教育のアレコレ

安田真理子 臨床心理士・公認心理師・ストレスチェック実施者資格 日本心理臨床学会・日本交流分析学会所属 カウンセリングルーム　オフィスウェル代表 湘南で35年以上、医療、教育（スクールカウンセラー）、企業（健康管理室）において心理カウンセラーとして子どもから大人まで多くのクライアントのカウンセリングに従事。 特に教育関係の行政との接点も多く、幼稚園や小学校の現場事情にも理解が深い。 「カウンセリングは心の整理整頓のお手伝い」と、相談者の「困ったな…」「どうしたらいいのだろう？」に寄り添うカウンセリングはクライアントからの信頼も厚い。▼Office Well（オフィス ウェル） <a href="https://www.officewellmy.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">https://www.officewellmy.com/</a>

<h2>夏休み中に気になる、小学生の保護者が心配な5つのこと</h2>お子さんにとっては待ちに待った楽しい夏休み。 でも、保護者の方々にとっては心配なこともありますよね。 臨床心理士のヤスダマリコ先生によると、小学生の保護者が夏休みにあたって心配なことは、主に次の5つとのこと。

1）運動不足による体調への影響と健康トラブル 2）親子の起床と就寝時間　 3）事故や事件から守るためには？ 4）勉強は？新学期に困らない？ 5）SNSの利用について

本記事では、この5つについて夏休みの間にできる対策と、ヤスダマリコ先生からのアドバイスをご紹介します。

<h2>1）運動不足による体調への影響と健康トラブル</h2>実は、学校に行っているというだけでかなりの運動量があります。 毎日の登校や学校での自然な遊び、体育の授業などを通して、子ども達は自然に運動をしています。 ある大学が、小学生の体育がある日とない日の歩数を比べたところ、次の表のような結果が出ました。

これを見ると、普通に小学校に行っているだけでかなりの運動量をこなしていることがわかります。 一方で夏休みになると外遊びが難しい現状などから、エアコンの効いた部屋でゲーム三昧になり、一気に運動不足になることへの不安や心配が多いようです。&nbsp;<h3>コロナ禍で持続力や柔軟性の低下が問題に</h3>

また、メディアでも取り上げられているように、コロナ以前と比べた子どもたち、特に低学年の基本的な持久力や柔軟性の低下は大きな問題となっています。学校生活は、子どもたちに運動することの楽しさや喜びを教えると同時に、この時期に必要な身体の基礎づくりも自然に行っていてくれていたということを実感された方も多いと思います。 だからといって、焦って「運動不足になるから！」と嫌がる子どもを短期のスポーツクラブに入れたり、イベントに参加させたり・・・それは絶対にやめてください。 そういうことではありません。&nbsp;<h3>大切なことは親子で楽しみながら体を動かすこと</h3>〇〇のためだから・・・ 〇〇しないと新学期始まったときに困るから・・・ と真剣になりすぎると、大切な事を忘れてしまいます。 それは「楽しむ」ということ！この夏、親子で楽しんで、体を動かして体調を整えるためにどう過ごすか？ お子さんと一緒に話し合ってみてください。 その際に気をつけてほしいことは、お子さんの特徴やご家庭のタイプを客観的に見極めること。アウトドア派で活動的なタイプとインドア派では楽しみ方が違いますよね。 それも踏まえて、我が家にあった楽しくできる運動方法は何か、親子で話し合うのもきっと自然な形でのコミュニケーションとなります。<h2>2）働く親にとって頭の痛い、起床時間と就寝時間問題</h2>

<h3>「少しくらいいいよね」はアリです！</h3>夏休みにありがちなのが、学校に行かなくていいという安心感から、寝る時間が遅くなったり、それに伴って起きる時間もずれてしまったりすること。 親もついつい「まあ夏休みだし・・・」となり、子どもだけではなく親も「○○しないといけない時間」が緩みがちに。両親共に仕事を持っていて、夏休みといってもあまり時間軸が変わらない家庭もあると思いますが、それでも子どもを起こさなくてもなんとかなる…という安心感から、つい「まあ、少しくらいいいよね」と思うのは当然のことだと思います。 出勤前の分刻みのルーティンストレスから解放されることは大きいですから。 実は、私はこうした緩みは多少であれば悪くないと思っています。 私も仕事をしながら子育てをした経験がありますので、気持ちがよくわかるのです。なので「夏休みに起きる時間が崩れるのは絶対避ける！」とキッチリしようとするのはおすすめできません。 かといって、何時に起きても本人次第・・・というのもどうでしょう。 起床と就寝は体調を崩さないために重要なポイントでもありますよね。<h3> 起床と就寝時間を見直すことで、家族の過ごし方が見えてくる</h3>おすすめなのは「夏休みの朝は何時に起きる？」と家族で話してみることです。『何時に起きたいか』という問いは 「〇〇をしたいから、またはしないといけないから」 ということを考えるきっかけに繋げていくことができます。まずは「夏休みにしたいことは？」というオープンクエスチョン※から会話を始めてみてください。 ※答えを限定せず、自由に答えられる質問のこと。そして、これは親子の会話あるあるなのですが、「夏休みだからといってだらだらしていたらダメなんだからね！」 「ちゃんと起きないと、学校が始まってから起きられなくなるからね！」という圧力的な発言から始めないでくださいね。 「わかってるよ！」となり、それ以上の会話がしづらくなります。ここでも「楽しく話す」が重要です。

<h3>どんなふうに過ごしたいか。家族で話すことで新たな結束が生まれるきっかけに</h3>普段の生活の中ではスケジュールが決まっているので、過ごし方について家族で話すことはないと思います。 まずはざっくりとで構わないので、違う時間軸について家族でどんなふうに過ごしたいかを楽しく話す工夫をしてください。ここで、とても大切なことがあります。 普段でもいえることですが『人と比べない！』こと。簡単なことではないと思います。どうしても「ほかのお家ではどんなふうに過ごすのだろう」と気になってしまいますよね。 でも敢えて、『今年の我が家の楽しい過ごし方』だけにフォーカスしてください。 特別なことをしようと考えないでください。子どものセンサーは、親の焦りや不安をしっかりとキャッチしています。 そして、実はわかりやすくキャッチする子ばかりではないので、気をつけましょう。ということで、 『寝る時間と起きる時間を決めて、規則正しく過ごす』ということから入るのではなく、『夏休みをどんな風に過ごしたいか』という“楽しいこと”から、寝る時間と起きる時間のざっくりとした約束ができるとよいのでは、と思います。こうした話し合いを持つことも、夏休みの中で大切な時間になると思います。<h2>3）事故と事件から子どもを守るためには？</h2>

毎年、夏休みに入ったばかりのころと、明日から2学期、というころに悲しい不慮の事故や事件を耳にしたりしますね。楽しいはずの時間が悲しい時間にならないために、家族でできることを考えてみましょう。<h3>夏休みは子どもの「危険予知能力」を高めるチャンス</h3>

お子さんの危険予知能力について考えたことがありますか？ 夏休みに入る前に「我が家の危険予知能力」について家族で話し合ってみると良いと思います。ここでもまた話し合うときのコツは「楽しく！」が大切です。『一人で留守番をしているときに考えられる危険』ってどんな事があるかな？などと、団欒のときに家族でクイズを出し合うのがオススメです。『もしも◯◯だったら・・・』 もしもシリーズは住んでいる環境や家族構成で違いがありますので、それぞれの環境に合わせて考えてください。「もしも」に続くものはどんな事でも構わないと思います。Q.我が家はオートロックだから安心・・・本当にそうでしょうか？Q.もしも、マンションのエレベーターに乗った途端、見知らぬ男が乗って来たらどうする？Q.もしも、一人で留守番をしていたらインターホンが鳴って、「宅配の者です。ちょっと教えてもらいたいんですが・・・」って言われたらどうする？ お子さんと一緒に想像力を膨らませてクイズを考えながら『危ないこと』を共有しましょう。 事故を防ぐためには、家の周りで危険だと思うところの認識を親子でしておくことが大切です。 普段から行き慣れた場所でも、時間帯が違うといつもとは違う危険が潜んでいることもあります。 子どもだけの外出が増えるのも夏休みの特徴です。子どもの成長にはワクワクするような冒険も重要な鍵になり、一人で何かをやり遂げる体験は子どもの成長につながりますが、同時に危険も増えていきます。 そこで必要なのが、危険予知能力と危険回避能力です。 今年の夏休みには、これまでコロナで中止になっていたお祭りなどのイベントも開かれるところが多いと思われます。 楽しい時間が悲しい時間にならないように、危険予知脳力の確認と、危険回避能力を育てるという視点を持ちましょう。<h2>4） 勉強は？新学期に困らない？</h2>

学習については、生活リズムの次に夏休みで親が気になることかもしれませんね。 かといって、夏休み中、つきっきりで子どもの勉強に付き合うことができる保護者はそう多くはないと思います。 ましてや共働き世帯になると、近ごろは在宅勤務が多くなったとはいえ、子どもに学習の習慣をつける…といってても中々難しいのが現状です。『夏休みに入る前に学習計画を立てましょう。』 学校でも塾でもこう指導されますよね。確かに、計画は立てる方がいいと思います。大切なのはその立て方にあります。 “お子さんの学習計画だけ”立てさせるのではなく、できたら親の計画も一緒に立ててみませんか？ 夏休みのお母さんの目標、お父さんの目標、子どもの目標、とそれぞれの目標を立ててみるのです。そして家族で目標を達成する過程を共有し、励まし合いながら計画を実行していくのです。 でも、干渉しすぎは禁物です。あくまでも、一緒に目標を達成する同志としてアドバイスするのみにしましょう。家族で一緒に立てた目標を達成することで、新学期へのモチベーションにもなります。そして！ここでも「夏休みの計画」という話題でコミュニケーションをとるきっかけをつくり、楽しく達成していくことがポイントです。<h2>5）SNSの利用について</h2>

最後は、気になるSNSの利用に関して。 高学年はもちろん、低学年から家庭でのルールをつくっておくことをお勧めします。 ルール自体はご家庭ごとで違ってくると思いますし、子どもの成長によっても違うと思います。ただ、ルールをつくるときに大切なことがあります。それは大人が守れる約束であることです。 そして、ルールには破ったときのペナルティも必要です。 ペナルティもまた、大人が守れるものでなければなりません。例えば「もう二度と◯◯しない！」 これ、守れるでしょうか？約束を守れないのは意外にも大人だったりします。それだと、子どもも守るはずがありませんよね。ルールとペナルティを決めるときには、親子で話し合ってお互い納得して決めましょう。 なぜそのルールが必要なのか、ルールを破ったら何が起こるのか。 親も感覚や感情だけでなく、社会的、客観的な事実をきちんと伝える必要があります。学校に行かない時間は自由にSNSに接する時間が増えます。 予期せぬ犯罪に巻き込まれないために、親子できちんとルールを決めて、守れなかった場合は断固としてペナルティを課しましょう。 それがお子さんの成長への第一歩になります。 運動も学習も、まずは健康に過ごすことからです。 今年の夏も猛暑が予想されます。くれぐれも無理せず、安全で楽しい夏休みをお過ごしください。

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