教育のアレコレ

中曽根 陽子（なかそね・ようこ） 教育ジャーナリスト マザークエスト代表。出版社勤務後、女性のネットワークを活かして取材・編集を行う、編集企画会社を発足、代表に。「お母さんと子どもたちの笑顔のために」をコンセプトに、数多くの書籍をプロデュースした。その後、教育ジャーナリストとして、紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆する傍ら、海外の教育視察も行う。ポジティブ心理学コンサルタントも取得し、最近は子育て教育探究ナビゲーターとして、親に寄り添った発信をしている。最新刊『成功する子は「やりたいこと」を見つけている　子どもの探究力の育て方』（青春出版社）他著書多数。

教育ジャーナリスト 中曽根 陽子<h2>授業はオンライン・国内留学しながらプロジェクト学習のダブルスクール</h2>前回、大学入試が変わってきているというお話をしましたが、大学そのものもさまざまな変化が起きています。 今回紹介するのは、地域を旅する大学、「さとのば大学」です。 特定のキャンパスを持たず、授業はすべてオンライン。 学生は、日本全国の提携地域に留学して、プロジェクトを体験しながら実践力を身につけます。現在の提携地域は全国10ヶ所。 例えば、震災復興のまちづくりで有名な宮城県の女川町（おながわちょう）、人口減少を食い止めるために島をまるごとブランド化し、移住者が増えている島根県隠岐郡海士町（あまちょう）など、どこも街づくりのパイオニア的な地域です。

学生はそれらの中から、自分が興味のある地域を選び、1年間ずつ現地に滞在して、その地域で行われているプロジェクトに参加しながら、実践を通して学びます。 大学の授業は、文科省認定の4年制の通信制教育課程「ネットの大学 managara」と提携し、4年間の課程を終えると、大学卒業資格が得られます。

<h2>ハーバードより入るのが難しいミネルバ大学とは？</h2>ハーバードより入るのが難しいと言われている「ミネルバ大学」も、キャンパスを持たず、4年間で7カ国に行き、プロジェクトを通して学びます。 授業はすべてオンラインで、知識ではなく、思考法を学び、テストもありません。 少人数でのディスカッションが中心の授業は、教授は10分しか話しては行けないというルールがあります。 さらに、授業とフィールドワークのサイクルで、学んだことを実社会でどう活かすかが学べます。国内留学でプロジェクトを通して学び、授業はオンライン受講の「さとのば大学」は、日本版ミネルバ大学と言われ、注目されています。

<h2>既存の大学は、サラリーマン予備校？</h2>一方、一般の大学の学びはどうでしょう？ 大学によって、プロジェクト型学習の機会を増やそうという動きはありますが、まだまだ座学中心の授業がほとんどです。 しかもこの2年間は、コロナの影響で、一方的に授業動画を流すだけ、という大学も少なくありませんでした。 そのため、何のために大学に行くのか分からなくなり、退学するケースも増えています。 しかも、就職活動の早期化という動きもあって、学生は、早いうちから就活の渦に巻き込まれ、自分が本当は何をしたいかを考える時間も少なくなっているかもしれません。 そういう意味では、今の大学は、新卒一括採用を目標に大卒という切符を手に入れるための場所になってしまっていると言えるかもしれません。大学に行く意味が問い直されている中、 「環境問題や経済の行き詰まりなど、さまざまな問題が起きている中で、従来型のサラリーマンになるためだけの学びの場しかないことに違和感を持った」 と、さとのば大学発起人の信岡良亮さん。 「せっかく４年間大学に行くのなら、実社会で役に立つ力を身につけて、社会を変えていく側に立てる人になってほしい。そういう学びの場をつくりたい」 という思いに賛同した人たちの協力によって、さとのば大学が生まれたのです。

<h2>少しずつ地域に馴染み、プロジェクトを企画実行しながら成長できる</h2>さとのば大学では、経済・経営のアカデミックな知識はネットの大学 managaraのオンライン講義で効率的に学習。それ以外の時間では、自分が発見した課題をテーマに、地域の人たち、そして仲間と一緒にプロジェクトを進めていきます。

例えば、「スポーツ×教育」をテーマに子ども向けのスポーツ教室を主催する、 「森林資源の6次産業化」をテーマに木製アクセサリーを制作販売するなど、学生一人ひとりの好きなこと・得意なことと、社会の需要が重なるところにプロジェクトが生まれます。もちろん、学生だけで地域に飛び込んで、いきなり0からプロジェクトを立ち上げることなどできません。 そこで、地域には、プロジェクトを考える際のメンターになってくれたり、地域の人と繋いでくれたりする地域コーディネータがいて、学生に寄り添ってくれます。

こうした環境のもと、学生は、知り合いになった魚屋のおじさんに早朝に市場に連れて行ってもらったり、畑作業を手伝ったお礼に毎日野菜のお裾分けをもらったり、一緒にバーベキューをしたりと徐々に地域に馴染んで行きます。 そして、最初は、ピクニックを企画する、地域の人にインタビューをするなど、軽いプロジェクトからスタートして、企画・実施・検証のサイクルの中でプロジェクトのレベルを少しずつ上げていきます。 机の上だけの学びにとどまらず、プロジェクトを実践し、トライアンドエラーを繰り返すことで、実社会で使えるノウハウとして身体に染み込ませながら、自分で課題を解決し、成果を生み出す力を身につけていくのです。

<h2>大学で学ぶ価値を捉え直してみよう</h2>では、どういう人が入学を検討しているのでしょうか。 「大きく分けて次の3つのパターンに分けられる」と信岡さん。■パターン1 いずれ自分で事業もやりたいから、自分でどんどんプロジェクトを立ち上げて、いろんな経験を得たいという人。■パターン2 高校も通信制高校を選ぶなど、現行の社会システムの窮屈さを感じている人。■パターン3 現在の教育システムにもなじんでいるけど、探究学習的な学びのほうが好き、得意という人。2021年度は4名が入学。 それ以前からのプロジェクトに参加している人と一緒に、全国で活動をしています。 今、高校ではN校S校などの通信制高校に通う生徒が2万人を超え、通信制高校は選択肢の一つになってきました。 一方そういう場所に通う高校生の意欲に応えられる大学は、多くありません。 海外留学を考える人も増えていますが、海外大学に行けば、必ず多様性のある環境の中で探究的な学びができるとは限りませんし、費用の面での負担も大きい。 そう考えると、さとのば大学は、国立大学と私立大学でかかる学費の間くらいの負担で済み、しかも日本のさまざまな地域に留学しながら、都会とは全く違う多様性に溢れた環境のなかで、さまざまなことを体験できるだけでなく、全国にさまざまな人脈もつくれるというメリットがあります。 新卒で、できるだけいい会社に入るために、「名前のある大学を出ていないと」と考える親世代はまだまだ多いと思います。でも、これだけの経験をした人を企業も見逃すわけがありません。 これからの時代を生きる力を育んでいける価値ある場所ではないでしょうか。

私も、さとのば大学さんでトークセッションをさせていただきました。&nbsp;&nbsp;&nbsp; <a href="https://www.satomana-satonova.com/post/nakasoneyoko_satonoba" target="“_brank”">https://www.satomana-satonova.com/post/nakasoneyoko_satonoba</a>&nbsp;&nbsp;&nbsp; ▼資料請求はこちら&nbsp; <a href="https://www.satomana-satonova.com/documentorequest" target="“_brank”">https://www.satomana-satonova.com/documentorequest</a>&nbsp; 写真提供：さとのば大学

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