、頻繁に街が冠水したりテロが起こって部屋にこもったりと、いろいろ苦労した思い出があります。いつまで海外にいるのか予定が立たないと気持ち的にいつもすっきりしない状態が続くのですが、発想を転換して、移動に慣れれば不安定な世の中でも冷静になれると前向きに捉えるようにしています。 &nbsp;<h2>日本式の教育を受けることができるのは中学もしくは高校まで</h2>シンガポールの日本人学校は、小学校と中学校があり、居住していれば誰でも入学することができます。 その後もシンガポールで日本語メインの教育を受けたい場合、高校は早稲田渋谷シンガポール校の1校だけになります。この高校に入ると早稲田大学にほぼ進学できるので、シンガポール以外に住んでいる親からも問い合わせがあるそうです。 また、寮があるので両親が日本に戻ることになった場合、子どもだけシンガポールに残るケースも少なくないそうですが、問題は費用です。1年次の入学金、授業料、施設費の合計は4,212,000円（1シンガポールドル＝114.44円）で、寮に入る場合にはプラス70万円（1学期）と、かなり高額です。<h2> インターナショナルスクールはサバイバル</h2>シンガポールに住んでいる間、英語で学生生活を送りたいと考える家族が進路に選ぶのがインターナショナルスクールです。 インター校でハードルになるのは費用ですが、早稲田渋谷シンガポール校と同じくらいか、それよりも高額になってしまいます。 親が勤める会社が学校の費用を負担してくれる場合もありますが、インター校に子どもを通わせている母親は、父親と同様にフルタイムで働いてキャリアを積んでいるケースが多いように思います。インター校に子どもを通わせて感じたのは、自分から動かないと何も起こらないということです。学校はリクエストベースで提供している資料や講座がたくさんあり、希望を出さなければ通り過ぎていってしまいます。頭に浮かぶのは、こんなイメージです。 日本人学校に通っていると、入学と同時に鍵束を渡され、その都度先生が「こちらのドアを開けて」と旗を振ってくれるのですが、インター校に入った場合には鍵から1個ずつ自分で入手して、鍵穴を探し、挿すところまで自力でやる…という感じです。学校からのお知らせはメールやアプリに来るだけで、紙はありません。情報量が多く内容が複雑。回答の締切がとても早いので、常に携帯をチェックしています。日本人学校では、担任の先生とだけ連絡をとっていましたが、インター校は複数のセクションから大量のメールが来るので、毎回「このスタッフは誰だろう」と、メールに添付された名前と顔写真をじっと見て覚えようとしています。学校では頻繁にペアレンティングの講義があり、親が子どもを導くことができる親になるための教育を提供しています。（これがなかなか難しい課題です）番外編ですが、シンガポール人に混じって通う現地校に行く手段もあります。 ただ、試験がとても難しいのと、日本人で入学を希望する場合には永住権（PR）を持っている必要があります。 シンガポールの永住権取得は年々難しくなっていますが、申請者の出身大学が選考基準に関係します。シンガポール政府が永住権取得に際して優遇する大学は、東京大学、京都大学、東京工業大学、大阪大学、東北大学の5校となっています。 非常にレベルの高いシンガポールの現地校ですが、授業料が無料です。まさに憧れの進路ではないでしょうか。海外に住んでいるといろいろ悩みは尽きませんが、個人的に続けているのは地政学です。 これから各国でいろいろなことが起こり始めるはずなので、娘と一緒に学んでいます。

2025年1月のテーマ「子どもの教育への不安」

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