教育のアレコレ

最近メディアでも目にすることが多くなってきた「子育てコーチング」。 さまざまな団体によってワークショップや講座が開かれており、Soda!Soda!でも、気になっていました。そこで、今回は子育てコーチングの先駆けである<a href="https://www.heartful-com.org/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">NPO法人ハートフルコミュニケーション</a>代表理事の菅原裕子さんに、子育てにおけるコーチングについてお話を伺いました。 &nbsp;<h2>コーチングとは、コミュニケーションスキル</h2>コーチング（Coaching）はアメリカで生まれた教授法です。スポーツや学習など、人に何かを教えるときに活用するスキルとして紹介されています。 従来の、一方的に知識ややり方を教えるティーチング（Teaching）とは異なるスタイルとして、企業における人材開発にも応用されるようになりました。日本でも組織における人材開発の手法として多くの企業や組織で導入されています。 最近では教育機関でも積極的に取り入れられているようです。教えるティーチングとは異なるスタイルのコーチング、それはどんな手法なのでしょうか。 ◼️国際コーチング連盟日本支部（ICF ジャパン）（<a href="https://icfjapan.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">https://icfjapan.com/</a>）によると

コーチングとは、思考を刺激し続ける創造的なプロセスを通して、クライアントが自身の可能性を公私において最大化させるように、コーチとクライアントのパートナー関係を築くことです。対話を重ね、クライアントに柔軟な思考と行動を促し、ゴールに向けて支援するコーチとクライアントとのパートナーシップを意味します。

とあります。また、 ◼️一般社団法人日本コーチ連盟のホームページ（<a href="https://www.coachfederation.jp/ca/coaching/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">https://www.coachfederation.jp/ca/coaching/</a>）では次のように説明されています。

コーチングは「答えはその人の中にある」という原則のもと、相手が状況に応じて自ら考え、行動した実感から学ぶことを支援し、 相手が本来持っている力や可能性を最大限に発揮できるようサポートするための コミュニケーション技術。

つまり、答えを教えるのではなく、内面にある答えに気づき、引き出すためのコミュニケーションスキルを子育てや育児に取りいれましょうという考え方が「子育てコーチング」ということになるようです。 というものの、ビジネスシーンでのスキルを子育てにどう使えばいいのでしょうか。菅原さんに、ビジネスコーチングと子育てコーチングの具体的な違いについて伺いました。 &nbsp;<h2>ビジネスコーチングには本人の経験や知見が不可欠</h2>

わかりやすく説明するために、企業や組織において、コーチングというコミュニケーションスキルを活用する具体的な場面をいくつか紹介すると<ul><li>その人が抱えている問題、たとえば、取引先や顧客との仕事上の問題にどう対処したらいいのかといった具体的な問題解決する糸口を見つける場面 &nbsp;</li><li>この会社で、この商品でこの仲間と何をやりたいのか考えるとき &nbsp;</li><li>自分はこの先、この会社でどうなりたいのか、何をやっていくべきなのか、といったキャリアについて考えるとき &nbsp;</li><li>もっと身近なところでいうと、社内のコミュニケーションにも。たとえば人間関係がうまく行かないとき</li></ul>というような場面が考えられます。ただこの場合のコーチングには前提があります。その前提とは、悩んでいる人が、それなりの経験と知見を持っている、ということ。多くの経験や知見・知識を持っているけれど、それらがうまく組み合わされていないため、その中にあるはずの答えが見つからない。この場合、コーチングという手法が有効になります。ですので、その前提がない人を対象にコーチングはできないわけです。たとえば、商品のこともお客さんのニーズも知らない新人にこの手法は機能しません。 新人にはまずは基礎となる知識や情報、スキルを伝えなければならない。つまりこれがティーチングです。それに対してコーチングは、その人の持っている経験や知識、人との関わりや関係性などを整理整頓するというイメージです。

<h2>子育てコーチングに決まった定義はない</h2>「子育てコーチング」については、決まった定義はないと思います。みなさんそれぞれのコンセプトと手法で運営されていると思いますが、私は、「子どもの心のコーチング」と名づけています。ビジネスコーチングと全く違うのは、3歳くらいの子どもには先ほどの前提、つまり経験や知見はないということです。ですから、どうしたらいい？と子どもに聞いても、「嫌だ！」と言ったらもうそれだけです。ただ、小さい子どもにもわかっていることはあります。 行きたいとか行きたくないとか、これが好きとか嫌いとか、その年齢なりの本能的な嗜好（あるいは傾向）はあります。その子どもの心の中にあるそれを引き出していく、という意味で、私は「子どもの心のコーチング」と名づけました。具体的に言うと、例えば 3歳の子どもが保育園に行きたくないと言う。 →親は仕事を休めない。 →しょうがないので、行きたくないとギャンギャン泣いている子どもを無理やり先生に預けて保育園に押し込んで行く。 こんな場面を経験されたことがある方、多いと思います。 子どもは3歳ともなれば、お友だちと遊びたいし、楽しいこともわかっています。 でも、お母さんと離れたくない。そこで、子どもの中にある、お友だちと遊んで楽しい思いをしたという思いと、保育園をくっつけてあげる、親はその作業をしてあげればいいのです。子どもの中にある、本来の生きる力を引き出すコミュニケーションスキルを、親御さんたちに教えたいという思いではじめたのが「子どもの心のコーチング」です。

<h2>子どもの心の中にある「思い」</h2>先日オーストラリアの友人とZoomで話していたら、こんなことを話してくれました。家の前で子どもがギャーギャー叫ぶ声が聞こえたので、「虐待かしら？」とびっくりして窓から外を覗いたら、幼い子どもが道の真ん中にひっくり返ってバタバタしている。 そして、お母さんは、その子がバタバタしているのをじーっと脇で見ていたそうです。 友人は、その親が虐待しているわけではないけれど、気になるのでしばらく見ていたそうです。すると、その子はしばらくの間、さんざんバタバタしたあと、自分で立ち上がって、そばで立って見守っていたお母さんの手を自分から持って、手を繋いで普通に歩いて行ったらしいです。つまり、そういうことなんですよ。それが、あの子が本来持ってる力で、自分の中にある否定的なものを全部追い出すことができたら、「はい終わった。お母さん待っていてくれてありがとう」という感じ。 この子はバタバタして心の中にある何か否定的なものを出していたわけです。理由がないわけではない。これは3歳児ぐらいの話ですが、成長とともに表現方法が変わるだけで、子どもの心の中には必ずなんらかの思いがあります。 &nbsp;<h2>子どものコーチングは、「本能的に持っているもの」と「生きるための力」となるものを親が繋いであげること</h2>大人のコーチングは、多くの体験と知見知識といったものが前提となっています。本人が気づいていなくても、それが基礎になっていて、こうすればうまくいくという方法を導き出すためにコーチングを行います。 一方、子どものコーチングは、本能的に持っているものと、いろんなものをどう親が繋いであげるか、ということになります。 具体的な例を出すと、お菓子を買って欲しくてスーパーでひっくり返って大騒ぎしている子どもに、「しょうがないわね、今日だけよ」と言って買ってあげる。これは「欲しいという気持ち」と「ひっくり返れば欲しいものが手に入る」という不都合なものをくっつけたことになるわけです。 この「不都合なものをくっつけない」ためにはどうすればいいのでしょうか。 後編では、ハートフルコミュニケーションでの事例を紹介しながら、親子の関係性を構築することの大切さについて解説します。（編集部　大谷ミサ） 後編は4月中旬頃掲載予定。

<h2>プロフィール</h2><figure class="image image_resized" style="width:50%;"><img src="https://seiban.g.kuroco-img.app/files/user/topics_img/8/05/photo_sugahara2.jpg"></figure> 菅原裕子（すがはら・ゆうこ）NPO法人ハートフルコミュニケーション 代表理事 NPO法人 日本ファシリテーション協会 フェロー人材開発コンサルタントとして、企業の人材育成の仕事に携わる。 従来の「教え込む」研修とは違ったインタラクティブな研修を実施。参加者のやる気を引き出し、それを行動に結びつけることで、社員と企業双方の成長に貢献。1995年、企業の人育てと自分自身の子育てという2つの「能力開発」の現場での体験をもとに、子どもが自分らしく生きることを援助したい大人のためのプログラム－ハートフルコミュニケーション－ を開発。各地の学校やPTA､地方自治体の講演やワークショップでこのプログラムを実施し、好評を得る。 2006年、NPO法人ハートフルコミュニケーション設立。 <a href="https://www.heartful-com.org/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">https://www.heartful-com.org/</a> &nbsp;

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