教えてヨーコ先生

ヨーコ先生こと中曽根 陽子（なかそね・ようこ） 数少ないお母さん目線に立つ教育ジャーナリストであり、幸せな子育てを探究するマザークエスト代表。東洋経済education ✕ ICT、プレジデントオンライン、中学受験ナビなど多くのウェブメディアで執筆。『成功する子は「やりたいこと」を見つけている　子どもの探究力の育て方』（青春出版社）他著書多数。

イラスト：さぶぼーぼ（Instagram／<a href="https://www.instagram.com/sabubobo.i/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">@sabubobo.i</a>）

2学期が始まりましたが、毎朝起こすのに一苦労です。 朝の支度も時間がかかるので、「遅刻するよ」、というと「学校に行きたくない」と言います。学校からは元気に帰ってくるのですが、また朝になると「行きたくない」と言います。こんなとき、どんなふうに声がけをしたらいいでしょうか。

朝起きられなくて、「学校に行きたくない」というのですね。
休み明けに多いご相談ですね。

<h2>生活リズムを立て直しましょう</h2>朝起きられないということですが、まず、振り返ってみてほしいのが、夏休み中に生活リズムが崩れていなかったかということです。夜更かしや朝寝坊の癖がついてしまうと、体内時計がズレて心身にさまざまな不調が現れます。 もし、思い当たることがあるようならば、まず生活リズムを立て直しましょう。とはいえ、なかなか寝ない子どもを無理やり布団に入れて寝かせるって大変ですよね。 そんな場合は「寝かせる」よりも「起こす」ことを重視するのがポイントです。 「寝かせるのに一苦労していると言っているのに…」と思われたかもしれませんね。 でもこれは、お子さんの脳の発達のためにも、心身を整えて気持ちを前向きにするためにも大事なことなので、この先を読んで欲しいのですが…。 なぜなら朝の光には、すごい力があるからです。<h2> 朝の光を浴びてセロトニンを分泌させましょう</h2>まず体内時計について説明しましょう。1日は24時間ですが体内時計は25時間なので、必ず、ズレが生じます。そのズレをそのままにしていくとどんどんリズムが崩れていってしまいます。 そのズレをリセットするために欠かせないのが朝の光なんです。 朝の光を浴びると、セロトニン（神経伝達物質）が分泌し、脳全体に神経のネットワークが形成されます。 朝起きたては、ぼーっとしているけれど、日の光を浴びるとシャキっとしますよね？ さらに、毎朝、決まった時間に起きて朝日を浴びることで、心と体のコンディションが保たれ、1日をさわやかな気分で過ごすことができるのです。 特に脳が発達している途中の子どもにとって、良質な睡眠は重要な意味を持っていて、良質な睡眠を取るためには早寝早起きの生活リズムが欠かせないのです。生活リズムが整ってくると、不思議と気持ちも安定してきます。 ぜひ、早起きの力を信じて、生活リズムを整えることを第一優先にしてみてください。

<h2>子どもを朝すっきり「起こす」コツ</h2>1）朝起きる時間を決めるコツは、お子さんにも、早寝早起きは脳の発達に大きな影響があることをしっかりと伝えて、朝起きる時間を決めること。家を出る1時間半～2時間前には起きられるといいのですが、いきなり平日から始めるのは難しいと思うので、お休みの日に学校に出かけるのと同じ時間に起きることから始めてみませんか？お休みの日なら学校に行くというプレッシャーもないので、何か楽しみをつくっておいて、それを楽しみに前の日の夜は早く寝るように持っていくといいですね。 例えば、子どもの好きな朝ごはんを一緒につくるなんていうのもいいですね。2）カーテンを開けて朝日を浴びる自分からはなかなか起きられないと思うので、まずはカーテンを開けて部屋を明るくし、朝日を浴びさせます。そのときに、窓も開けましょう。これは外の空気を入れるという意味もありますが、例え曇っていても窓を開けた方が、晴れた日のガラス越しの光より2～4倍の照度があるからです。 3）できるだけ外に出て体を動かす そして、休みの日には特に、できるだけ外に出かけて体を動かしましょう。例えば、朝の散歩でも、自転車に乗る、公園で遊ぶなど、なんでもいいのですが、一日最低でも30分、日光を浴びながら体を動かせば夜もぐっすり寝られるはずだと小児科の先生も言います。 休みの日は親も朝はゆっくり寝たいと思うかもしれませんが、ここは頑張りどきです。子どもの場合は、生活リズムを立て直すのに1週間から10日ほどかかるそうです。 ここは、親も一緒に夜は早く寝て、朝型生活に切り替えていきませんか。やってみると、結構気持ちが良いものです。

早寝早起きが大切なことは分かりました。でも学校に行きたくないという子にはどう対応したらいいのでしょうか？

そうですね。行けば元気に帰ってくるということですから、行きたくない理由を確かめる必要がありますね。

<h2>まずは行きたくないと言う気持ちに共感することから</h2>そもそも起きられないのは、生活リズムの乱れのほかに、夏の疲れが出て体調がすぐれないのということもあるかもしれません。特にこの夏は暑かったので、大人でも自分が自覚している以上に体力を消耗しています。また、塾の夏期講習や、旅行、習いごとなどで疲れが溜まっていることも考えられます。 疲れが溜まれば、大人でもなんとなくだるかったり、やる気が起きなかったりしますよね。子どもも同じです。今の子どもたちは忙しくて、余白がない子が多いですからね。

ほかには、学校の友だちや先生と何かあるとか、自分は直接関係なくてもクラスの他の子が怒られるのをみるのが嫌だとか、そんなことも原因だったりします。 いずれにしても「学校は行くものだ」「怠けている」と決めつけたり、「ここで休ませたら休み癖がつくのでは」と不安から無理やり行かせたりするのは、かえってことを長引かせたり、精神的に追い詰めることにもなりかねません。なので、ここはまずはお子さんの行きたくないという気持ちに共感しながら、その理由を探っていきましょう。子どもは言語化するのが得意ではないですし、本人にもその理由がわからないことが多いので「どうしたの？　何かあったの？」と理由を聞くのではなく、まず子どもが「行きたくない」と言ったら「行きたくないんだね」と、気持ちを理解しようとしながら耳を傾け共感することがとても大切です。 なぜなら「行きたくない」という気持ちに共感してもらって初めて、心を開くことができるからです。 同時に、言葉以外のお子さんの様子をよく観察し、お子さんの状態をできるだけ客観的に把握すること。そして、何か理由があるなら、どうすれば解決できるかを一緒に考えてあげませんか？

子どもの行きたくない理由を聞き出そうとしていましたが、まずは行きたくない気持ちに共感するんですね。

そうです。共感というのは、同情することではなくて、ただ受け止めるということです。

生活リズムを整えるのは、お子さん自身の心身を整えるため。 共感しながら話を聞くのは、お子さんとの信頼関係をつくり、前に向かって課題を解決していくためです。私の講座の受講生で、やはりお子さんが行き渋りだったとき、お子さんと話して、お子さんの好きな目覚まし時計を買ったことで、自分で起きるようになったそうです。そんな工夫をしてみてもいいですね。

生活リズムが整って、元気が出てくるまでは助走期間だと思って、休み休み行くというのも一つの選択肢です。
親が不安になると、子どもにもそれが伝わって余計マイナスのループにハマっていきます。
焦らず、慌てず、心配しすぎず、お子さんに寄り添ってあげてください。

‌