教育のアレコレ

中曽根 陽子（なかそね・ようこ） 教育ジャーナリスト マザークエスト代表。出版社勤務後、女性のネットワークを活かして取材・編集を行う、編集企画会社を発足、代表に。「お母さんと子どもたちの笑顔のために」をコンセプトに、数多くの書籍をプロデュースした。その後、教育ジャーナリストとして、紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆する傍ら、海外の教育視察も行う。ポジティブ心理学コンサルタントも取得し、最近は子育て教育探究ナビゲーターとして、親に寄り添った発信をしている。最新刊『成功する子は「やりたいこと」を見つけている　子どもの探究力の育て方』（青春出版社）他著書多数。

教育ジャーナリスト 中曽根 陽子<h2>すでに半分以上が「推薦・総合型選抜」になっている、という事実</h2>日本の学校教育は、明治以来の大改革進行中ということはこのコーナーの初回に書いた<a href="https://www.seiban-sodasoda.com/episodes/detail/57/" target="“_brank”">こちらの記事</a>で紹介しました。今回は、その続編として、大学入試の変化ついてより具体的に解説します。 Soda!Soda!をご覧の皆さんは、まだお子さんが幼児や小学生という方がほとんどだと思います。 「大学入試なんて遠い話」と思われるかもしれませんが、これからの子育ての方針を考えていく上でも、ぜひ知っておいて欲しい情報なのです。 ではまず、大学入試はどのように変化しているのでしょうか。 大学入試は1月から始まり、2月～3月にかけて結果が発表されるというのがこれまでの大学入試シーズンでした。 ところが！実はすでに受験生の半分以上が年内に「推薦・総合型選抜」によって合格をとり、進路を決定しているのです。「推薦・総合型選抜」と言うのは、これまでAO入試、指定校推薦と呼ばれていたものです。 筆記試験中心の一般選抜（一般入試）が1～3月にあるのに対して、9～12月に実施・合否が出ることが多く、通称年内入試と呼ばれています。 そしてこれまではこれらの年内入試を利用するのは、どちらかといえば少数派でした。&nbsp; ところが、2021年度の大学入試選抜方法を見ると、入学者約61万5千人のうち、総合型選抜は約7万7千人（12.7%）、推薦型選抜は約23万1千人（37.6%）となり、合計で初めて半数を超えたのです。&nbsp;

私立大学については、すでに2人に1人が「推薦・総合型選抜」で大学に進学していましたが、2021年度はそれが全体の58.2％と急激に増えています。 また「推薦・総合型選抜」の入学者数を定員の3割を目指すと言う国立大学協会の方針の下、国公立大学でも、一般選抜の募集人員を総合型選抜等に移す動きが進んでいます。そんな中、東北大学は「学力重視のAO入試」を進め、2021年度入試ですでに3割を達成。 京都大学も、2016年度入試から、学部に応じて学生の意欲を買うと言うキャッチフレーズと共に「特色入試」を導入。2018度入試からは全学部全学科に拡大していたり、筑波大学が、全入学定員の約25％を「総合選抜」で募集したりと、一般入試以外の入口は広がっています。 この傾向は今後も続いていくことでしょう。

<a href="http://between.shinken-ad.co.jp/hu/2022/07/nyushikekka3.html" target="“_brank”">ベネッセ入試結果調査③私大は学校推薦型、総合型とも合格者が1割増記事より引用</a><h2>&nbsp;</h2><h2>背景にあるのは少子化と急激で予測不能な時代の変化</h2>

この背景にあるのは、ひとつは少子化です。 各大学が早めに入学者を確保しようとしているのです。しかし、理由はこれだけではありません。すでに小・中・高等学校では、新しい学習指導要領が施行されていますが、そこで謳われている学力は、 ①知識・技能 ②思考力・判断力・表現力 ③主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度を育成すること。 そして、学んだことを自分の人生や社会で生かそうという姿勢も含めて学力と定義しているのです。 経済が発展し便利になることをみんなが求めていた時代には、必ずある正解にどれだけ早く到達できるかという能力を測る一般入試が適していたのですが、今は、そんな時代ではありません。 ものすごいスピードで変化し、複雑化している社会。 地球温暖化に伴う気候変動や自然災害、世界情勢の変化など、予測も解決も困難な事象が次々と起こっているVUCAな時代です。激しい変化に対応していくためには、自ら問いを立てて情報を集め、考え、行動するという探究サイクルを回していく必要があります。 そのときに必要なのが、新しい学習指導要領で言われている思考力・判断力・表現力 、そして主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度です。<h2> 学力・意欲・自主性・・どこで何を学びたいか、を重要視する入試へ</h2>

では、具体的に入試はどのように変わっていくのでしょうか。旧AO方式では書類審査や面接のみという大学も多かったのですが、入学者の基礎学力が不足しているといった課題もあり、今後は小論文やプレゼンテーション、資格・検定試験の成績、大学入学共通テスト（以下、共通テスト）を課すなど、学力も意欲も多面的に測るものになっていきそうです。 だいぶ前になりますが、私の子どもも第一志望の大学に総合型選抜で入学しました。 そのときには、学力テストはなく、学校の成績と英語検定のスコアを提出。さらに、エントリーシート（出願書類）と小論文が課され、二次試験ではグループワークと3分間プレゼンが課されました。 エントリーシートには、自分がなぜこの大学に行きたいのか、そこで何を学び、どんなことをしていきたいのか、さらに大学にどのような貢献ができるかを、これまでの活動歴と共にまとめる必要がありました。 当時、上の子が就活中でしたので、まさに就活のエントリーシートと同じでした。 そのときに感じたのが、目的意識と自分のやりたい！と言う気持ちが大事だという事です。 総合型選抜は、勉強しなくても大学に行ける抜け道なのではなく、一般入試以上に意欲や自主性が求められる入試なのです。

<h2>近い将来やってくる偏差値が意味を失う時代。親もアップデートが必要。</h2>そうなると、一般入試の難易度を示す偏差値は意味を失うことになるかもしれません。 ○○大学卒という学位を取りに行くためだけに大学に行くことが無意味とは言いませんが、そこで何を学びたいのか、どんな経験をしたくて行くのかを学生自身もきちんと考える必要があります。 また、大学も、その意欲に値する魅力を提供できなければ、学生を獲得できず、皆さんのお子さんが大学に進学する頃には、東大を頂点とする大学のヒエラルキーも様変わりしているかもしれません。子どもにはいい教育を与えたいという気持ちを持っていらっしゃる方は多いと思います。 そのゴールに、いい大学に行かせたいと思っていらっしゃるかもしれません。 でも、いい大学を選ぶ軸が偏差値しかないという時代ではなくなりました。大学入試なんて、今はまだピンとこない話だったかもしれませんが、変化のスピードが速いので、お子さんの未来を見据えて、親自身がアップデートしながら、今必要なことを考えてみてほしいなと思います。

<a href="http://between.shinken-ad.co.jp/hu/2022/07/nyushikekka3.html">参照：ベネッセ入試結果調査③私大は学校推薦型、総合型とも合格者が1割増</a> <a href="http://between.shinken-ad.co.jp/hu/2022/07/nyushikekka3.html">令和３年度国公私立大学入学者選抜実施状況</a> &nbsp;

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