教育のアレコレ

栗尾モカ 横浜で生まれ育つ。美大卒業後、若い時期にたくさん旅行をしたいと思い、航空会社に入社。国際線に乗務する。その後、講談社の雑誌編集部で多くの企画を担当。「ダ・ヴィンチ」でコミックエッセイデビュー後、朝日新聞等で取材・イラストの連載をスタート。

<h2>世界の教育到達度ランキングでトップを争い、注目を集めるシンガポールの算数教育​​</h2>「シンガポール算数はすごい」。 そう気付いた近隣諸国の人々が、わざわざシンガポールのローカル小学校に子どもを入学させるケースも少なくないほど話題になっている教育メソッド「シンガポール算数」。 一体、どんな内容なのでしょうか？シンガポールは、国際的な小学生・中学生の算数、数学と理科の学力調査「TIMMS」の小学生の部で、第1回目の1995年から2007年の2位以外はずっと1位をキープしています。

また、経済協力開発機構（OECD）が実施する国際的な学習到達度に関する調査でも、数学の分野の平均得点が常に上位3位以内をキープ。このシンガポールの小中学生の好成績を支えているのが「シンガポール算数」というオリジナルのメソッドです。 優れたメソッドとして世界中で注目され、今では米国、カナダ、イギリスなど世界中の学校で取り入れられています。シンガポール算数が最初に開発されたのは、1982年だったそうです。 多国籍国家であるシンガポールで、算数も「多国籍の生徒が無理なく学べるように」工夫・開発された内容だということです。シンガポール教育省のWEBサイトには、シンガポール算数の具体的な目標が述べられています。 「全ての子どもが、生活・人生の中で数学的な情報をもとに適切な決定が出来るようになること」 「数学的なスキルを高等教育やキャリアで生かせるようになること」子どもの算数教育を通して、就職後のキャリアまでを見越して目標設定をしているのが、いかにも金融国家であるシンガポールらしいと感じました。 &nbsp;<h2>シンガポール算数の3つのポイント</h2><h3> 1）思考力の育成</h3>シンガポール算数は、1980年代にシンガポール教育省が1年生から6年生を対象に「思考力の育成」を目指し、オリジナルの教科書を開発したことから始まりました。 単純に解法を憶えて式を解いて答えを出すのではなく、算数の概念を理解し、解を導き出す問題解決能力を重視しています。シンガポール算数の特徴として、ヒューリスティクス（Heurristics)という学習プログラムを取り入れています。 これは、日常生活に関連した応用問題に対して、自分で問題解決の方法を発見していくプログラムです。このプログラムでは、数学的な思考や論理的推理を鍛えることができます。この教科書は、アメリカのいくつかの学校やカナダ、イスラエル、オランダ、インドネシア、チリ、ヨルダン、インド、パキスタン、タイ、マレーシア、日本、韓国、フィリピン、イギリスなどの国々で採用され、世界中で知られることになりました。<h3>2）小さいころからの、立体を使った数字の学習</h3>「計算が得意な子どもになってほしい」と、多くの親が通わせる日本の計算の教室では、大量の計算を解かせることで飛躍的に計算力を伸ばす子どもたちがいる一方、数字が苦手になってしまったという残念な子どもたちのケースもあるようです。シンガポール算数では、最初から数字を使うのではなく、ブロックやサイコロなど立体を使って立体を並べることから数字を学びます。

物を足したり取り除いたりすることで、足し算や引き算などの基本的な算数を学び、次に「バーモデル」を描いて物体の特定の量を表すことによって、絵画的なステップへと移行します。<h3>3）バーモデル</h3>シンガポール算数に欠かせないのが「バーモデル」と呼ばれるもの。 式や数字を見て計算するのではなく、長方形の図を描いて視覚的に考える方法です。&nbsp;

【問題】--------------------------------------- ボックスXには324個のビー玉が入っており、ボックスYの2倍です。 ボックスYは、ボックスZよりも48個ビー玉が少ないです。3つの箱には全部でいくつのビー玉がありますか？ -----------------------------------------------この問題は、図を描かずに解こうとすると難しく感じますが、図に置き換えることで整理され、スムーズに解くことができます。文章題から抽象的な数式を立てることを容易にするツールです。 バーモデルでは、問題の構造や条件を理解し、共通する単位や比率を見つけることができます。シンガポール算数では、定規を使ってバーモデルをノートに描けるように何度も練習します。 バーモデルを描けるようになること自体が、シンガポール算数を学ぶ上で特にウェイトが置かれているのだとか。このバーモデルを使って、問題を自分で図に変換して視覚化して解く方法を徹底して学びます。バーモデルは、掛け算や割り算を含む高度で複雑な問題を解くときにも有効です。 図を描くことについて日系の塾の先生に聞いたところ、日本の小学生はこの「図を描くこと」が苦手な生徒が多いそうです。日本では、方程式などの解法を暗記して解く方法が一般的だからでしょうか。

バーモデルは、シンガポール式算数の教育法である「コンクリート・ビクトリアル・アブストラクト（CPA)」の一環として使われます。 CPAとは、具体的な道具や立体（コンクリート）、図形やイラスト（ピクトリアル）、記号や数式（アブストラクト）を段階的に使って、子どもたちに数や計算の概念を理解させる方法です。 日本の小学校では、計算ドリルを使って問題を解き、答え合わせをする練習を重ねます。 一方、バーモデルを使った学習は立体を使って数字を視覚化する点で、ドリル学習と異なります。この方法が、算数のレベルアップを目指す際にはるかに効率的だと言われています。 卒業試験（PSLE）では、基礎的な学力だけではなく、学力を運用する力も問われます。 卒業試験の算数・数学の問題は、標準カリキュラムよりも難易度が高く、応用的な内容が多いです。この試験に対応するためには、単に計算や公式を覚えるだけではなく、複雑な問題に対して自分で考える力が必要になってきます。 日本でもインターナショナルスクールなどではシンガポール算数を取り入れている学校もあります。 こんなドリルもあるので、興味のある方はお手に取ってみてください。 「世界一の学力がつくシンガポール式算数ドリル 小学1～6年: 「バーモデル」で文章題にとことん強くなる！」 <a href="https://amzn.asia/d/h7mWBr3" target="_blank" rel="noopener noreferrer">https://amzn.asia/d/h7mWBr3</a> &nbsp;<figure class="image image-style-align-left image_resized" style="width:50%;"><a href="https://amzn.asia/d/h7mWBr3" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><img src="https://m.media-amazon.com/images/I/71PSHRN7sPL._SL1200_.jpg"></a></figure>

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