SODA VOICE

「<a href="https://futago-jitensya.jp/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">ふたごじてんしゃ</a>®️」をご存知でしょうか。 未就学の双子や幼児2人を乗せて公道を走ることができる、日本初で唯一自転車安全基準に適合した自転車としてBAA（※2）の認定を受けた幼児2人同乗用三輪自転車です。

この画期的な自転車を発案、製造してくれる会社を探し、開発、商品化にこぎつけたのが中原美智子さん。今では社会起業家として多くのメディアにも登場されていますが、当時の中原さんはいわゆる専業主婦。きっかけは長男が7歳の時に出産した双子の男の子の子育てに悩み、感じた疎外感や閉塞感でした。 さらに、ご自身の双子育児を通して、双子や三つ子などの複数児出産で生まれた「多胎育児」へのサポートの必要性を感じ、NPO法人つなげるを設立。全国を飛び回って、精力的に活動されている中原さんにインタビューしました。

前編は今につながる中原さんのご自身の生い立ちや育児の葛藤を中心にお伝えします。 育児に悩むママたちにぜひ読んでほしい内容です。 &nbsp;<h2>なりたくてなったお母さんなのに、うまくいかない育児</h2>中原さん-（以下中原）私はお母さんになりたくて結婚したんです。 当時の私は、私自身が親に愛されず育ったと感じていたので、お母さんになって子どもに愛情を注いで子育てがしたいと思っていました。 「虐待は連鎖する」という呪いのような言葉が恐ろしく、私はそんなことは絶対にしないんだと誓うような気持ちもありました。 長男が生まれ、頼れる実家もなく、慣れない初めての育児はワンオペでしたが、子どもは愛おしく、私なりに結構頑張っていたと思います。ただ、自分の考えや望みがとおらず無力化されるような生活で、私は長男が​​幼稚園へ入ると同時に鬱になってしまいました。

病院では、投薬治療がはじまりましたが、いつ終わるのかわからない状況が辛くなり、その頃はあまり知られていなかった認知行動療法を自分で取り入れ、心の回復につとめました。​​ その結果、自分のいちばんの味方は自分なんだと考えるようになり、当時のパートナーにもそのことを伝え、ひとつずつ問題を解決していきながら、結果的に完治することができました。 こうやって振り返って考えてみると、何か問題が起こったときに、自分で調べて課題解決していくことが好きなんですね（笑）元気になってからは、もともと興味のあった幼児教育の教室をオリジナルメソッドでひらいたり、長男を自転車に乗せて、ちょっと遠くの自然豊かな公園へでかけたりと、子育ても楽しんでいました。結婚前に気にしていた「虐待の連鎖」もおこることなく、「私は大丈夫やん！」と思うような日々でした。ところが、長男が7歳のときに双子が生まれると、どうしようもない状態に陥りました。 毎日2～3時間の細切れでしかとれない睡眠時間のなかで、小さな双子をひとりでお世話をしないといけない状況。私が少しでも気を緩めてしまうと、いつ死んでもおかしくない赤ちゃんが2人もいる暮らしは気が張りっぱなしで、休む間もありませんでした。 あれほど望んだ赤ちゃんだったのに、私自身の感情をなくしていくことは簡単で、かわいいとすら思えず、私はあまりの辛さに泣いてばかりいました。

Soda!Soda!-子どもひとりが夜中に泣くだけでもどうしたらいいの？って大変なのに、2人いるなんて、想像しただけでも怖いです。 中原- そうなんですよ。双子の育児って実際やってみると、思っている以上にそれはもう大変。赤ちゃんが目の前に2人もいて、同時に泣いたりぐずったり。自分ではコントロールできない状況だし、体はひとつしかないから、当然なのに、うまくできない自分に対する自責の念や閉塞感に苛まれていきました。 行政や保健師さんに相談しても、双子育児について解決するような答えはかえってきません。同じ状況を共有したくても、多胎児のママがどこにいるかわからない。そもそも出かける体力も余裕もありません。このときの思いが「ふたごハウス」開設につながっています。 やがて長男のときに乗り越えたはずの鬱の前兆を感じるようになって。これ以上ひどくならないようにするには、感情をコントロールしなければならないと思いました。 「私はどうして生きているんだろう」という状態にならないために、感情をなくして淡々と育児をこなすことで、なんとか踏みとどまろうとしました。でも、機械的にこなすだけの育児ですら、だんだんと追い詰められて、突発的に子どもを叩いてしまったこともありました。 &nbsp;<h2>虐待の連鎖を断ち切ろうと葛藤した子育ての日々</h2>

私の父はしつけにとても厳しい人でした。父のいうことは絶対で、自由に発言することも、行動することも許されない。幼稚園児の頃ですら、子どもらしい振る舞いなどをしてしまうと叩かれるので、常に親が望む行動をしなければならないような環境でした。 母もしんどかったでしょうが「あんたさえ生まれなかったら、私は自由になれるのに」といった言葉をなげられたこともありました。 ​​暴力が絶えない環境は辛かったですが、母だけでなく学校も周囲の大人も誰も止めに入ってくれることはなく、なぜこんな場所で生きるしかないのかと、絶望に近いものを抱えていました。 ただ、父の行動が全てよくなかったのかと問われれば、そうではありませんでした。 「人と同じことをするな」という教えによって、私自身、常に新しい着眼点を持つというクセが身に付きました。また「誰かがつくったものは、自分につくれないことはない」と言い切る父は、買わずとも自分でなんでもつくってしまう人だったので、アイデアと工夫次第でなんとでもなるといった面白さを教えてくれました。 ただ、自分の意思を伝えることも許されず、暴力におびえるような暮らしは、未来に希望など持てるような気持ちにもなれず、生きていても仕方がないんじゃないかと、わたしは思っていたように記憶します。

そんな背景もあって、自分が母親になれるなら、子どもたちには愛情をもって接したかったし、小さな子であってもその子なりの考えを尊重した関わりを持ちたいと思っていました。 なので、長男がひとりのときは対話を大切にして子育てをしてきたのですが、双子が生まれて自分が追い詰められたときは私自身が一変してしまったのです。 あれほど、親と同じような接し方はしないと決めていたにもかかわらず、怒鳴ってしまう私がいました。あれほど対話を大切にした長男を、叩いて強制するようになっていました。このままエスカレートするのではないかと、私は私が怖くなりました。誰かにとめてもらいたいと思っていました。 一方で、このまま「叩く」ことを肯定することで、私自身が親を許せるのではないかといった葛藤を抱えました。虐待は連鎖しないことを伝えたかったのに、わたしは自分を裏切り、自分がこわれていくようで本当に辛かったです。 &nbsp;<h2>命の誕生をあたりまえに喜べる世の中にしたい</h2>

講演会やイベントで全国をまわっていると、お母さんたちから「私は愛された経験がないから、子どもの愛し方がわからないんです。子育てをしていけるか自信がない」といった悩みを聞くことがあります。でも、私は「大丈夫ですよ」って伝えています。 私は、無償の愛は母親なら誰でも持ち合わせているというのは幻想だと思っています。 無償の愛は、子どもから与えてもらっているんじゃないかと、長男を産んだときに思いました。 私が寝過ごそうと、だらしなかろうと、太ろうと痩せようと、どんな私であっても無条件で慕ってくれるのです。無条件で私を肯定的に受け入れてくれる。生まれて初めての経験でした。愛ってこういうことなんだと知ったのです。 お母さんたちは、本当によく頑張っていると思います。 それでも、自分の至らなさを自分で責めてしまいがちです。 でも、子どもたちは決してあなたを評価なんてしていないし、ただそこにいてくれるだけで、どれほど嬉しいかってことに気付いてほしいなと思います。お母さん自身が、自分のことを大切にし、自分は愛される存在だと知っていてほしい。 それが結果的に、今いる子どもたちや、新たな命の誕生を当たり前に喜べる社会になると信じています。 &nbsp;<h2>生きたいって思ったのは、自分が思う生き方をしようと思ったから</h2>Soda!Soda!-<a href="https://www.amazon.co.jp/%E3%81%B5%E3%81%9F%E3%81%94%E3%81%98%E3%81%A6%E3%82%93%E3%81%97%E3%82%83%E7%89%A9%E8%AA%9E-%E4%B8%AD%E5%8E%9F%E7%BE%8E%E6%99%BA%E5%AD%90/dp/4908087148" target="_blank" rel="noopener noreferrer">ふたごじてんしゃものがたり</a>を読ませていただきました。昨年は電動アシスト自転車も販売開始されましたね！ 家事と子育てをしながら、試乗会や講演会で各地を飛び回り、「NOP法人つなげる」や「ふたごハウス」も運営するというフル稼働。常に目の前の課題を解決しながら前進しチャレンジし続けるアイデアやバイタリティーは、いったいどこから生まれて来るのでしょうか。

中原-よく人から「アイデアが尽きない行動力のある人だ。」と言われる事があります。また先日は「やり手で野心家のビジネスウーマンだ」とも。 自分では、ただ必要なことを進めているだけなのですが、このように言われるとちょっと驚く半面、前のめりでいかなければならない場面も多々あるので、そう思われるのも無理もないかと思ったりします。私が何事も進める上で大切にしている基準は、「わたしは何のために生きているのか」ということです。 子どものころ、未来に希望が持てませんでした。でも、こうして大人になり、自分で未来をつくることができるようになりました。だからこそ、自分に正直でありたいと思うのです。命のある限り、精一杯取り組みたいと思うのです。 でも、全てを肯定的に捉えることが難しく、葛藤し悩むこともありましたし、今もあります。ありたい自分があるのに、うまくいかず悲しくて辛くて、自分を小さな箱に押し込めてしまいそうなときがあります。 そのたびに「こんなことのために、私は生きているんじゃない」と、立ち上がってきたんだとおもいます。生きたいって思ったのは、自分が思う生き方をしようと思ったから。 ふたごじてんしゃ®️をつくろうと思ったのも、単に「双子を乗せることができる移動手段としての自転車」が欲しかったのではなくて、私が私らしく自由な暮らしを手に入れるために、双子を連れて出かけることができる自転車が欲しい！という思いからでした。この思いが原動力であり、全ての行動力の源泉です。&nbsp; 後半では命の誕生を当たり前に喜べる社会を実現するために作った、多胎児をサポートするための様々な取り組みを ご紹介します。 &nbsp;（編集部　大谷ミサ）

<h3>プロフィール&nbsp;</h3><figure class="image image_resized" style="width:75%;"><img src="https://seiban.g.kuroco-img.app/files/user/topics_img/8/05/%E4%B8%AD%E5%8E%9F%E3%81%95%E3%82%93%E2%91%A223.jpg"></figure> 中原 美智子（なかはら みちこ） 「命の誕生を当たり前に喜べる社会」をつくる社会起業家 3人の男の子の母（次男・三男が双子） 社会福祉士。<a href="https://futago-jitensya.jp/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">株式会社ふたごじてんしゃ</a>代表取締役。<a href="https://tsunagerunpo.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">NPO法人つなげる</a>代表理事。一般社団法人日本多胎支援協会理事。 1971年、大阪府生まれ。2003年に長男、2010年に双子(次男・三男)を出産。多胎育児の難しさに直面した経験から双子同乗自転車を発案、メーカーへの企画提案・営業活動を自ら行い、2016年に株式会社ふたごじてんしゃを設立。2018年、日本で唯一の未就学児が２人同乗可能な三輪自転車『ふたごじてんしゃ®』発売開始。同年、多胎育児を支援するNPO法人つなげるを設立。2017年、神戸親和女子大学通信教育部卒。株式会社ふたごじてんしゃ　 <a href="https://futago-jitensya.jp/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">https://futago-jitensya.jp/</a> NPO法人つなげる <a href="https://tsunagerunpo.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">https://tsunagerunpo.com/</a> 中原さんInstagram <a href="https://www.instagram.com/michiko.nakahara74/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">＠michiko.nakahara74</a>

ふたごじてんしゃの誕生秘話が知れる著書<a href="https://www.amazon.co.jp/%E3%81%B5%E3%81%9F%E3%81%94%E3%81%98%E3%81%A6%E3%82%93%E3%81%97%E3%82%83%E7%89%A9%E8%AA%9E-%E4%B8%AD%E5%8E%9F%E7%BE%8E%E6%99%BA%E5%AD%90/dp/4908087148" target="_blank" rel="noopener noreferrer">ふたごじてんしゃ物語</a>

『ふたごじてんしゃ物語』が店頭に並び想うコト <a href="https://futago-jitensya.jp/news/10535/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">https://futago-jitensya.jp/news/10535/</a>

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