教えてヨーコ先生

ヨーコ先生こと中曽根 陽子（なかそね・ようこ） 数少ないお母さん目線に立つ教育ジャーナリストであり、幸せな子育てを探究するマザークエスト代表。東洋経済education ✕ ICT、プレジデントオンライン、中学受験ナビなど多くのウェブメディアで執筆。『成功する子は「やりたいこと」を見つけている　子どもの探究力の育て方』（青春出版社）他著書多数。

イラスト：さぶぼーぼ（Instagram／<a href="https://www.instagram.com/sabubobo.i/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">@sabubobo.i</a>）

小学2年生と5年生の男子兄弟の母です。
兄弟揃って何をするにも時間がかかりすぎて、イライラします。 
自分たちで時間管理できる方法があったら教えてください。

お子さんが何をするにも時間がかかりすぎて、イライラしてしまうんですね。
私が開いている子育て講座でも、「朝起きてから夜寝るまで、1日に何十回『早くしなさい』と言っているかわかりません」とおっしゃる方結構いらっしゃいます。
だから、このお悩みはあなただけの特別なものではありません。

<h2>「早くしなさい」は最も効果がない言葉がけのひとつです</h2>「早くしなさい」は子育て頻出単語ですね。 でも、最も効果がない言葉がけのひとつだと言えるかもしれません。効果がないのに、 「ハ・ヤ・ク・シ・ナ・サ・イ」と呪文のように繰り返していても問題は解決しませんね。まず、あなたがイライラするポイントを整理してみませんか？ 行動が遅いということですが、どんなことで困っていらっしゃるのでしょうか。 特にどんなときに、イライラしてしまうのでしょうか？たとえば…

<ul><li>学校に行く時間は決まっているのに、いつも遅刻しそうになっている。</li><li>食事や着替え入浴などに時間がかかり、日常生活を送る上で支障が出る。</li><li>勉強に取り掛かるのに時間がかかり、結果宿題などが終わらず夜寝るのが遅くなる。</li><li>ほかのお子さんより行動が遅くて、集団生活の中でワンテンポ遅れている。</li></ul>

等々、いろいろな場面が思い浮かびます。それぞれその問題が起きている理由があるのに、ただ目の前の結果だけ見て「早くしなさい！」 「みんなに置いていかれないようにもっと急いで！」などとどれだけ繰り返し急かしても、全然スムーズに行動できるようになりませんよね。<h2> 原因を分析して誰の問題なのかを区別しましょう</h2>

問題を解決するためには、それぞれの困りごとがなぜ起きているのかを分析して、どこにつまずきがあるかを見定めることが大切です。そして、その問題が、子どもの中だけで完結することなのか、ほかの人にも影響を与えることになるのか、つまり誰の問題なのかを区別する必要があります。たとえば、上の例の1番の場合、いつも遅刻しそうになるという問題を解決するには、その理由がどこにあるかを見定めるために、朝起きてから学校に行くまでの過ごし方を観察し、どこでつまずくのかを見ていきます。朝、起きてから学校に行くまでにしなければならないことはたくさんあります。・着替えや学校の用意にかかる時間 ・朝ごはんを食べる時間 ・歯磨きなど身支度を整える時間それらを、起きてから家を出るまでの間に終わらせるためには、どのくらいの時間が必要かを考えて逆算すると、何時には起きなくてはいけないかわかりますよね。 もし、時間が足りないことが原因なら、起きる時間を早くする必要があるかもしれません。 あるいは朝ごはんを食べるのに時間がかかるなら、朝ごはんは食べやすいかたち（たとえばおにぎりとか）にするなどの工夫ができるかもしれません。 このように、問題にあった解決方法を考えればいいのです。<h2> 兄弟それぞれの発達段階に合わせた効果的な対応を</h2>

そもそも、時間の概念や、見通しを立てて行動するというのは、大人は無意識にやっていることですが、小さい子ほどまだできません。 実は「子どもの行動が遅い」と言う問題には、脳の発達が未熟なことが関係している場合が多くあります。 &nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; 特に小学2年生の弟さんには、まだ前頭前野が発達していないので、周りを見て行動するとか、先を見通して判断するのは難しいかもしれないですね。時計を見て行動できないようなら、時間を決めて音を鳴らすとか、時計の絵の横にやることを書いたポスターをつくって行動を促すなどの工夫が必要かもしれません。いずれにしても、一方的に時間を決めて「この時間までに○○をしなさい」と指示するのではなく、どうしたらいいかを本人にも考えてもらい決めていくことが大切です。 &nbsp;小学5年生のお兄ちゃんなら、なおさら一方的に指示するのは逆効果です。 前頭前野も育ち始めているので、本来状況を判断して行動するということはできる年齢ですから、どうしたら問題が解決するかを考えるチャンスでもあります。 そのときに、一方的に指示したり、できないからといって怒ったりしていては、自分で考え行動するという脳の発達を阻害することにもなりかねません。

<h2>家族みんなで問題解決の方法を考えてみましょう</h2>そこで私からの提案です。たとえば朝時間の問題を解決したいならー「家族全員が朝の時間を気持ちよく過ごして、最高の気分で出かけるためにはどうしたらいいか」という問いを立てて、一緒に考える時間をつくってみてはいかがでしょうか。つまり、子どもの行動が遅いという問題にフォーカスするのではなく、家族が気持ちよく暮らせるためにはどうしたらいいかという最上位の目的を共有するのです。 そしてその目的を阻害している原因を出し合います。そのときに大切なのは、もちろん親として何に困っているのかは話していいのですが、子どもの気持ちも聞くということです。自分の行動が遅いことが、家族全員が気持ちよく暮らすことを妨げている要因になっているのだとわかったら、解決するためにはどうしたいいかを考えてくれるかもしれません。果たして子どもが自分でアイデアを出せるのか？と思われるかもしれませんね。 もちろんやってみなければわかりませんが、場を設定すれば、子どもは子どもなりに考えを出すものですよ。 その前提として、こちらも子どもが考えられるような促し方をする必要があります。

<h2>困りごとがなぜ起きているのかを親子で共有しましょう</h2>毎朝遅刻しそうになるので、注意をするけれど、本人はちっとも焦っておらず、こちらがイライラしてしまうというケースだとします。この場合の話し方としては、次のように問題を分析・区別して説明します。「毎朝学校に行くのがギリギリになってしまっているよね。 お母さんはそういう様子を見ていると心配になるし、イライラしてつい怒ってしまうのね。（＝事実） 朝から怒られるとお母さんも気分悪いし、あなたたちも嫌な気持ちになると思うから、（＝解釈） もっと気持ちよく朝の時間を過ごせるようにしたいと思うんだけれど（＝親の気持ち） 協力してもらえないかな。（＝行動の提案）」とこんな感じです。最後の「協力してもらえないかな」は本人の行動が遅いのに、なんでこっちが下手に出ないといけないの‥？って思うかもしれませんが、ここは問題を感じているのはこちらなので、私ならあえてそのように言います。子どもも、怒られて嫌な気持ちになっていると思うので、こう言われたら考えやすいと思うのです。まず同じテーブルの上に問題を乗せて、最終ゴールに向けてどうしたらいいかを一緒に考える。そういう場づくりです。実際、最初に紹介した1日に何十回も「早くしなさい」を連発していた方も、このアプローチで、子どもから「学校の用意は夜寝る前にしておく。朝は10分早く起きる。時間が余ったら好きなことをしていいことにしてほしい」という提案があり、10分早く起きるために好きな目覚まし時計を買ってあげたら、翌日から朝の行動が変わり「早くしなさい」を言わないで済むようになったのです。

最終的に達成したいことは何か。
阻害している要因を考える。
対処法を本人も一緒に考える。
これは、遠回りのようで問題解決の近道です。

‌