教育のアレコレ

教育ジャーナリスト 中曽根 陽子<h2>うちの子、まったくやる気がないんです。&nbsp;</h2>子育てで困っていることのひとつとして、よく耳にするのが、「子どものやる気問題」。&nbsp; そうですよね。子どもが自分からやる気を出して、いろいろなことに取り組んでくれたら、親としてこんなにうれしく、安心なことはありません。&nbsp; たとえば、将棋の藤井聡太さんのように、子ども自身が熱中できることを見つけて、しかも結果も出してくれたら、いいですよね～。まあ、藤井聡太さんとまではいかなくても、子どものやる気を引き出したいというのは多くの親が持つ願いではないでしょうか。でも、それがなかなか難しいのが現実かもしれません。 では、どうしたら、子どものやる気って引き出せるのでしょうか？&nbsp;

<h2>探究サイクルが回ると指示をしなくても勝手に学び出す</h2>その答えになりそうなのが、前回紹介した「子どもの好奇心伸び放題、出る杭を伸ばす探究型の学校」を謳うラーンネット・グローバルスクール（神戸市）の代表 炭谷俊樹（すみたにとしき）さんが勧める「好奇心爆発探究サイクル」です。ラーンネット・グローバルスクールに見学に行くと、先生は何の指示も出していないのに、生徒たちが勝手に動いています。 最初はびっくりしましたが、良く観察していると、生徒たちは「自分はこれを学びたい！」と主体的に取り組んでいて、みんな一生懸命だし、イヤイヤやっている生徒は一人もいません。誰にも言われなくてもどんどん学んでいる。 なんでこんなに子どもたちはイキイキしているのでしょう・・・？

そのキーワードが「主体的に取り組む」です！なぜなら、自分で選んだことには「やるぞ！」という気持ちが生まれるからです。そして、自分がやりたい！と思ったことをやっているから、楽しいし夢中になれる。夢中になってやっていると、達成感が得られて、もっとやってみたくなる。このエネルギーが湧くサイクルが「好奇心爆発探究サイクル」なのです。 これは、 ①自由選択→②集中→③達成感 の3つの要素がサイクルになっています。

例えば、小さい子がティッシュを箱から全部出しちゃう、というのも、このサイクルです。 1枚1枚あれこれ試行錯誤しながら200回も探究サイクルを回しているのだとか！ 達成感を得られると、「もっとやりたい」となって、また①からぐるぐる回っていきます。このサイクルを回す中で「できた」という自信がついてくるのです。

<h2>自分で選ぶ！がキーワード</h2>炭谷俊樹さんは、長年の経験から、「この探究サイクルを回すためには、子どもが自由に選択できる機会を増やすことが大切だ」と言います。なので、やる気を引き出す一歩は、子ども本人が、自分で何を学ぶかを選ぶ、選べる環境にあること＝「①自由選択」なのです。 何かを選ぶときに、子どもは自分が興味のあること、好奇心に従って選びます。 ラーンネット・グローバルスクールでは、先生が「これをやりなさい！」と指示命令をするのではなく、何を、どう学ぶかを子どもたちに選ばせています。ただこれは「完全に好き勝手やっていい」という意味ではありません。例えば漢字の練習をする際に「こっちのプリントかこっちのプリント、どっちでやりたい？」といったような選ばせ方をしているそうです。これって、家庭でも同じですね。 「好奇心を大切に！」と言っても、子どもが最初から「これをやりたい！」と言うとは限りませんね。そんなときには、「AとBのうち、どっちをやってもいいよ」と、子ども自身が選べる環境にするといいでしょう。 多少なりとも選択の余地があれば、自分でやりたいことを選ぶので「②集中」します。 そして、子どもが集中しているときにはとことん取り組ませます。 集中の次は「③達成感」です。 集中して取り組むから、アウトプットもきちんと出てくる。それに対して子どもたちは「やった！」「こんなのができた！」って喜び、それを大人たちに「見て！見て！」と持ってきます。 自分が満足できたものは、人に言いたくなりますものね。そのときに「わ～、すごいね！」「ここはどうやってつくったの？」と大人たちが関心を持って聞いてくれれば、子どももとても嬉しいのです。 すると、さらに「次はもっとすごいのをやろう！」とモチベーションがわいてくる。そして、とことんやり尽くして達成感が得られると、子どもは満足して、さらにほかのことにも、自分から取り組むようになります。 そうなればしめたもの。大人があれこれ言わなくても、子どもは自分で考えて行動するようになるそうです。 これが、好奇心爆発探究サイクルなのです。

実際、わたしがラーンネット・グローバルスクールの卒業生に話を聞いたときにも、「子どものときにとことん取り組んだ経験によって、実現したいと思うことを持ち、困難があっても考えて乗り越えられる問題解決力と自信がついた」と話してくれました。&nbsp;

<h2>子どもはもともと力を持っている</h2>わたしたち親は、生まれてすぐのなにもできない赤ちゃんを育ててきた経験からか、子どもが意思を持つようになってからも、どちらかというと「なにも知らない・できない存在」として扱い、正しいことを教えて導かなくてはという思い込みに縛られているところがあるような気がします。でも、果たしてそうでしょうか？どんな子どもにも潜在的な能力があり、その能力を引き出すのが親の役割だとしたら、わたしたち親は、どのようなかかわり方をすれば良いでしょうか。炭谷さんは、「このサイクルを回すためには、たとえ大人からみたら同じことの繰り返しに見えることでも、子どもが熱中している間はそれをさまたげずに見守ることが大事だ」と言います。&nbsp;

そうですよね・・・でもこれって、意識しないとなかなかできないことかもしれません。 だって、例えば勉強や読書やスポーツなど親が嬉しいことに熱中している姿は見守れるかもしれないけれど、一見いたずらにしか見えないことだったら、やめさせたくなるでしょうし、同じことばかり繰り返していたら「もっとこうした方がいいよ」とアドバイスしたくなったり・・・。 でも、今、探究サイクルが回っているのかもしれないと思えたら、見守ることができるようになるのではないでしょうか？ そのためには、すぐに決めつけるのではなく、口や手を出す前に、ちょっと立ち止まって「今この子は何をしようとしているのかな・・・」と観察することが大事なんですね。

私が取材したやりたいことを見つけていった子どもたちの親ごさまの共通点は・・・1. &nbsp; 子どもが何かに集中しているときには妨げない 2. &nbsp; 小さい頃から習いごとを詰め込まず余白を大事にしている 3. &nbsp; 子どもがやろうとしていることは否定せずに見守る 子どものことをよく観察して、好奇心に火がつくタイミングを見逃さず、探究サイクルを回していきましょう。

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