教えてヨーコ先生

ヨーコ先生こと中曽根 陽子（なかそね・ようこ） 数少ないお母さん目線に立つ教育ジャーナリストであり、幸せな子育てを探究するマザークエスト代表。東洋経済education ✕ ICT、プレジデントオンライン、中学受験ナビなど多くのウェブメディアで執筆。『成功する子は「やりたいこと」を見つけている　子どもの探究力の育て方』（青春出版社）他著書多数。

イラスト：さぶぼーぼ（Instagram／<a href="https://www.instagram.com/sabubobo.i/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">@sabubobo.i</a>）

私はどちらかといえばスポーツが苦手です…
運動神経は遺伝が影響するのでしょうか。
運動神経をよくするための習慣ってありますか？

運動神経は、遺伝だけでは決まりません。

以前、スポーツ科学の第一人者・深代千之先生にこのことについてうかがかったことがあるので、今回はその内容を紹介しましょう。<h2> スポーツ上達の秘訣は「脳」にあり</h2>深代先生は、運動のうまい下手は、遺伝によって決まるものではなく『生まれつき運動オンチ』『運動の才能がない』という人はいないといます。では、なぜ運動が得意な人と苦手な人がいるのでしょう。運動の『うまい下手』を分けるのは、脳に運動を司る神経パターンができているかどうか。スポーツ上達の秘訣は『脳』にあります。もう少し詳しく説明すると、脳内の神経には電気信号が通るのですが、同じ神経回路に電気信号が繰り返し通ることで記憶ができます。 運動がうまくできるということは、脳内で電気信号をコントロールし、主要な筋肉に信号がタイミングよく適切に伝わることにより、思い通りの動きができるということ。足が遅い人は、走り方を知らないだけ。正しい走り方をちゃんと頭で理解すれば足が速くなるのだそうです。

では、そもそも運動神経とはなんなのでしょう。運動神経とは、運動の指令が脳から筋肉まで送られるときの「情報の通り道」のこと。 運動神経がなければ、手を思い通りに動かして文字を書くことも、箸でご飯を食べることもできません。ですから、運動神経の有無に個人差はなく、誰にでも同じように備わっているものです。しかも、脳から筋肉に情報を伝える「伝導速度」にも個人差はないのだそうです。深代先生は、「九九ができるようになったり、すらすらと漢字が書けるようになったりするのも同じしくみだ」と言います。 つまり、何度も繰り返し鍛えれば、脳から末端の運動神経への回路が鍛えられて、筋肉を上手に動かせるようになるのです。

そうなんですね。
親がスポーツが苦手だからといって、子どももそうなるということはないのですね。安心しました。
子どもの運動神経を鍛えるにはどうしたらいいのでしょう。

<h2>「ゴールデンエイジ」という言葉を知っていますか</h2>3歳ごろから12歳ごろまでに、子どもの運動神経が急激に発達する時期があり、その時期の運動経験が、その後の将来の運動神経を左右するといわれています。 この時期を逃さずに鍛えることが大切です。具体的には6～12歳（年長～小学6年生）の期間で『プレ・ゴールデンエイジ（6～9歳）』と『ゴールデンエイジ（10～12歳）』に分けて考えられています。子どもの神経は、5～6歳まで急激に発達し、大人の80％にまで達します。 そして、12歳には、ほぼ大人と同じになります。

最近は、若くして世界的なアスリートとして活躍する人たちが注目されるので、我が子にも早いうちから英才教育をしたほうがいいのではと考える人もいるかもしれませんが、特にプレゴールデンエイジ期には、さまざまな動きを経験することが大切です。　だからといって、なにも特別な訓練をする必要はありません。この時期に必要なのは、遊びを通していろいろな運動経験を重ねることです。深代先生によると、特別なスポーツでなくても、たとえば鬼ごっこのようにその辺りをかけ回る、キャッチボールをするといった身近な運動で十分だそうです。 多様な動きを遊びの中で経験していくことで運動機能が発達するのです。 また、意図的に子どもが多様な動きを経験できるような環境をつくってあげることも、運動神経の成長発達に役立ちます。スポーツが苦手ということですが、できるだけ時間をつくって、お子さんと一緒に楽しく遊びながら、ご自身の運動神経も鍛えてみませんか？

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