教えてヨーコ先生

ヨーコ先生こと中曽根 陽子（なかそね・ようこ） 数少ないお母さん目線に立つ教育ジャーナリストであり、幸せな子育てを探究するマザークエスト代表。東洋経済education ✕ ICT、プレジデントオンライン、中学受験ナビなど多くのウェブメディアで執筆。『成功する子は「やりたいこと」を見つけている　子どもの探究力の育て方』（青春出版社）他著書多数。

2歳違いの兄弟です。
仲良く遊んでいたと思ったら、ケンカになって、だんだんエスカレートして手が出たり、足が出たり。最後はこっちが怒ってしまい、私も疲れてしまいます。兄弟ゲンカを減らして家庭の中を平和にしたいのですが、どうしたらいいでしょう？

兄弟ゲンカ、特に男の子同士のケンカは、激しいですよね。
私の孫も、2歳違いの男の子で、ほぼ毎日ケンカをしています。
最初は遊んでいたと思ったら、いつの間にか蹴り合いになって、そのうちケンカになってしまうようです。どちらも、相手が先に蹴ってきた！と主張するので、仲裁も簡単ではありません。

<h2>激しい兄弟ゲンカにうんざりすることも</h2>私は、女の子しか育てたことがなかったので、あまりの激しさに最初は驚きましたが、最近は慣れてきて、「はいはい。今度は何があったの」と両方の言い分を聞いて、ほとんどがケンカ両成敗で終わりにさせます。でも、これが毎日だったら、さぞ疲れるだろうなあと思います。だから、相談者さんのお家の様子が目に浮かぶようでした。本当にお疲れ様です。他の男兄弟のお宅にも聞きましたが、同じように激しいケンカをするお家もあれば、年齢が離れていると、上の子がボスになり下の子が従っていて、ケンカにならないというお家もありました。そういうお宅はお宅で、そのパワーバランスに悩んでいるようです。 兄弟の年齢差や性格によっても変わるのでしょうね。

少し話は変わりますが、先日、テレビでカンガルーの子どもがボクシングのようなことをしている様子を紹介していました。一見ケンカをしているようですが、実は遊んでいるそうで、本能的に大人になって縄張り争いをする練習をしていると解説していました。もしかしたら、人間も同じかもしれません。 男の人は、競争や力比べを好むところがあるので、本能的にその練習をしているのかもしれませんね。 なので、ケンカをしないで仲良く平和に過ごすというのは、しばらく諦めた方がいいかもしれません。でも、大人になっても同じようにケンカをしているという話は聞いたことがないので、いずれ収まることでしょう。

<h2>親の対応のポイントは「事実を確認」することから</h2>

そうなんですか・・・。
でも、ほんと毎日同じことの繰り返しで、最後は雷を落として終わらせるのですが、疲れます。
なんとかならないでしょうか？

ははは。その気持ちもよく分かります。
ケンカをしないようにするというのは難しいですが、こじらせないようにすることはできます。

それは、事実を確認するということです。例えば、お兄ちゃんが弟を蹴って弟が泣いたとします。大抵は、弟を蹴ったお兄ちゃんを叱りますよね。 でも、その前に、弟が、お兄ちゃんが大事にしていたおもちゃを触って壊したのだとしたら・・・？ 確かに人を蹴るのはよくないことだけれど、原因をつくった弟も悪いですよね。それなのに、理由も聞かず蹴ったお兄ちゃんを一方的に叱ったり、理由を聞いたとしても弟をかばって「お兄ちゃんなんだから我慢しなさい」と言ったら、どうでしょう？お兄ちゃんの性格にもよりますが、今度は親子ゲンカに発展するかもしれません。 反抗しなかったとしても、一方的に叱られたら、わかってもらえないという悔しい気持ちや、弟ばかりをかばうお母さんに対する怒りや、淋しい気持ちを抱えることになるのではないでしょうか。

<h2>大人の解釈は禁物！子どもの言葉を受け止めましょう</h2>一つひとつは小さなことでも、親のそんな態度が積み重なると、結構心の傷になったりするので要注意。そういう事態を避けるためにも、まずは事実を確認することが大切です。 できるだけ客観的に、何が起きたのか、それぞれの言い分を聞き取りましょう。 そして、子どもの言ったことを一旦そのまま受け止めて、繰り返します。 これを承認と言います。「お兄ちゃんが蹴った」と言ったら、「お兄ちゃんが蹴ったんだね」 「弟がおもちゃを壊したからだ」と言ったら、「弟がおもちゃを壊したからなんだね」 とただ、そのまま繰り返します。そこに、こちらの解釈を入れないのがコツです。何度か繰り返しているうちに、子どもも落ち着いてくると思うので、そうしたら、「じゃあどうしたらいいと思う？」と聞いてみましょう。 子どもなりの解決の方法を言ってくるかもしれません。 双方がそれで納得したら、そこで終わりです。

なるほど。結構こちらの解釈で一方的に叱っていたかもしれません。

そうですね。人は結構自分の解釈で物事を判断していますからね。

<h2>兄弟ゲンカは子どもの考える力を育てるチャンス</h2>相手の言葉を繰り返すというのは、オウム返しとも言いますが、これの効果は絶大です。 繰り返されることで、子どもは、お父さんやお母さんは自分のことを受け止めてくれた、わかってくれたと感じて落ち着きます。 また、自分の発言をもう一度確認することになるので、そこで自動的に考え始めます。 もしかすると、自分が悪かったなと思って謝るかもしれないし、仲直りする方法を考え出すかもしれません。反対に、一方的に「ケンカしないで仲良くしなさい」と言ったら、自分たちで解決策を考える機会を奪ってしまいます。また、余計な解釈を入れてしまうと、自分のことをわかってもらえてないと感じさせてしまいます。それが極端にどちらかに偏ってしまうと、先ほどお話ししたように、親子関係を悪くしかねないので、気をつけてくださいね。

まあ小さいときの兄弟ゲンカは、動物のじゃれあいのレベルとあまり変わらないので、サルがケンカしていると思って、ある程度はやらせておくのも大事です。
そして、エスカレートしてきたら、怪我をしないうちに審判が登場して事実を確認する。そして当人に解決策を考えさせる。そんな繰り返しが、子どもの考える力を育てることにも繋がります。

問題はチャンスですよ。

‌