ほっとSoda情報局

<h4>ポーン</h4>生まれも育ちも仙台。牛タン＆笹かま大好き。アメリカで大学生活を過ごし、通訳の仕事をしながら旦那と出会い、結婚。専業主婦歴20余年。下は5歳児から上は大学生まで、4児の母。スターバックス発祥の地シアトル在住子育て中。（おかげでコーヒー飲めるようになりました！）チェスは初心者。クイーンになりたいポーン、ただいま精進中。

<h2>小学校に年長さんのクラスが併設されるアメリカの小学校</h2>

日本の小学校とアメリカの小学校にはいくつかの大きな違いがあります。 そのひとつが「キンダーガーテン」という制度です。これは、小学校に入学する前の学年のクラスのことで、小学校と同じ校舎内にあり、歌や踊り、工作を交えながら英語や算数を教わることができるので、入学を機に突然環境が変わることがなく、スムーズに小学校に移行できます。また、学校と保護者が相談して、子どもの個々の成長に合わせて、キンダーガーテンクラスや小学校に入る時期を調節し、入学時期をずらすこともできます。このように、制度にこだわらず、個々の特性を重視する柔軟性があることがアメリカの学校の大きな特徴であり、利点でもあります。一方で日本では、幼稚園・保育園と小学校が明確に分かれており、ここ数年、小学校に入学した1年生が、幼稚園とは違う集団生活や新しい環境に馴染めず、問題行動を起こしたり、授業中に集中できなかったりする「小1プロブレム」が問題になっています。小学校との接続をスムーズにするためにも、アメリカのこのような制度は、問題を解決するヒントになるかもしれません。&nbsp;<h2>&nbsp;</h2><h2>マイノリティへのサポートで平等の意味を考える</h2>GLOBAL REPORTにて記事を執筆いただいている、アメリカ在住のポーンさんのお子さんが通う学区には、英語が第一言語でない外国人家族が取り残されることがないように、サポートし合うプログラムがあります。ポーンさんも参加している「Natural Leaders（ナチュラルリーダーズ）」という団体のメンバーは、学校のスタッフや保護者。先日この団体が主催して「STEM Night」を開催したそうです。 「STEM Night」とは文字通り「STEM」 Science（科学）、Technology（技術）、Engineering（工学）、Mathematics（数学）のワークショップを指します。&nbsp;

ポーン：州全体の参加学校を対象にした、STEM Night運営のためのオンラインセミナーに行って驚いたのが、説明がすべて英語とスペイン語で同時に行われていたことです。&nbsp; 私たちの学校には英語を話さない家庭はとても少ないのですが、学校や学区によっては、スペイン語しか話せないヒスパニック系の家族が多く、英語でのコミュニケーションが難しい人々もいることに改めて気付かされました。 また、余談ですが、最近はウクライナからの家族での移住も急激に増えているようで、ロシア語しか話せないという人も多いそうです。長期化しつつある戦争の余波がこんなところまで来ているのか、という思いです。&nbsp;STEM Nightでは、パラシュートやパワーボートを作るためにはどんな条件が必要なのか話したり、何をどんなふうに使うといいのかを子どもたちに考えてもらったりした後、実際に作り、うまくいくかどうか実験をしました。子どもたちはとても楽しそうだったのですが、このイベントの招待対象者は英語を母国語としない家庭だけでした。&nbsp; STEM Nightという、みんなが興味を持っていて、州からの豊かなお金のサポートで夜ごはんまで食べられるこのイベント。英語を母国語とする家庭は誘わないということで、公平性の強化を図っているのでしょう。しかし、私としては、マイノリティをサポートしたい気持ちや取り組みは素晴らしくても、一部分への過度なサポートはかえって分断を起こしかねない、という危機感を感じたできごとでした。&nbsp;

<h2>何かと話題のトランプ政権。学校教育への影響ってあるの？&nbsp;</h2>現在、トランプ関税など、日本でも大きな影響があるトランプ政権。毎日ニュースでその名を聞かない日はありません。そんな中、トランプ大統領は教育省の解体を開始するよう命じる大統領令にも署名をしました。 現地で子育て中の家庭はどう受け止めているのか、こちらもポーンさんに聞いてみました。&nbsp; &nbsp;ポーン： 教育省は1979年、当時のカーター大統領が署名した法律によって作られたもので、それ以前は教育プログラムを他の複数の機関が担当していたそうです。教育省が担う仕事には、小中高校向け連邦助成金の管理や、学生ローン及び財政支援プログラムの運営がありますが、トランプ大統領はこれらの責任を州に委ねるとしています。実際、学校の資金の多くは現在も州や地方の税金によってまかなわれているので、教育省解体後も他の省庁に移行されるのではとみられています。移行するとなれば、解決しなければならない課題も多々あります。教育省が廃止した場合の学生ローンのプログラムの行方や低所得世帯の子どもへの教育支援、障害のある子どもたちへのサポートするプログラムなど具体的な案は何もまだ決まっていません。ただ、教育省の廃止には議会の同意が必要なので、現実的ではないとも言われています。過去にも、共和党のレーガン大統領が廃止を呼びかけたことがあるようですが、実現には至りませんでした。果たして、今回はどうなるのでしょう。 &nbsp;

また、トランプ政権下では、バイデン政権で強化されたトランスジェンダー生徒の保護などを含む多様性政策の撤廃、縮小も挙げられています。すでに私の住む学区では、多様性政策を目的としていたDEI（Diversity（ダイバーシティ、多様性）、Equity（エクイティ＝公平性）、Inclusion（インクルージョン＝包括性）の頭文字を組み合わせた言葉）の取り組みの撤退などが始まっています。これまで優遇されていたマイノリティへの不満は確かにあったものの、現場である学校では、性的マイノリティの保護や公平性を訴える人たちの怒りと落胆の声があがっています。 &nbsp;政権発足後、企業も性的少数者、女性、人種マイノリティへの配慮からの撤退や見直しが行われています。&nbsp;<h2>&nbsp;</h2><h2>アメリカの学校に通知表はあるの？</h2>日本ではここ数年、通知表をなくす動きがちらほら。岐阜県美濃市の全5小学校が、この春入学した1年生の通知表を廃止するというニュースも話題です。では、アメリカの小学校には通知表はあるのでしょうか。 &nbsp;

ポーン： 昨今、日本の通知表の在り方が注目されているようですが、アメリカではリポートカード（通知表）を廃止しよう、といった声は全く聞いたことがありません。 2期制の学校では年に2回ほど、学校からもらってくるリポートカードですが、そこには学校での子どもの学習の成果や進捗状況などがとても細かく評価されています。リポートカード以外にも、年に2回ある保護者面談では子どもがどんなことを学習し、課題はどのようなことかを知らせてもらえています。&nbsp; たとえば、1年生なら、アルファベットの大文字と小文字でどの字が書けないのか、読めないのか、暗記しなければいけないサイトワーズ（一目見てすぐ認識、読めるようになることが推奨されている単語）でまだ書けない文字はどれかなどを、細かく教えてもらえます。また、リポートカードには、先生から見た生活面での評価も書かれています。自立して学習に臨めているか、クラスメートとうまくやっていけているか、お手伝いを積極的にしているかなども簡単に3段階評価でつけられています。特徴としては、日本と比べて評価項目の観点がとても細かいので、子どもが何を苦手としているかわかりやすい評価になっている点だと思います。先生からの所見には、子どものいいところや、これからどこを頑張ることを期待されているのかなどが書かれており、子どもの状況がわかりやすいリポートになっています。&nbsp; 私たちが子どものころに比べて、日本の通知表の所見も前向きな書き方が主流となり、子どもたちが通知表をもらって劣等感をもつようなことがないように気をつけて作られるようになってきていると思います。

それでも、通知表の存在自体が子どもに悪影響を与えたり、成績云々で子ども同士が序列をつけたりする懸念性から通知表を廃止する動きになっているようですが、アメリカではそもそもリポートカードを見せ合っているような場面を見たことがありません。リポートカードは封筒に入れられ、自宅に郵送されるか、糊付けされた封筒が保護者あてに担任の先生から渡されるかどちらかです。いままでもらったリポートカードで嫌な思いをしたということもないのですが、アメリカのリポートカードは親へ子どもの状態をリポートするというその目的をしっかりと果たしていると思います。子どもたちがこれから先に何を目指して学習を進めていくのかの大きな指針となっているので、廃止なんて考えないということなのかもしれません。 ただ、アメリカの教育機関が大きく変化する可能性があるように、日本でも、通知表のあり方を含め、教育の既存の良い制度は残し、小1プロブレムなどの新たな課題に対しては向き合い、見直し、変化を恐れず、学校がよりよい環境になっていくことが教育の場でも望まれているのだと思います。&nbsp;

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