ほっとSoda情報局

長年小学校や中学校のスクールカウンセラーをしていますが、実感として、ここ数年は保護者や教員から「最近子どもがキレやすくなって…反抗期でしょうか？」「昔に比べてキレやすい子が増えていませんか？」というご相談が増えていると思います。『キレる』と言う表現が当たり前になったのは1990年代後半からと言われています。その以前は、我慢していた「怒り」（無意識の場合もありますが）が何かをきっかけにプッツンと切れるという状態を『プッツン』と言った時期もありましたが、そこから『キレる』だけが残ったわけです。自分の感情がプツンとキレて、衝動的な言動をコントロールできず、感情が途切れて固まってしまうような状態になる。このような状態は本人だけではなく親や周囲の人すべてを不快にし、人間関係もまさに「切れて」しまうことにつながります。

この「怒りやイライラの感情」をコントロールするためのトレーニングとして 1970年代にアメリカで生まれたのが「アンガーマネジメント」です。アンガーマネジメントと聞くと、「6秒ルール」がよく知られています。 この「6秒ルール」について説明します。怒りの対処に共通して大切なことは、「怒りに反射しない」ということです。そしてその怒りの感情のピークは6秒間と言われています。 ですので「怒りを感じたら6秒間待って怒りをやり過ごしてみましょう」というのが、6秒ルールと言われているものなのです。

しかし、これは6秒待てば怒りが鎮まるということではありません。あくまでも6秒カウントすることで、ピークをやり過ごし、少し理性的になれるかもしれない、ということです。 そして、6秒カウントするだけでは効果がない場合には、何か気持ちを落ち着ける言葉を心の中でつぶやいてみたり、小さく深呼吸をすることで「怒り」をやり過ごす。このような簡易的なトレーニング方法が「6秒ルール」と言われるものです。実際にその場を離れてやり過ごすのも良いと言われています。 学校などでは落ち着ける空間に一旦避難し、クールダウンしたりするなどの工夫が行われています。最近は社員研修の一環としてアンガーマネージメントを取り入れている企業も増えていて、多くの人が知るようになりましたね。そして、アンガーマネジメントは「キレる子ども」にも有効と言われています※が、実際の学校現場ではなかなか6秒間でやり過ごすのは難しい現実もあります。※文部科学省ではアンガーマネジメントを「感情理解教育」と「自分の中に生じた怒りの対処方法を段階的に学ぶ方法としてメンタルケアの有効な一つと捉えています。対処法を実行する前に、まずは個々の「怒り」や「キレる背景」を考えてみることが重要です。 &nbsp;<h2>脳科学の視点からみた、キレる3つの原因</h2>

<h3>1）脳の前頭前野の未発達</h3>怒りは大脳辺縁系で生まれ、それを前頭葉が理性で抑えています。 前頭葉は感情のコントロールを司っていますが、子どもの脳はまだこの前頭前野が未発達または不活性です。 前頭前野は脳の中でも最後に発達し十代の終わりまで成長し続けると言われています。ですので、子どもが怒りをコントロールできないのは「脳」の発達という視点からも当然の一面もあります。 &nbsp;<h3>2）セロトニンの欠乏</h3>前頭前野の機能をスムーズに動かせるために必要な物質にはセロトニンが重要です。疲労、ストレス、睡眠不足、運動不足などによってセロトニンの働きは弱まってしまいます。 子どもたちの生活をみると、夜型の生活が増えていて、朝から何だか疲れていることが多くみられます。また、遊びの中心がゲーム類だったりすると、脳の一部は緊張しているものの、身体全体を使っての健康的な疲労感があまりなく、それ以上に脳疲労が増えています。その結果セロトニンが欠乏し、イライラや衝動的な怒りのコントロールができにくくなる一因となるのです。 &nbsp;<h3>3）血糖値の問題</h3>切れる原因の一つには血糖値が関係していると言われています。血糖値が80を下回ると脳は不安定になります。そのため血糖値を上げるホルモンを出そうと頑張ります。ホルモンの中にはアドレナリンが含まれているので、興奮して攻撃的になりやすくな流のです。お腹がすくとイライラしやすくなるのはこのしくみから起こっています。 たとえば朝ご飯を食べずに登校して給食で一気に血糖値が上がる…などを繰り返しているとそこからも「怒り」を生じやすくなるといえるかもしれません。 以上のキレる3つの原因はこれまでは大人の問題とされてきました。それが今では子どもの世界にも起こっていることを見逃してはいけないと思います。脳科学の視点からみると、子どもの脳は当然ながら未発達です。 まずは睡眠や食事、適度な運動という基本的な生活習慣を見直すことが大切だと言えます。 &nbsp;<h2>一般的に言われるキレる子どもの7つの特徴</h2>

先ほどあげた脳科学からの視点は、切れやすいと言われる子どもの特徴にも少なからず関係しています。次に一般的な切れやすい子どもの特徴を考えてみたいと思います。<h3>1）土台となる次元の欲求が満たされていない</h3>人の欲求の満たされたい順番は1-生理的欲求 2-安全欲求 3-所属欲求 4-自己実現欲求です。このうち1と2はその人の土台になる部分ですが、この二つの欲求が満たされない状態を言います。 &nbsp;<h3>2）ストレスを一時的に持ち堪える力「ストレス耐性」が育っていない。 &nbsp;</h3><h3>3）自分の欲求が何かがわかりにくい、わからない。</h3>生理的に不快は感じているのに、それがなぜなのか、何に対してどのくらい不快なの &nbsp;か？がわからない状態。 &nbsp;<h3>4）自分の欲求を言語化しにくい。または言語・非言語での自己表現力が低い。</h3>言葉で自分の欲求を表現するのが苦手な子どもは、感情や意志を自由に解放できにくく、自分の意思ではなく我慢した状態になりやすいと言えます。 &nbsp;<h3>5）4によりストレスの反応や表現力が限られてしまう。そのため、抑えこむ・避ける・代用する・他人になすりつける・忘れる・思い込むなどの行動になる。 &nbsp;</h3><h3>6）ものごとを自分の尺度で測りがち。他者理解・共感・愛着や情緒の発達が未熟 &nbsp;</h3><h3>7）出来事を決まったパターンで考えやすい（オートマチック思考）</h3>・ものごとの一部（ただし、本人にとっては重要だったりなじみがあったりする）のみ　を拡大認知する。 ・場面の前後の文脈ではなく特定の場面だけで過去の体験と関係付ける。 ・繰り返される同じパターンの体験（被虐待児・厳しいしつけ、繰り返された失敗体験など）で認知パターンを変えにくくなっている。 ・突然の衝撃により体験と恐怖感情が一緒に記憶され何かのきっかけで蘇るなど。 そして、上記のうち3、4、6、7については、脳の特徴（発達の凸凹）と関係がある可能性があります。幼児期にその背景によって特徴を見つけてあげられると良い場合もありますが、ほとんどが成長の中で親や友人、指導者の中で自然に育っていきますので、ご安心ください。 ここまで怒りの原因と特徴について触れてきましたが、あくまでも一般論です。怒りの感情はこのように複雑で大変デリケートな問題です。個人個人それぞれの環境や状況によって判断は異なりますので、おひとりで判断せず、学校や信頼できる人に相談するなど抱え込まないようにして下さい。そして最終的には専門機関にお問い合わせください。 次回は具体的な問題行動とその対処について考えてみます。 後編はこちら <a href="https://www.seiban-sodasoda.com/episodes/detail/hotsoda-240207/">キレやすい子どもたちとの付き合い方4つのステップ 臨床心理士が解説する「怒り」のメカニズム</a>

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