ほっとSoda情報局

アメリカ・シアトルで4人のお子さんを育てるグローバルレポーターのポーンさん。 昨年11月の「子どもの健康について」では<a href="https://www.seiban-sodasoda.com/contents/global-report/detail/us-pawn-241120/">「風邪をひいても、医者には行かない？アメリカの医療制度と健康保険の実態と対策」</a> というタイトルで、アメリカの医療制度について詳しくレポートしてくださいました。高額な医療費にびっくり！でしたが…。 実は、今年になって一番下の9歳のお嬢さんがシアトルの子ども病院に入院されました。編集部もとても心配していましたが、無事退院されたと報告を受けて安堵しました。と同時に、日本の病院との違いにびっくり！そこで、レポートをお願いしました。

<h2>それは普通の咳から始まりました</h2>はじめに…我が子の病気を記事にすることには迷ったのですが、元気になったこと、この入院を通して思ったこと、医療従事者の方々への感謝、驚いたこと、いろいろと感じたことがあったので書かせていただきたいと思います。ことの始まりは、普通の咳でした。 この季節、少し寒ければ鼻水も出ますし、咳だって出る…そんないつもの咳だと思って始まった風邪でしたが、咳を始めて2日目、咳がカラカラで短めな咳になっていることに気付き、肺炎を心配し、病院で診てもらうことにしました。 上の子たちが肺炎をしたこともあり、肺炎は抗生物質が必要なことを知っていたので私の中では早めの受診となりました。病院でレントゲンを撮ると、やはり肺炎。 ついでに、コロナやインフルエンザの検査も行うと、インフルエンザ陽性でした。お医者さんによると順番的には肺炎にかかっていたところにインフルエンザに罹患したのだろうとのこと。咳をし始めたのが前日なのに、実はだいぶ前から肺炎だったことを知ることとなりました。お薬や呼吸器をいただき、家に帰ったのですが、そこから娘の呼吸状態が悪化してきました。コロナ時に買ってあった血中酸素濃度測定器をつけて測ると、97だった酸素濃度（一般的に96～99％が正常値とされる）が時間と共にどんどん落ちていきました。 からだ全体で息をし始めた娘の酸素濃度は89まで落ち、急いでシアトルにある子ども病院の救急外来に行くことを決めました。「待ち時間は長いかな、苦しそうだけど酸素吸入したら楽になるかな」いろいろな不安と思いを胸にチェックイン。 酸素濃度が低いこともあり、すぐに処置室へ。鼻から酸素を入れながら、たくさんの検査をしました。酸素を入れても、酸素濃度はそれほど上がらなかったので入院が決定しました。

<h2>子ども病院の救急へ即入院。ICUで肺気胸が発覚。</h2>次の日、悪化していく娘の様子から一般病棟からICU（集中治療室）への移動が決まりました。そこでのレントゲンの検査で、娘は肺炎とインフルエンザのほかに、肺に穴が空いて、肺気胸にもなっていることがわかりました。 「肺気胸」については、日本語でも聞いたことがあるくらいで、どんな病気か知らなかったので調べてみると、英語での俗名はCollapsed lung（つぶれてしまう肺）というそうで、肺と膜の間にたまった気体や液体を放っておくと肺がつぶれてしまうからだそうです。 治療のために胸にチューブを入れる手術をすること、確率は低いけれど呼吸器を口から肺に入れることになる可能性もあるという説明を受け、外で待つように言われました。 長く感じる待ち時間を別室で過ごしながら、1時間以上経過してお医者さんがやってきました。「胸腔ドレナージというチューブを二本入れたが、酸素吸入が必要な状態になったので、呼吸器を入れました」。使用する確率は低いと言われていた呼吸器がつけられているという事実と、小さな身体に点滴、呼吸器、栄養を送る鼻チューブ、胸のチューブとたくさんの管が繋がれている痛々しい姿にショックを受けつつ、元気になるためのプロセスだと自分に言い聞かせて納得するしかありませんでした。 看護師さんに「サクション」といって、からんだ痰を手動で取ってもらう娘の姿は可哀想で、代わってあげられない無力さにやるせない気持ちになりながらベッドの横で寄り添う以外何もできませんでした。

<h2>二度の手術で無事回復</h2>翌日、肺の穴が大きくなっていることがわかり、チューブの太さをひと回り大きくするための緊急手術をすることになりました。 二度目の手術にことの重大さを認識し「見ているのは辛いけど、元気にしてもらえるために必要なことだと思うから、本当に治してあげてください。お願いします」と、いま会ったばかりのお医者さんと看護士さんを信頼し、全力でお願いする以外私には何もできませんでした。 30分ほどで病室に帰ってきました。手術がうまくいったとの報告に感謝と安堵の気持ちでいっぱいになりました。この二度目の手術で、娘は大きく回復し、横で見ていてもどんどん元気になっていくのがわかりました。呼吸器を外し、ひとりで呼吸ができるようになったので、夕方6時過ぎにはICUを出る許可をいただきました。移動する一般病室を探してもらいます。 娘が入院した「シアトルチルドレンズホスピタル」は名前の通り、シアトル子ども病院、つまり子ども専門の病院です。7階まである病棟がいくつもある、とても大きな病院ですが、どこも満室とのこと。それほど入院している子どもが多いことに驚きましたが、その夜見つかった病室は新生児のフロアでした。 &nbsp;<h2>シアトルの子ども病院はすべてトイレ付きの個室。子どもが遊べるiPadも装備！</h2>そして、娘は退院までこの病室でメキメキと回復していくのですが、この病院で大きく驚いたことをいくつか紹介しておきたいと思います。私の知っている限りは、どの病室も個室のみで、日本のような大部屋はありません。 部屋にはトイレがあり、部屋によってはシャワーも備わっています。ICUにいたときは、そこで私もシャワーを使わせてもらいました。部屋に置いてあるソファを倒してベッドにすることもできるので、娘の入院中は私もずっと一緒に寝泊まりをしていました。 ICUでは、部屋の電気を好きな色にできるしくみになっていました。あまり動くことができない娘は、看護師さんと相談して青、水色、ピンクなど、部屋を好きな色に変更して、うれしそうでした。また、どの病室にもiPadが置いてあり、子どもたちが遊べるようになっています。 毎日のようにカウンセラーの人がお見舞いにきてくれて、お話をしてくれたり、好きだというぬいぐるみやおもちゃをプレゼントしてくれたりしました。 そして、工作が好きだと言った娘には織物レッスンを開いてくれたり、チューブを取る施術を頑張ったご褒美にレゴをプレゼントしてくれたりしました。 おもちゃ代が入院費に含まれるかって？もちろんそんなことはありません。（笑） ちなみに、シアトルチルドレンズホスピタルでは、いつでも寄付を募っています。HPではお金の寄付ができるようになっていますが、AmazonにはWishリストも掲載されています。

そして、今回の娘の入院費ですが…保険適用前の医療費は約170,000ドル！日本円にすると、なんと約2,500万円…衝撃です。 そして、保険適用後、つまり実際に支払った金額は約13万円。 <a href="https://www.seiban-sodasoda.com/contents/global-report/detail/us-pawn-241120/">以前の記事</a>でも書いたとおり、アメリカの高額保険制度に不満があった私ですが、今回のようなことがあったときのカバー力は大きく、ありがたいということにも気づけました。ある意味、これが本来の保険の意義ですよね。

<h2>お医者さんのチームと看護士さんの毎朝の治療方針ミーティングに親も参加</h2>カウンセラーの人も看護師さんも、とても辛い、大変な入院を少しでも楽しい時間にしようという心遣いは温かく、娘のことを励ましてくれました。 娘と話した後は必ず、私に必要なものはないか、困りごとや不安はないか聞いてくれて、寄り添う気持ちを私にもいつも見せてくれました。消毒で荒れた私の手を見たときはローションをくれました。実は、娘の入院と同時に主人がインフルエンザに罹患していました。そのため、入院生活には私ひとりが付き添っており、みんなの温かさは本当に心強く、その気遣いは大きな励みにもなりました。 それから、毎朝、お医者さんのチームと看護師さんが部屋に来てくれるのですが、そこで「ハドル」という、治療の予定のミーティングを一緒にしました。 いまの症状の共有、それに対してどんな治療をするのか話し合いをするのですが、これには親の私も参加します。その場で、どうしてこのような治療をするのか、いまどんな状態なのか、親として心配なことはないか、チームと一緒に話し合いをすることで、その場で方向性が変わることもありますが、どんな経緯でこの治療をするのかということがしっかりと見えてきます。 話し合いに透明性があり、一緒に参加できることは私にとってありがたいと感じました。たとえば、親の私が参加することで、インフルエンザの薬・タミフルが苦くて飲むのに苦労した娘のために、それを飲み終えるまで鼻注のチューブを取らないでほしい、と半日だけ延ばしてもらうリクエストなどができました。また、肺炎の治療では「咳をどんどんしてほしいということですが、肺気胸があるのに咳をしすぎてまた肺を痛めないのか」と質問をすると、その場でお医者さんが複数の視点で考え、みんなで話し合い、意見交換をしていました。話し合いを目の当たりにすることで、状況を深く理解することができたのはとてもありがたかったです。 &nbsp;<h2>入院食はルームサービスでオーダー！</h2>どの病室にも、何語で話してほしいかのカードが貼られていました。 やはりたくさんの移民がいるアメリカだからこそ、言葉の問題を解決するため、通訳の手配が簡単にできるのだということにも感心しました。

それから、入院中の食事ですが、これも日本と大きく異なりました。「ルームサービス」と書かれたメニューの冊子が置いてあり、各自、好きな時間に好きな食べ物を食べられるようになっていました。（有料、チップは不要） 鼻からの栄養チューブが取れた後、「消化の悪いものは食べない方がいいけど、好きなものをどんどん食べたり、飲んだりしなさいね。」と言われ、アイスクリームやシャーベット、フルーツ、スナックも勧められました。 &nbsp;

病院食というと、栄養バランスを考えた食事が提供されると思っていたのに、そうでない様子に不思議な気持ちになりました。 ルームサービスでオーダーして届けてくれる食事は決しておいしいものではありませんでしたが、その種類の豊富さには感心しました。付き添いの私もオーダーすれば一緒に食べていいとのことでしたが、ありがたいことに、お友だちが届けてくれたおいしいお料理があったので、病院の食事は食べなくて済みました。

私は日本では出産以外入院の経験がないので、正確には日本との比較にはならないのですが、それでもアメリカらしいな、小児科専用の病院がありがたいなと感じることがたくさんありました。 もう二度としなくていい経験ですが、最後に、体調不良の子どもたちやその家族をサポートするシステムがしっかりとある病院に入院できたこと、そして治療で娘の元気がまた戻ったことに感謝しています。世の医療従事者のみなさん、どうもありがとうございます。

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