教えてヨーコ先生

ヨーコ先生こと中曽根 陽子（なかそね・ようこ） 数少ないお母さん目線に立つ教育ジャーナリストであり、幸せな子育てを探究するマザークエスト代表。東洋経済education ✕ ICT、プレジデントオンライン、中学受験ナビなど多くのウェブメディアで執筆。『成功する子は「やりたいこと」を見つけている　子どもの探究力の育て方』（青春出版社）他著書多数。

新学期が始まり、最初は楽しそうに通っていたのですが、最近学校に行き渋るようになりました。 クラスも変わり、新しい環境になかなか適応できないまま、まもなくゴールデンウィークが始まるので、このまま子どもが五月病にならないかも心配です。 親として、何かできることはあるでしょうか？

<h2>学校へ行きたくないというのは甘えなのでしょうか？</h2>

最初は楽しそうに通っていたのに、最近学校に行き渋るようになったのですね。新学期が始まって慣れてきたころに、長期のお休みが重なるこの時期、そういうお話はよく耳にします。
環境の変化は、どのような人にとってもストレスがかかるもので、自分でも気づかないところで疲れが溜まってしまっていることがあるかもしれませんね。

うーん…子どもは、お休みの日は元気にしているし、疲れているという感じでもありません。だから、学校に行きたくないというのは甘えているんじゃないかと思っちゃうんです。

そうなんですね。でもね、お子さんは、新しい環境に慣れていくために、けっこうエネルギーを使っていると思いますよ。人は、新しい環境に適応するときに、いくつかの段階を経るといわれています。まず、新しい環境に入って慣れようとしている段階。 次に、慣れてきたけれどストレスがかかっている段階。 そして、環境に慣れて適応していく段階です。新しい環境に入ったとき、ワクワクする、不安を持つ、平常心でいられる…これは状況によって個人差があります。でもたとえワクワクしていたとしても、慣れようと頑張っているので、ストレスはかかっています。お子さんも、最初は楽しそうに通っていたということですが、いい状態で過ごせていたとしても、かなりエネルギーを使っているので、気づかないうちに疲れも溜まっていくのです。

つまり、新学期は、どの人も、無意識で適応しようとがんばっていて、気づかないうちにエネルギー不足に陥ってしまうのです。スマホも1日使っていると充電切れになりますよね。それと同じです。 5月病と言うのは、この状態です。それまで頑張ってきて、気づかないうちにエネルギーが枯渇してしまい、動けなくなるのです。子どもでも同じです。<h2> 学校に行きたくないという理由がわからない</h2>

なるほど。そうかもしれません。
子どもに学校に行きたくない理由を聞いても、「別に」と言うので、こっちもどうしたらいいかわからなかったのですが、確かに、エネルギー切れなのかもしれません。

人間の場合には、その状態が続くと、やる気が出ない。落ち込む。イライラする。集中できない。寝られない。食欲がない。頭痛など身体症状として現われることもあります。 また、落ち着きがなくなったり、親や兄弟に当たったり、お子さんのように学校に行き渋るなど行動面の変化が出てくる場合があります。爪を噛んだり、甘えたり、チックの症状もストレスのサインです。本当は、1学期の間は、新しい環境に適応していく時期と捉えて、焦らずゆっくりと慣らしていく必要があります。 でも、今の学校はやらなくてはいけないことも多くて、じっくり慣らしていく余裕もないのが現状でしょう。 お子さんも、何か特別なことがあったからではなく、エネルギー切れになっているのかもしれませんね。 だからこそ、新しい環境に適応しているこの時期は、過剰なストレスからお子さんを守るために、お家では意識して、お子さんの様子を観察してほしいです。

<h2>学校へ行きたくない子どもに親としてできること</h2>

<h3>1. &nbsp; 生活習慣を整える</h3>何より大切なのは、睡眠・食事などの基本的な生活習慣を整えることです。 これは、長年保健室で不調を訴える子どもたちを見てきた保健室の先生もおっしゃっています。生活リズムが乱れると、それをきっかけに不調になってしまう可能性があるそうです。いつもお伝えしていることですが、成長期にあるお子さんは特に、早寝・早起き・朝ごはんは心がけてほしいのですが、新しい環境でストレスにさらされるこの時期は、特に意識しましょう。<h3> 2. &nbsp;焦らない</h3>もう一つは、焦らないことです。 そうはいっても、新学期早々、子どもが家でダラダラしているのを見ると、親はついつい「ダラダラしていて大丈夫か」とイライラしたり、「学校が楽しくないのでは」と心配になったりするかもしれません。 でも、そのときに「何かあったの？」「喧嘩したの？」と問い詰めるのではなく、子どもの話をよく聞いてあげてください。大人でも、不調の理由を言語化するのは簡単ではないですが、子どもならなおさらです。 前述の保健室の先生によると、保健室に来る子どもたちは、家庭で言えずに一人で抱えてしまっていることが多く、その理由を聞くと、「心配をかけたくないから」と言うそうです。&nbsp; 子どもは子どもで、親に心配かけたくないって思っているんですね。 &nbsp;<h3>3. &nbsp;共感する</h3>まずは「新しい環境のなかで慣れていこうとがんばっているんだね」と共感してあげてほしいです。その上で、「困っていることがあるなら話してくれると嬉しいな。お母さんにできることある？」と聞いてあげたら話してくれるかもしれません。 先回りして心配しすぎると、それが子どもに伝わってしまいます。 また、親が対応を先取りしすぎると、自分で考えたり決めたりする経験をできず、新しい環境に適応するのが困難になってしまいます。&nbsp;

かかる時間はそれぞれですが、人は段階を経て新しい環境に適応をしていきます。
お子さんが安心して過ごせる場所をつくることを第一に考えて、子どもの力を信じて見守っていきませんか。

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