ほっとSoda情報局

<h4 style="line-height:1.2;margin-bottom:0pt;margin-top:0pt;" dir="ltr">安田真理子</h4>&nbsp;臨床心理士・公認心理師・ストレスチェック実施者資格 日本心理臨床学会・日本交流分析学会所属 カウンセリングルーム　オフィスウェル代表 &nbsp;湘南で35年以上、医療、教育（スクールカウンセラー）、企業（健康管理室）において心理カウンセラーとして子どもから大人まで多くのクライアントのカウンセリングに従事。 特に教育関係の行政との接点も多く、幼稚園や小学校の現場事情にも理解が深い。 「カウンセリングは心の整理整頓のお手伝い」と、相談者の「困ったな…」「どうしたらいいのだろう？」に寄り添うカウンセリングはクライアントからの信頼も厚い。 ▼Office Well（オフィス ウェル） <a href="https://www.officewellmy.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">https://www.officewellmy.com/</a>

<h2>『ていねいすぎる子育てが、子どものやる気を奪っているかも…』</h2>小学生のお子さんを持つ保護者の方の悩みに多い「子どもの無気力」<ul><li>何を語りかけても反応がない</li><li>落ち込んでいたりしても問いかけには「別に」としか答えない。</li><li>友達同士でも遊んでいる姿が見られない。</li><li>自分のやりたいことを持っていない…</li></ul>といったように、かつては大学生によくみられた現象の「無気力」ですが、小学生にまで広がっているというのが現代社会において大きな問題となっていることをお伝えしました。<a href="https://www.seiban-sodasoda.com/episodes/detail/hotsoda-240216/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">前編</a>では学童期に気になる症状とその対応について「発達の視点」を中心に解説しました。後編では、「親の接し方」という観点から解説していきます。ていねいすぎる子育てによる過干渉や誘導により、子どもがやる気を失ってしまうことがあります。また、弟や妹の誕生や転居など環境の変化により受けたストレスを周囲が見過ごしてしまうことも。 &nbsp;<h2>子どものやる気を奪ってしまう親の対応あれこれ</h2>

子どものことを心配するあまり、子どもに困ってもらいたくないために、先々のことを先回りしてあれやこれや「アドバイス」をし過ぎてしまう親のことをヘリコプターペアレントと言います。良かれと思って先回りをして子どもを誘導しすぎると、子どもの「自分で考える」という力や意欲を奪っていることになりかねません。 大人は子どもより経験を積んでいますから、当然未熟な子どもより間違いの少ない選択ができるはず。また、自分のした失敗や苦労を子どもにはさせたくない、または遠回りや無駄をさせたくないと思う。多くは子どものことを思って…という気持ちからなのですが、その積み重ねが中学生くらいになると「自分で考えて決定のできない子」をつくってしまうことになりかねないのです。小学校時代より中学になると、生活の中で大小含めてさまざまな自己決定が必要になってきます。私が学校現場で出会う「無気力な生徒」にはこの自己決定のできない子が大変多く見られます。

<h2>自己決定ができない子の育ってきた過程に多い親のタイプ</h2><h3> ①目の前の小石をとにかく取って子どもが転ばないようにするタイプ</h3>子どもが「◯◯したい」と言ったとき、「それは～だからこうしたほうがいい」とありとあらゆる例をあげて親の選んだことを選ばせる親です。確かに子どもは転ばないかもしれません。けれど自分の選んだものを否定されることが重なると、子どもは「自分の選ぶものはダメなんだ」という経験が繰り返されることになります。 その結果、自信はなくなり、次第に自己肯定感も低くなり「何を言ってもやってもどうせ反対される」という無力感から無気力になって結果自己決定ができない人間になりやすくなります。 &nbsp;<h3>②この子は自分で選べない子。だから私が選ぶのは仕方がない。と思うタイプ</h3>青色と白色のTシャツを前にして「どっちがいい？好きな方選んでいいよ」と聞いたとき、

（心の声）本当はどっちも嫌。赤のTシャツがいいんだけど、でも赤とかママは絶対嫌い）
「じゃあ白…」

「白でいいの？汚れやすいわよ」

「じゃあって何よ！青でいいの？好きな方選べばいいのに」

（心の声）もうどっちでもいいんだけど…だって何色がいいの？なんて聞いてくれないじゃない
本当は青も白も嫌。赤がいいんだけど、どうせ何を言ってもママはいい顔しないのわかってる…）

「ママの好きな方でいいよ」

「もう本当にあなたは自分で選べないんだから」

結果‥母が選んだTシャツになる。 この子は自分で選べない子。だから私が選ぶのは仕方がない。と思う。Tシャツくらいならいいですが…年齢が上になってくると、今度は親から自己決定のできないことを責められたりと、悪循環が起こります。悪循環の結果「なんでもいい」と言うと、親から見ると「無気力な子ども」という評価になってしまいます。 &nbsp;<h2>安心してSOSを出せる安全基地があれば子どものやる気は自然に育つ</h2>

発達的観点から子どもを見ると、児童期ではまだ子どもはストレスや気持ちの落ち込みを認知レベルでは捉えることは難しく、その結果ストレス反応を心身の症状（心身症による腹痛、吐き気、頭痛など）身体言語化と言われることで表現することが多く見られます。幼い子どもが「ぽんぽんいたい…」と甘えて言ったときに、お母さんが「いたいのいたいの飛んでいけ～」と言ったりするのは、身体的な表現を汲み取っていると言えます。 子どもは自分の表現を周囲の大人が汲み取ってくれたことを通じて、安心してネガティブな感情表現ができるようになります。 ところが幼少期から大人の期待に応えるため、ネガティブな感情を無意識に抑制して育ってしまうとどうなるでしょう。

たとえば、お腹が痛くても我慢してしまう。 そしてひどくなってしまって、結果として迷惑をかけてしまうことになり「なんでもっと早く言わなかったの！」と叱られてしまう。そうすると「ネガティブなことは出してはいけない」というメッセージを無意識に受けてしまうことになるのです。「ストレス反応や心身症」などがさまざまな問題行動を起こす要因となることも、臨床的知見を中心に示されています。問題行動の中には無気力も含まれています。子どもが不安な気持ちになっているときに、駆け込める安全基地としての保護者の存在はとても大切です。子どものネガティブな感情や不安を否定せず受け止めてあげることで、子どもが自己否定する感情を持たないで次の活動へと進むことができるようになります。保護者はそのための重要な機能だということができます。

良い子・頑張る子、でなくても、失敗しても、お母さん（お父さん）は、私のことを嫌いにならない。 こうした「安心感」が「子どものやる気を育てる」上では大変重要な基礎となります。養育者が子どものネガティブな感情にも共感的に反応すると、子どもは自分の感情をコントロールできるようになったり、自分以外の子どの気持ちをわかるようになります。

<h2>自分の頭で考えて自己決定のできる子どもは「無気力」にはなりません</h2>私は小学校6年生の卒業時、中学入学時などに子どもたちや保護者の方に話す機会が毎年あります。 そのときに子どもたちと保護者の方へ必ずお願いすることが3つあります。

1）自分の頭で考える。 ・子どもたちへ：自分の頭で考える人になってください。 ・保護者の方へ：自分の頭で考えられる子にしてください。2）「困る、悩む、落ち込む」という経験。 ・子どもたちへ：「困る、悩む、落ち込む」という経験を怖がらずにちゃんとやってください。 ・保護者の方へ：「困る、悩む、落ち込む」という経験をやらせてください。3）弱音を話せる誰かや場所を見つける。 ・子どもたちへ：自分のダメなところや弱音を話せる誰かや場所を見つけてください。 ・保護者の方へ：ダメなところや弱音を否定せずに聞いてあげてください。

これらをへ伝えると同時に保護者の皆さんには、

自分の頭で考えられる、自分の心で感じられる、困るという体験をしっかりとできるような子に育ててください。 そのためには、安心してダメな自分を出せる場所としての家庭、泣き言の言える相手としての親でいてください。 そして大丈夫です、皆さんが困ったときにはお手伝いしますので安心して困ってください。

と伝えます。無気力といわれる子どもたちにはこの「安心して困ったり安心して失敗したりすることができない」という共通点があります。この「安心感」を育てる事が無気力な子どもを産まないために大変重要だということが様々な研究からもわかってきました。良かれと思って、細かい口出しや手伝いをしてしまうことが、子どもの「自分で何かをしてもお母さん（お父さん）の願っていることは叶えられない」と自らのやる気を奪ってしまっているかもしれません。過干渉は子どもの生きる逞しいエネルギーを奪ってしまう可能性のあることを今一度考えてみてください。

<h2>マリコ先生からのメッセージ</h2>

失敗したら「ここに来て泣いていいんだよ」 間違ったら「やり直せばいいんだよ」 「間違えない生き方をしなさい」というメッセージよりこのほうが安心できませんか？もしあなたが過干渉すぎて子どものエネルギーを奪ってしまったと思ったら… 子どもの無気力の陰にある、声なき声に耳をこらして聴いてください。 きっと忍耐のいることだと思いますが、取り組んでみてほしいです。

そして、ここまで読んで、「ははは～ならうちは心配ないわ～雑だからなあ～」とお互いに笑ったり、お子さんからあきれ顔で、ため息をつかれるような会話ができたら、ひとまず無気力な子どもにはならない可能性が高いと思って大丈夫ですよ。

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